モグラのお父さんは、その可愛い子どもを見て言いました。
「こんないい子を、モグラなんかのお嫁にやるのはもったいない。
出来る事なら、この世で一番えらいお婿さんを探してやろう」
それを聞いたモグラのお母さんも、お父さんに賛成しました。
「そうですね。
この子がお嫁に行くのは、一番えらいお婿さんじゃないと。
・・・でも、誰が一番えらいのかしら?」
「そうだな。この世で一番えらいのは、やはりおてんとうさまだろう」
「そうですね。では、おてんとうさまのところへ、お嫁にやりましょう」
そこでモグラの夫婦は、おてんとうさまの所へ頼みに行きました。
「おてんとうさま、おてんとうさま。
わたしたちに、とても器量よしで利口な娘が生まれました。
どうか娘を、一番えらいおてんとうさまのお嫁にもらってください」
すると、おてんとうさまが言いました。
「それはうれしいが、だが、わたしは一番えらくはないよ。
さすがのわたしでも、雲が来れば隠されてしまうんだ。
だからわたしよりもえらい、雲にもらってもらえばいいぞ」
そこで夫婦は、雲の所へ行ってお願いしました。
「雲さま、雲さま。
わたしたちの所に、とても器量よしで利口な娘が生まれた。
どうか娘を、一番えらい雲さまのお嫁にもらってください」
すると、雲が言いました。
「それはうれしいが、だが、わたしは一番えらくはないよ。
さすがのわたしでも、風が吹けば吹き飛ばされてしまうんだ。
だからわたしよりもえらい、風にもらってもらえばいいぞ」
そこで夫婦は、風の所へ行ってお願いしました。
「風さま、風さま。
わたしたちの所に、とても器量よしで利口な娘が生まれた。
どうか娘を、一番えらい風さまのお嫁にもらってください」
すると、風が言いました。
「それはうれしいが、だが、わたしは一番えらくはないよ。
さすがのわたしでも、土手を吹き飛ばす事は出来ないんだ。
だからわたしよりもえらい、土手にもらってもらえばいいぞ」
そこで夫婦は、土手の所へ行ってお願いしました。
「土手さま、土手さま。
わたしたちの所に、とても器量よしで利口な娘が生まれた。
どうか娘を、一番えらい土手さまのお嫁にもらってください」
すると、土手が言いました。
「それはうれしいが、だが、わたしは一番えらくはないよ。
さすがのわたしでも、お前たちモグラにくずされてしまうんだ。
だからわたしよりもえらい、モグラのお嫁になった方がいいのではないのか?」
「そうか、一番えらいのは、おてんとうさまでも、雲さまでも、風さまでも、土手さまでもなく、我々モグラだったのか。
それでは娘は、この世で一番えらい、モグラのお嫁にするとしよう」
こうしてモグラの夫婦は、やがて大きくなった娘をモグラのお嫁さんにしたのでした。