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魔女の宅急便5-7.ジジがかわった

时间: 2026-09-30    进入日语论坛
核心提示:魔女の宅急便-
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6 ジジがかわった
 町はずれまでおとどけものをして家に帰ると、肩から飛びおりたジジにキキはいいました。
「ジジ、ごくろうさま。時間がかかっちゃったわね。つかれたでしょ。なぜかほうきが思うようにならなくって、はやく飛べなかったの。このところ、ちょっとおかしいのよ」
「いえ、いえ、どういたしまして。ふつうでしたよ」
 ジジはちょっと首をかしげて、ていねいにいいました。ちょっと大人っぽく、でもなにかよそよそしい、こんないいかたを、ジジはこのごろよくするのです。「おかげさまで」とか、「いえいえ、そんなことはありません」とか、「おたがいさまですよ」とか……。
 ところがそうかと思うと、妙にへんなしゃべりかたになったりもします。「相手しちゃいられない」とか、「そんなのごめんだね」とか、そっけないいいかたをしたり、また「あの、あの」と妙に言葉がでてこなかったり。
「いったい、どうしたの、このごろ変よ。あんたの言葉こんがらがってるわよ」
 キキは不満そうにいいました。
「いや、大丈夫です。ちょっとした知恵熱のようなもんです。ご心配なく」
 やっぱりどこか変なのです。
「知恵熱ってなに?」
 キキはたずねました。
「子どもが急に知恵をつけはじめたころ、ふっとでたりする熱のことですよ」
「あれ、学生さんみたいな、立派なおこたえねえ」
 ジジはキキも知らないようなこんな言葉もこのごろ、さらりっとつかったりします。キキはそのたびに、心がごちゃごちゃと動いて、そのあとなぜかおいてきぼりにされたようなさびしい気持ちになるのです。
 ドアをあけてキキが家にはいりかけると、あとにつづいていると思ったジジが何気なさそうに、目をきょときょとさせ、壁のむこうに行こうとしています。しっぽのさきがするりっと消えるのを、目のはじで見たキキは足をとめ、背のびをしてのぞきました。でもジジの姿はもうそこにはありませんでした。このすばやさはどうでしょう。まるで逃げようとしているみたいです。
「変だわ」
 キキが追いかけながら、遠くを見ると、ジジはもうずっとむこうの塀の上を脇目もふらずに走っています。ふつうの猫が通るような高いところを、それもよろけもせず、走りなれた様子でまっすぐに進んでいます。ふだんジジがあまり歩いたりしないところです。
 キキはそのまま家にはいろうとしました。でも逃げるように行くジジの後ろ姿を見ているうちに、自然とキキの足も動いていました。ジジは塀の上を走ります。ないしょであとをつけているキキは下の道を歩いて追いかけるしかありません。ときどきジジの姿が見えなくなります。すると、キキはジジがますます重大な秘密をかくしているように感じるのです。塀がとぎれると、そこからは丘に通じる細い道がつづいています。ジジはもう大丈夫と思ったのか、しっぽを揺らして、ゆっくり歩いていきます。ときどき道の脇に咲いているコスモスの花に鼻をくっつけて、思い入れたっぷりに、ふーっと大きなため息をついたりしています。あやしい気配です。
 細い道は、白い塀にかこまれた、白い家の門へとつづいていました。ジジは黒いまりのように、ぽーんと飛んで、その白い塀にとりつくと、むこう側に姿を消しました。
 この家はコリコの町でも特別に目立つ家でした。丘の上に一軒だけ、お城のように建っているのです。みんな、夕日館とよんでいました。夕日があたると、横にながくのびた白い壁がオレンジ色に輝くのです。コリコの町で夕日がいちばん遅くまであたるところでもありました。いつも窓にあつくカーテンがひかれ、だれも住んでいないように、しずまりかえっています。でも一度、キキが真上を飛んでいたとき、車が何台もとまり、にぎやかな笑い声がきこえてきたことがありました。
 キキはジジの姿を追って、塀のなかをのぞきました。今日は、どの窓のカーテンも大きくあけられ、ガラス越しに緑の鉢植えが見えます。かすかに音楽が流れてきました。そして玄関の脇にはくっきりと赤い自転車が立てかけてありました。ジジは前庭を横切り、建物に近づくと、ぴょんとかるく窓枠に飛び乗りました。
