とってもとっても、きれいなお嫁さんです。
若者はうれしくてうれしくて、毎日お嫁さんの顔をながめてばかりで仕事をしません。
こまったお嫁さんは自分の顔を絵師にえいてもらい、その絵を渡して言いました。
「あなた。これからはこの絵を見ながら、仕事をして下さいな」
その日から若者は田んぼのそばの木にその絵をはり付けて、毎日せっせと働きました。
そんなある日の事、ヒューと風が吹いてきて大切なお嫁さんの絵が飛んでいってしまいました。
その絵はヒラヒラ飛んで、お城の殿さまの庭に落ちました。
そしてその絵を見た殿さまは、ビックリです。
「・・・なんと、なんとうつくしい。すぐにこの女の人を探して、ここに連れてくるんくだ」
間もなく若者の家に殿さまの家来がやってきて、お嫁さんを無理矢理(むりやり)お城へ連れて行きました。
その時、お嫁さんは急いで若者に言いました。
「あなた。アメ屋になって、お城に来て下さい」
さて、お城に行ってからのお嫁さんは、毎日泣いてばかりです。
「おいおい、泣くな。めずらしい菓子をやろう」
「エーン、エーン・・・」
「それでは、これはどうだ? 百両はするにしきだぞ」
「エーン、エーン・・・」
殿さまは、ほとほと困ってしまいました。
するとそこへ、若者がアメ屋になって歌を歌いながらやってきました。
♪トントコ、トントコ。
♪アメ屋でござる。
♪トントコ、トントコ。
♪アメ屋でござる。
これを聞いたお嫁さんは
「オホホホホホッ」
と、うれしそうに笑いました。
「そうか、お前はアメ屋の歌が好きなのか。それならわしが、歌ってやろう」
殿さまはアメ屋を呼ぶと、着ている着物を取り替えさせました。
そしてアメ屋のかっこうをした殿さまは、身振り手振りで歌います。
♪トントコ、トントコ。
♪アメ屋でござる。
♪トントコ、トントコ。
♪アメ屋でござる。
その時、家来がやってきました。
「こら、アメ屋は城に入ってはいかん。すぐに出ていけ!」
こうして殿さまはお城の外に追い出されてしまい、二度と戻ってこれませんでした。
そして殿さまになった若者とお嫁さんは、お城で幸せに暮らしたのです。