ある日の事、吉四六さんは村の家々をまわって頼みました。
「八幡さまの木の鳥居(とりい)が、古くなって壊れそうじゃ。
みんなでいくらかずつを出し合って、金の鳥居を寄付したいと思うが。
どうだろうか?」
「それは良い考えだ。吉四六さんも、たまには良い事を言うの」
こうして村人たちは、吉四六さんにお金を預けました。
さて、それからいく日もたたないうちに吉四六さんが、
「金の鳥居が、出来ました」
と、ふれまわったので、
「ほう、ずいぶんと早くに出来たな」
「一体、どんなに立派な鳥居だろう?」
と、さっそく村人たちは、八幡さまヘ出かけて行きました。
ところが鳥居はそのままで、どこにも金の鳥居なんてありません。
「どういう事だ? 吉四六さんを呼んで訳を聞こう」
そこで呼ばれた吉四六さんが、やって来ると、
「ほら、ちゃんとそこに、金の鳥居が建ててあるではないか」
と、みんなの足元を指差しました。
みんなが見てみると、そこには縫い物に使う木綿針で作った小さな鳥居が、ちょこんと置かれていたのです。
「なるほど、確かにこれも、金の鳥居だ。こりゃあ吉四六さんに、いっぱい食わされたわ」
村人たちは、笑いながら帰って行きました。