「にゃああ」
 ジジが小さく鳴き声を上げました。ささやくような声です。とたんにガラスのむこうに姿を見せたのは、白い猫でした。青いリボンを首に結んでジジよりだいぶ小柄です。返事でもしているように、口が動き、赤い小さな舌がみえます。ジジはそれを確かめると、さっと飛び降りて、建物の裏のほうに回っていきます。キキも塀にそって裏に回っていきました。すると、ドアについた小さな猫ドアがぱたりと開いて、さっきの猫が飛びだしてくると、すっと体をジジに寄せていきます。
「ぐるぐるぐーぐるるぐるるる」
 はなれているキキにまでうれしそうにのどを鳴らす二匹の声がきこえてきます。ジジがさっと走りだしました。白猫が追いかけます。逃げたり、追いかけたり、白と黒の毛糸玉のように転がっていきます。ふざけあう笑い声がきこえてくるようでした。それはいつものジジとはまるで違って見えました。キキの猫ではなく、ふつうの猫みたいでした。
 キキはだまって回れ右すると、もどりはじめました。つまらなそうに目は下をむいたままです。
 パタン
 戸の閉まる音がきこえました。キキが門柱のかげから、そっとなかをのぞくと、家のなかからひとりの青年がでてきたところでした。若草色のシャツに、白いズボン、白いスニーカー。靴下はシャツとおなじ緑色です。一瞬のうちに全身の姿がキキの目に飛びこんできました。色もスタイルもぴしりっと決まっていて、雑誌にでてくる男の人のように見えました。
 青年はかるく口笛を吹きながら、赤い自転車に手をかけ、さっとのりこむと、一漕こぎで、半分開いていた門を走りぬけました。キキがあわててむきをかえ、歩きだすと、「あれ」という声といっしょに、きい、きいー、大きなブレーキの音をさせて自転車がとまりました。
「やあ」
 青年はキキをのぞきました。目の大きな人でした。瞳ひとみの奥がいたずらずきそうにふるえています。
「もしかして、ぼくに会いにきたとか、とか?」
 青年は首をかしげておもしろそうに、にこっと笑いかけました。とつぜんボールをあてられたみたいに、キキはぎくっと立ちどまりました。
「それとも、ぼくをまっていたとか、とか?」
 青年はこんどは首をすくめて笑いました。キキはこわばらせた顔をかすかに左右にふりました。そんなキキの反応を無視して、青年は、ますますはずんだ声で、「わるいなあ。今日はもう予約済みなんだ。また、今度にしてくれる? あれ、君……前に会ったことあったかな、かな? わすれてたら、ごめん。このとこいそがしくってさ。でもすてきなドレスだね、その色……」
 と、勝手にしゃべりながら、またがっていた自転車から、足をまわして、おりました。
「町までだったら、ごいっしょしましょうか」
 青年はハンドルをもっていない手を、ズボンのポケットに入れ、また首をかしげました。どうやらこれが決まりポーズのようです。
「ぼく、サヤオ」
 ぽきりっといいました。そういえばだれでもわかるといった自信たっぷりの顔つきです。
 キキの目がチカッと光りました。そのままくいっと横をむくと、いきなりほうきにまたがり、乱暴に柄を上にむけてすごい勢いで飛び上がりました。
「あっ、おっ」
 後ろで自転車が、ばたんと倒れる音がしました。
「ま、ま、魔女かよ。まいったなあ!」
 うわずった声がきこえてきました。
 夕方遅く、ジジはまるで影のように、するりと家にはいってきました。下をむいて、いつできあがるともしれないカーテンを夢見ながら、針を動かしていたキキは、上目づかいに、ジジの様子をうかがいました。ジジは、「ただいま」もいわずに、いきなりごろんと横になると、「にゃぐ ぐるぐるぐるるー」とのどのおくから低い声をあげながら、あおむけになって背中を床にこすりつけました。キキがそこにいることなんか、まったく気にしていません。それからまっすぐ自分の寝床にはいっていきました。すぐすーすーと寝息がきこえてきました。
「どうしちゃったの?」
 キキはまるくなって寝ているジジを見て、顔をしかめました。ちょっと信じられない気持ちです。ジジがこんなに知らんぷりするなんて。まるでキキが見えてないみたいです。
