神様が天と地と動物たちを作られたばかりの頃、
ある年の十二月三十日に、神様は全国の動物たちに手紙を出しました。
「一月一日の朝、私の宮殿に集まるように。
早くついた者1位から12位まで、
順番に一年間、その年の大将にしてやる」と。
ネズミが牛に話しかけます。
「なんだか神様は宮殿に早くついたら
大将にしてやるっておっしゃってますけど、
牛さん、大将てのは何か、いいことがありますかね」
牛が答えます。
「いいことってネズミさん。
大将というと偉いですから。
それはもう、威張って誰にでも命令できますよ」
「へーーっ、じゃあ、
私はこんなちっちゃいけども、
大将になったら馬だって虎だって命令をききますかね」
「そら、何だってききますよ。それが大将ですから」
「そりゃあスゴイや!」
ネズミは、これは負けられん、
どうしても大将になりたい、
ライバルを蹴落としてでも一番になるのだと強く、思いました。
そこへぼんやり者の猫が話しかけます。
「ネズミさん、神様が来いと言うとりましたのは、
あれは何日じゃったかの」
「ああ、それでしたら…たしか、
2日の朝じゃなかったですか。
うん。間違いない。2日目の朝だ。
猫さん、お互い頑張りましょう」
ネズミはしれっとウソを教えます。
そして12月31日の夜。
牛は考え方が地道ですから、
自分の足がのろいことを知っていますから、
夜のうちから出発します。
一晩歩いて神様の宮殿に着こうという考えです。
そこへネズミがチチチッと牛の背中に飛び乗ります。
自分は苦労せずに、牛に運んでもらおうという考えです。
牛は夜道をのろのろと歩き、
野を越え、山を超え、谷を越え、
正月の朝日が白々とさしてきたころ、
ようやく神様の御殿にたどり着きます。
「よぉーーやく着いたか。
ウホッ、おら一番でねえか?」
するとネズミがピョーンと牛の背から前に飛び出し、
宮殿の門をくぐり、
「うわーい、俺一番のりぃ」
見事に出し抜かれた牛は、やるせない気持ちを
もおーーぅ
という鳴き声に託すのでした。
さてそこへやってきたのは虎です。
虎はさすがに速いです。
当然自分が一番だと自身満々に走ってきたところ、
すでに牛とネズミが到着していると聞き、ガックリしました。
次はピョンピョンとやってきたのはウサギです。
これも速いです。
「到着ー?」
元気よく御殿の入り口に飛び込みます。
それに続くのは竜です。
ゴーー
と火を吐きながら、すごい迫力で空を飛んできます。
一方、にょろにょろ地面を這っている地味なものがいます。
蛇です。竜は蛇がすごく歳を取って天にのぼったものです。
だから蛇にとって竜は大先輩で、尊敬の的です。
だから、先輩に対する遠慮もあり、
また実際とても竜にはかないませんから
蛇は竜に続いて六番目の到着となりました。
それから馬、羊と続きますが、
その後をやってきた猿と犬がもうケンカばかりしています。
「道をふさぐなよう」
「なんだとお前こそ邪魔だよ」
と、お互いに足の引っ張りあいばかりしています。
見かねた鶏が間に入ります。
「あーーもう!お前たちはすぐにケンカばかりして、
ためにならん。俺が真ん中に入るから、離れちょれ」
こうして、猿、鶏、犬の順で到着します。
そこへ、
ドドドーー
スゴイ勢いで突進してくるものがあります。
フッハッ、フッハッ、
鼻息荒く、大地をとどろかし、
他の動物たちを突き飛ばし、跳ね飛ばし、
ズガーーン!!
御殿の壁にぶち当たってやっと止まりました。
イノシシです。
「よーやく揃ったようじゃな。
よしよし。それでは約束どおり、
鼠、牛、虎、兎、竜、蛇、馬、羊、猿、
鶏、犬、猪…順番に一年ずつ、その年の大将にしてやる。
今日は遠い所ご苦労じゃったな。ささ、楽しんでいっておくれ」
神様は集まった動物たちにお酒やごちそうをふるまい、
みんなで楽しく飲み食いして、また帰っていきました。
さて次の日の朝、猫がひょっこり神様の御殿に現れます。
「神様、約束どおり来ました。
大将にしてくれるちゅう話でしたの?」
「なんじゃお前は!元旦の朝に集まれとゆうたのに。
今頃来ても遅いわ。しっしっ。とっとと失せろ」
猫は鼠に騙されたことを知りました。
「ネ…ネズミの野郎」
こういうわけで、今でも猫は鼠を見かけるたびに
怒り狂って追っかけているのです。
本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。ありがとうございました。