[書き下し文]子曰く、小子(しょうし)、何ぞ夫の(かの)詩を学ぶこと莫き(なき)や。詩は以て興すべく、以て観るべく、以て群すべく、以て怨むべし。邇く(ちかく)は父に事え(つかえ)、遠くは君に事え、多く鳥獣草木(ちょうじゅうそうもく)の名を識る(しる)。
[口語訳]先生が言われた。『弟子たちよ、どうしてあの「詩経」を学ばないのだ。詩は心を奮い立たせ、物事を観察することができ、人々と共に友好を深められるし、政治批判や恨み言も表現することができる。近いところでは父にお仕えし、遠いところでは君にお仕えする、鳥獣草木の名前を覚えることもできるのだ。』
[解説]孔子の言行録である『論語』の中には詩経から引用した言葉が多く出てくるが、孔子は礼楽というものを政治秩序の根本においていた。そのため、この章では、弟子達にもっと深く『詩経』について学ぶことを勧めており、『詩経』の言葉に真剣に向き合うことでどういった実用的なメリットや学習面での効果があるのかを丁寧に教えている。