 つぎの朝、キキはベッドのシーツをぴんぴんとわざと大きな音をさせてひっぱりながら、おきだしてきたジジに、ちょっとついでという調子でいいました。
「ジジ、あのね、丘の上のおうちの白猫ちゃんとは、お友達なの?」
「あーにゃ」
 ジジのほうもたまたまでてしまったあくびのような返事です。それからゆっくりと体をのばすと、何気なさそうに、キキからはなれて歩きだしました。
「ジジっ」
 キキは声を強めてよびました。
「返事は、それだけ? このごろ、にゃごにゃごしかいわないけど、どうしちゃったの。わたしたちの言葉、わすれちゃったみたいね」
「わりっ、にゃらーあ、に、にゃ、にゃ、にゃけど……魔女のにゃあ、言葉にゃあ、でてこないのにゃあ」
 半分以上ふつうの猫言葉です。
「はっきりいってよ。なにをいってるのかわからないわ」
 キキは腰をかがめ、ジジに顔を近づけていいました。
「わたしたちふたりだけの言葉は、消えちゃったっていうの?」
「かもにゃあ」
「かもにゃあ、ですって。ふざけないでよ。なにいってるのかわからないわ。いったいどうしたの」
「だってにゃあ、笑われちゃったんだにゃあ。にゃあ」
「にゃあじゃなくて、はっきりいってよ。わたしはあの白猫ちゃんじゃないんだから」
 キキはジジをにらみつけました。その目のはげしさに、ジジは腰をおとしてきゅっと体をちぢめました。それから大きく咳せき払ばらいをすると、頭をぶるぶるとふりながら、
「あーあーあー、試し声、試し声でーすー」といって、ゆっくりのどをのばしました。「にゃ、にゃ、あっにゃ、よかった。魔女猫言葉、すこしもどってきたにゃあ」
 ジジは背筋をのばし、しっぽをぴーんとたてると、まあまあいつもの言葉で話しはじめました。
「だってにゃあ、笑われちゃったにゃもの。あんたのしゃべりかた、とっても変にゃあ。変な猫言葉、まじってるにゃん、だって。それって『ちゃった、ちゃった』とか、『あれれれ』とか、『そうそうそう』といったりする、あわてん坊の、からっぽ頭の猫みたいよって、にゃあ」
「だれが……?」
 ジジはキキの質問にはこたえないで、つづけました。
「ぼくにゃあ、この機会に気持ちを入れ替えてにゃあ、猫語の勉強をやり直さないといけないと思ってにゃあ。かっこいいにゃあ、おとなの猫言葉をつかいたいんだ」
「でもねえ、ジジとわたしは赤ちゃんのときからの仲間よ。ふたりとも赤ちゃん言葉しかはなさなかったのに、いっしょに大きくなっていくうちにおたがいの言葉がわかるようになったんじゃないの。これはね、ふたりで作ってきた魔法かもしれないのよ。それをもういらないっていうの?」
「でも言葉がどっちつかずっていうのもにゃあ。思想がないよにゃあ」
「なに? その思想って」
「思想って、すてきな言葉でしょ。思想をきちんともった大人ってすてきよ、っていわれちゃったんだ。ぼく、がんばらなくちゃにゃあ。それで、キキとぼくの魔女猫言葉の魔法は当分、どっかに行っててもらいたいんだにゃあ」
「ふん、そうですか。あんたって、かんたんに影響されちゃうのね」
「それをキキからはいわれたくないにゃあ。でも……キキ、どうして白猫ちゃんのこと知ってるの?」
「ジジが猫道なんか歩いていたから、あとつけたのよ」
「そういうのあり?」
「ありよ、もちろんありよ。だってジジは猫道なんて、ふつうの猫が歩くとこだって、ばかにしてたじゃない。わたしはね、ジジが町の人たちに、『魔女のお仕事のお手伝いなんて、すごいのね』なんて、ちやほやされてとくいになってるの、ちょっと自慢だったのに」
「ちやほや……それっていじわるないいかたじゃない? でもいいよ。いわせといてあげるにゃあ。でも、さあ、猫道ってにゃあ、ふたりで歩くのにいいんだよにゃ。吹く風もにゃ、ふたりって風なんだ、悪いけどにゃあ……」
 ジジは塀の上を歩いているように、足をよせてみせました。
「それに高いとこだから、未来を語るのに、ちょうどいい場所なんだ。ドキドキって嵐みたいに力がみなぎるんだ。悪いけどにゃあ……」
 キキはしわをのばしおわったシーツを、もう一度ぱんとたたきました。
(悪いけど……悪いけど……って二回もいって。だれに悪いっていうのよ。気をつかっているふりして、これって、見せびらかしじゃないの?)
