あまりひどいうそをつくので、怒った村人たちはうそ五郎を捕まえて山の高い木の枝に逆さづりにしてしまいました。
するとそこにテングが、テングの宝物の「羽おうぎ」をパタパタとあおぎながら空を飛んできて、
「いったい、何をしておるんじゃ?」
と、たずねたのです。
「逆さまになって見る景色はいいぞ。どうじゃ、テングさまもやってみんかね?」
「おもしろそうじゃな。しかし、どうやってぶらさがるんじゃ?」
「おらが教えてやるから、ちょっと、おろしてくだされ」
うそ五郎はテングをうまくだましてテングを木の枝に逆さづりにすると、とりあげた「羽おうぎ」をパタパタとあおいで、京の都まで飛んでいきました。
都を歩いていると、立派な屋敷の前に、
《娘の病気を治した者は、婿(むこ)にむかえる》
と、立て札がありました。
うそ五郎は屋敷の人に、
「娘さんは、どんな病気だね?」
と、たずねました。
すると屋敷の人は、声をひそめながら答えました。
「それが、おならの止まらない『尻なり病』なのです」
「よしきた。おらが治してやる」
うそ五郎は娘の座敷に入ると、羽おうぎで娘のお尻をあおぎました。
するとおならはピタリとやんで、娘も屋敷の人たちも大喜びです。
そして、家の主人に、
「ありがとうござしました。ぜひとも、娘の婿になってください」
と、頼まれました。
「それは願ってもない話しだが、ちょっくら待ってください」
うそ五郎は羽おうぎをパタパタとあおいで、テングを逆さづりにしている山へ飛んで帰ると、
「テングさま、すまなかった。
おわびのしるしに、都の酒を持ってきた。
たんと、飲んでください」
と、テングを木の枝からおろしました。
その後、うそ五郎はあらためて都にのぼって、とても良い婿になったという事です。