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第八章 風神雷神(4)_悪魔が来りて笛を吹く(恶魔吹着笛子来)_横沟正史_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: 金田一耕助はこの質問が、どうしてこの青年を苦しめるのだろうといぶかったが、そのときうしろで毒々しい、ゆすりあげるような
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 金田一耕助はこの質問が、どうしてこの青年を苦しめるのだろうといぶかったが、その

ときうしろで毒々しい、ゆすりあげるような笑い声が爆発した。目賀博士である。

「三島君、三島君」

 博士は悪戯いたずらっぽい眼をギラギラ光らせて、

「何も遠慮することはありゃせん。目賀先生は奥様と、同じお部屋におやすみでしたと、

なぜはっきりいわんのじゃ。げっげっげっ」

 金田一耕助と等々力警部は、弾かれたように博士のほうをふりかえった。博士はにやに

やと毒々しい微笑をうかべている。金田一耕助はその好色にかがやく瞳め、ぎらぎらと脂

あぶらぎった肌を見ているうちに、まるで蟇の妖気にあてられたように、体中が熱くなっ

たり寒くなったりするのを感じた。

「ああ、いや」

 と、金田一耕助は苦しそうな空から咳せきをして、

「なるほど、なるほど。先生は奥様の主治医でいらっしゃるから、それは当然の御配慮で

しょうな。何しろ、いつなんどき奥様の発作が、再発しないとも限らぬ場合ですから」

「ふん、まあ、そんなものじゃろかい。とんだ主治医じゃて、げっげっげっ!」

 目賀博士は蟇のような声を立ててうそぶいた。

 金田一耕助はそのとき、美禰子がここにいたらどんな顔をするだろうかと思うと、この

厚顔無恥な蟇仙人に対して、肚はらのなかが沸たぎり立つような怒りをおぼえた。

「ええと、なるほど、なるほど。それで先生が起きてこられたわけですな。そのとき、

奥さまは」

「あれは……いや、奥さんは……」

 と、素速くいいなおしたものの、さすがの蟇仙人も照れたらしく、つるりと顔を撫なで

あげて、

「いや、その、なんじゃ、お信乃さんにまかせてきた。幸いお種が気を利きかして、詳し

いことは話さなんだで、奥さんは何も知らなんだのじゃ。騒ぎを聞いて美禰子さんも起き

てきた。それでみんなしてこの部屋のまえへ駆け付けてきたのじゃが……」

「あなたもあの欄間から、部屋のなかを覗のぞかれたんでしょうね」

「そりゃもちろん。覗かんことにゃ……」

「そのときあなたはこの紋章に、お気付きになりませんでしたか」

「気がつかなんだな。あそこからじゃ見えんのじゃないかな」

「なるほど、それから。……」

「菊江さんや三島君は、脳溢血だろうというんじゃが、わしはどうも様子がすこし変だと

思うた。死体のほうは脚だけしか見えなんだが、砂のうえに散っている血の量といい、飛

沫しぶきの状態といい、鼻血とばかりはいいきれぬ。そこでともかく新宮さんを呼んでこ

いと、お種を迎えにやったのだが……」

「お種さんを……?」

 金田一耕助が何気なくふりかえると、三島東太郎はもじもじして、

「いまから考えるとぼくが行くべきだったんです。そうすればあのことも、もっとはっき

りしたんですが……」

「あのことというのは?」

「お種はな、新宮さんのところへいくとちゅう、椿子し爵しやくを見たというんじゃ。な

あに、気が動顚してたで、蜃しん気き楼ろうでも見よったんじゃろ」

 金田一耕助はぎくっとして、等々力警部と顔見合わせる。何かしら不吉な想いが、いか

の墨のようにどすぐろく肚の底にひろがっていく。これはいよいよ尋常の事件ではない。

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