 キキは急に自分の胸が暴れはじめるのを感じました。
(未来……ジジは未来を語ってるのね! ふん、ごちそうさまですわね)
 そっとキキからはなれようとしていたジジが、半分開いたドアのすきまに顔を入れて、おどろいたようにふりかえりました。
「キキ、贈り物がとどいてるよ」
 小さなかごのなかに、うすいピンクと白いコスモスがまざりあってはいっていました。かわいい花かごです。カードもはさんであります。
「今日はあいてます。お会いしましょう。サヤオ」
 キキは思わず下唇をかみました。門のところでの、サヤオさんの失礼な言葉を思いだしたのです。
(それなのに、『お会いしましょう』って、どういう意味? こっちからたのんだわけでもないのに。なんてずうずうしいの)
 キキは、ふんと怒ったように息をはくと、花かごをそのまま床にとんとおきました。
「にゃごーにゃごーぐおー」
 とつぜん、ジジがはげしい声をあげました。
「キキ、キキ、今、サヤオっていったよね。あの夕日館のサヤオさんのことでしょ。キキ、さそわれたんでしょ。にゃごー、うん、すごいね。行くんでしょ。行くよね」
「なに、興奮してるのよ。ジジ」
「だって、だって」
「どうして、わたしが行かなければならないの?」
「だって、さそってくれてるんだよ。あの家のサヤオさんがにゃあ」
「当然、わたしが来ると思っている、この態度はなによ!」
 キキは頭にきて、ふーんと息を吹きだしました。
「でもねえ、キキ、行ってもいいんじゃない」
「こんな失礼なさそいに、だれがのるものですか」
「まさか! サヤオさんにさそわれて断る人なんていないよ」
「ジジ、どうしてそんなにしつっこくいうの?」
「だって、ほんとうにすてきな人なんだよ」
「わたし、もう、会ったわよ」
「えーっ、もう?」
 ジジはさけび声をあげ、床から飛びあがりました。
「手ばやいんだね、キキって。ね、すてきな人だったでしょ」
「ふん、ただのうぬぼれやじゃないの」
 キキは口さきで蹴け飛とばすようにいいながら、ちらりっと赤い自転車に寄りかかっていたサヤオさんの姿を思いうかべました。
(あまく見られたらたまらない)
 キキはちらりっとでも姿を思いうかべてしまった自分にも、腹立たしくなりました。あの家の高慢ちきな猫、あのかっこつけてるサヤオ。両方とも大きな顔して、キキとジジのくらしにはいりこもうとしています。キキとジジのふたりっきりの言葉まで取り上げようとしているのです。
「行ってくれると助かるんだけどにゃあ。キキといっしょにあの家にはいっていったら、ヌヌちゃん、びっくりするだろうにゃあ」
 ジジは遠くを見るようにうっとりと、目を細めました。窓の外から合図を送る身分ではなく、お客様として堂々と玄関からはいっていく自分の姿を想像しているのでしょう。
「あの白猫ちゃん、ヌヌっていうの?」
「そう、かわいい名前でしょ。とてもたいせつにされているんだよ。首のリボンなんて、毎日取り替えてもらってるんだ。やっぱり芸術家の猫は違うよ」
「芸術家ってなによ」
「この世にまたとない美しいものを作る人のこと。キキ、知らなかった?」
「それが、あのサヤオさんてわけ? おおげさなこと」
「すごくきれいなドレスを作るんだってよ。ヌヌちゃんがいってた。『ぼくは、魔女猫なんだよ』って、ヌヌちゃんに自慢したら、そんなおとぎ話のなかの猫より、しっかり、ちゃんと一人前に生きてる猫のほうがわたしはすきっていわれちゃった。うちのサヤオさんなんてすごいんだからって。だからぼくもがんばらなくちゃ。これからは品よくして、きれいな大人の猫語で話すようにしたいんだ」
