[書き下し文]孔子曰く、生まれながらにしてこれを知る者は上(かみ)なり。学びてこれを知るものは次なり。困み(くるしみ)てこれを学ぶは又た其の次なり。困みて学ばざる、民斯れ(それ)を下(しも)と為す。
[口語訳]孔子がおっしゃった。『生まれながらにして道理を知っている人は「上」である。学んで知るようになった人はその次の部類である。苦しみながらも懸命に勉強する人はその次である。頑張って勉強することも出来ないのが人民であり、これを「下」とする。』
[解説]古代中国の春秋時代は、封建主義的な身分制が絶対と考えられていた時代であり、一般の人民が学問や書籍に接することのできる機会は殆どなかった。そのため、孔子は一般庶民は志学の精神を持つことが不可能と考えていた節があるが、これは春秋時代に生きた孔子の認識のある種の限界を示したものと言えるだろう。儒教は、学問によって人間性を陶冶し知性を高めることを重視していたが、この章では大衆蔑視的なところが見られる。これは古代という時代の制約であるが、孔子は最も学問に適性のない人以外は『教育の機会』によって変われると信じていた人でもあった。