[書き下し文]子曰く、由よ、女(なんじ)六言六蔽(りくげんりくへい)を聞けるや。対えて曰く、未だせず。居れ(おれ)、吾女(なんじ)に語(つ)げん。仁を好みて学を好まざれば、その蔽や愚。知を好みて学を好まざれば、その蔽や蕩(とう)。信を好みて学を好まざれば、その蔽や賊。直を好みて学を好まざれば、その蔽や絞(こう)。勇を好みて学を好まざれば、その蔽や乱。剛を好みて学を好まざれば、その蔽や狂。
[口語訳]先生が言われた。『由よ、お前は六つの言葉に付随する六つの害(六言六弊)を聞いたことがあるか』。子路は申し上げた。『いまだ聞いたことがありません』。『そこに座りなさい、私がお前に教えてあげよう。仁を好んで学問を好まないと、その弊害として愚かになる(人から愚劣と見なされる)。智を好んで学問を好まないと、その弊害としてとりとめが無くなる。信を好んで学問を好まないと、その弊害として人をそこなうことになる(自分が騙されてしまう)。正直なのを好んで学問を好まないと、その弊害として窮屈になる。勇を好んで学問を好まないと、その弊害として乱暴になる。剛強を好んで学問を好まないと、その弊害として狂乱に陥ることになる』
[解説]孔子が『六言六弊』を題材にして、徳目を有効に活用するために『学問への志』が絶対不可欠であることを語っている。