 ジジは足を踊るように動かしながら、胸をそらして歩き回りました。キキはむかっとして、思わずなにかさけびそうになるのをやっとこらえて、いいました。
「ジジ、悪いけど、あなたのご希望にはそえません。ヌヌちゃんは立派なおうちの猫かもしれないけど、あなただってめったにいない魔女猫なのよ。それも、このキキの猫よ。わすれないでね」
「にゃああーん」
 ジジは「わかってる」というように、大きく口をあけて返事をしました。でも、それは猫語でした。
 ところが、つぎの日も贈り物がとどきました。いつ来たのか、朝おきてドアをあけたら、もうそこにおいてあったのです。今度はチョコレートのようです。カードもついています。
「魔女さん、君を最優先します!」こう書いてありました。
 キキはジジの目のさきにカードをつきだしていいました。
「ほら、見てよ。このいいかた。まるでごほうびをあげるって態度じゃないの」
「どうして、そう思うのかなあ。キキがいちばん会いたい人だっていってるんじゃないの?」
「それがずうずうしいのよ。わたし、行かない。なんといわれても行かなーい」
 キキは強い口調でいうと、手のなかのチョコレートの箱を見ました。目立たない大きさです。箱の色もうすい水色で、チョコレートに品よく合っています。リボンも「ちょっとした気持ち」っていうようにひかえめです。なかには、丸、三角、四角、それにハート形のチョコレートが四つはいっていました。
(いうことはおそろしくずうずうしいけど、いい趣味してるかも……)
 ところが、つぎの朝も贈り物です。断面がハートの形をしている、銀色のえんぴつ一本。真っ赤な蝶ちようネクタイが結んでありました。そえられた消しゴム形のカードには、「…………?」と、「    」しか書いてありませんでした。
「キザなやつ!」
 キキはいつもつかわない乱暴な言葉を、つぶやきました。
「おしゃれな贈り物じゃないか。サヤオさんはだれもやらないようなことするんだよ。だって芸術家だもの。ヌヌちゃんもうっとりしちゃうくらい、きれいなドレスだって」
「うるさい」
 キキは思わずどなりました。でもなぜかすこし心にひっかかります。こんなずうずうしい人にあったことない。でも、それは今までにない新鮮さでした。そう感じてしまう自分がキキは気に入らないのです。ジジがえんぴつを前足でおさえていいました。
「お返事をこの空いてる括弧のなかに入れてほしいんだよ。むこうもえんりょしてるんだよ、きっと」
「えんぴつなんて、おしつけがましいじゃない。わたしは返事なんて書かない。さそわれても行かない。やっぱり、行かない」
 キキは小さな子どものように足踏みしながらいいました。
「どんどん、いじわるく、いじわるく考えるんだねえ。それってよくないと思うよ」
 ジジはいいました。
 足踏みが急に荒々しくなって、キキがとつぜんさけびだしました。
「ものたりない、ものたりない、ものたりなーい」
 床が揺れています。
「どうしちゃったの?」
 ジジはあっけにとられています。
「なんでもないわよ、ものたりないったら、ものたりないの!」
 キキはスカートをぱっとふって、また大きく足踏みをしました。
 ジジは飛びあがって部屋のすみに逃げこむと、体をちぢめてじっとキキを見上げました。
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