そこへ道の向こうからサルがやってきます。
「よー、カニさんこんにちは。やや、美味しいそうなオニギリだね」
「うん、米はもっちり、ノリはいい感じに水気を含んで何よりこだわりの塩がたまらないね」
「ごくっ、ほしいなぁ。どうだろこのカキの種と交換してくれないかい」
カニは無視して通り過ぎようとします。
「待って!カニさん。そのオニギリは一度食べてしまえばおしまいだろ?カキの種を植えれば木がはえて実がなって、あまくて美味しいのがいっぱい食べられるんだぜ?」
サルはうまいことカニをいいくるめて、オニギリを手に入れます。
カニは家に帰って庭にカキの種を植えます。そして
早く芽を出せカキの種
出ないとハサミでちょん切るぞ
といって毎日水をやります。
やがて芽が出てどんどん大きくなっていきます。カニは
早く木になれカキの種
ならぬとハサミでちょん切るぞ
と水をやります。
やがて大きな木に育ちます。実がなるのももう一歩という感じです。カニは
早く実がなれカキの種
ならぬとハサミでちょん切るぞ
と水をやります。
カニがいっしょうけんめい育てたせいか、カキの木は美味しそうな赤い実をたくさんつけました。
「さあ食うぞ」
カニは喜んで木に登ろうとしますが、何度やってもすべって転げ落ちてしまいます。
「まいったなぁ。これじゃせっかく育てたのに意味がないよ」
カニが困っているのを見てサルが言います。「カニさん、だいぶ困ってるようだね。僕は木登りの名人なんだよ。取ってあげよう」
「えっ、それは助かるよ」
サルはひょいひょいとカキの木に登っていきます。そして真っ赤なカキの実を取ると、「こりゃうまい」とむしゃむしゃ食べるのでした。
見ているだけでも美味しそうで喉がゴクッとなります。
「おおいサルさん、早く私にも取ってよう」
ところがサルは、
「ふん、もともとカキの種は俺のものだったんだ。これでもくらえ」
と、まだ熟していない青いカキをカニに投げつけます。見事命中し、 カニは「ぎゃっ」と潰れしんでしまいました。
そのときカニのこうらが割れて、三匹の子ガニが這い出します。
三匹の子ガニはお母さんが殺されたのを知り、わんわんと泣きました。
「にっくきサルを絶対ヒドイ目にあわせてやるぞ」
と三匹の子ガニは誓うのでした。
何年かたち、三匹は立派なカニとなり、いよいよ復讐に出発します。
途中、くりさんに出会います。
「カニさんカニさん、どこさ行くだ」
「いじわるサルをヒドイ目にあわすんだ」
「よーし、ほんならおらも着いていくど」
くりさんもサルに意地悪されたことがあったのです。
さらに進むと、ハチさんに出会います。
「カニさんカニさん、どこに行くの」
「いじわるサルをヒドイ目にあわすんだ」
「そりゃユカイだ」
ハチさんもサルに意地悪されたことがあったのです。
同じように、ウスどんと馬のうんちくんとも会い、みんなで サルの家を目指します。
サルの家につくと、留守でした。みんなは家にしのびこんでサルの帰りを待ちます。
「サルはずるいヤツだから、こっちも気をひきしめていかないとね。作戦が大事だよ。まずサルが帰ってきたら寒いから囲炉裏の火にあたるだろ」
「そしたらぼくが灰の中からはじけて火傷やせてやろう」
と、クリは灰の中へ入ります。
「火傷したら冷やそうとして水おけに手をつっこむだろ」
「そこで僕はブーンと飛び出してサルをチクチクさすよ」
と、ハチは水おけの裏に隠れました。
「痛くてビックリして外へ逃げ出すだろ」
「そしたら僕が踏み石の上にいたら、ツルッとすっころぶね」
と、馬のうんちくんは踏み石の上に。
「そこでワシが屋根の上からズシーンと落ちてサルをペタンコにするんじゃ」
と、ウスは屋根の上に登りました。
そこへサルが「寒い寒い」と戻ってきます。
囲炉裏に火をくべて温まっているところ、 パーンとカキがはじけて飛び出しました。
「うわっ、あつっ!!」
サルは手をヤケドして、冷やそうと水桶に走ります。
その時水桶の陰から、ハチがブーン
「ぎゃあ!」
チクチク刺されたサルはこりゃたまらんと庭へ逃げ出します。
そこは牛のうんちが敷石の上にいますから、ツルッ、スッテーンとスッ転びます。
「うわぁぁ」
何が何やらわからないサルの上に屋根の上からズシーンとウスが落ちてきて、とうとうサルはヒラヒラのぺったんこに潰れてしまいました。
こうしてカニはお母さんカニの仇を取ることができたのでした。