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第十七章 妙海尼(3)_悪魔が来りて笛を吹く(恶魔吹着笛子来)_横沟正史_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: 金田一耕助にもその意味はわかっていた。出川刑事はこんどの事件の関係者のなかに、お小夜に相当する人物を、当てはめてみよう
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 金田一耕助にもその意味はわかっていた。出川刑事はこんどの事件の関係者のなかに、

お小夜に相当する人物を、当てはめてみようとしているのだ。生きていれば二十三、四に

なる娘。……そして、おそらく非常な美人……金田一耕助の頭脳のなかを、ふと、ある面

影がかすめて通る。しかし、金田一耕助はあわててそれを揉もみ消した。お小夜という娘

の生死、あるいはその後のなりゆきが、もっとはっきりわかるまでは、そういう考えかた

をすることは禁物なのである。

「ところで、おこまさんという女は、その時分、何をしていたんですか。亭主もなく、娘

も死んだとすると……?」

「なんでも蘆あし屋やか住すみ吉よしへんの、金持ちの疎開したあとへ、留守番みたいに

して住みこんでいたらしいと、植松はいうんです。ところが、都合の悪いことには、植松

もその家を知らないんですよ。おこまに聞いてみたが、はっきりと答えなかったそうで

す。おこまにしてみれば、お小夜という父ててなし児をうんだことがありますから、昔の

ことを知ってる連中とは、なるべくならば、つきあいたくない肚はららしいんですね。植

松もそれを察したから、しつこくは聞かず、お葬いがすむとそのままわかれて、それきり

だそうです。だから、その後も金持ちの家の留守番をしていたのか、それとも、あのへん

も空襲でやられたから、また、どっかへ行ったのか、さっぱりわからぬと植松はいうんで

す」

「まあまあ、ほんまに、はかないことだすな。あの戦争ちゅうもんさえなかったら、こん

なにみんな、ちりぢりばらばらになることも、おまへなんだやろうにな」

 そうなのだ。その戦争のために、こういう捜査ごとの場合、どれだけ掣せい肘ちゆうを

うけるかわからないのである。

「ところで、おたまという妾めかけはどうしました。その女は当時、おこまの住み込んで

いた家を知っていたわけですね」

「そうなんです。ところが、そのおたまという女も、二、三日、植松のところへ厄介に

なったのち、鳥取のほうに親しん戚せきがあるからと、そっちへいってそれっきり。これ

また、植松のほうでは消息がわかっていないんです」

「ほほう、すると、この線もそこで切れてしまったわけですか」

「いや、それがそうでもないんです。植松のところで、だいたい以上のようなことを訊き

いたのち、板宿の、せんに植辰の住んでいた家の近所というのへいってみました。さいわ

い、あのへんはもうだいぶ復興していて、昔住んでた連中が、バラックを建ててかえって

きているんですね。そのなかには、植辰やおたまを知っているひとも沢山いました。そう

いうひとたちに片っぱしから当たって、おこまやお小夜、それから兵隊にとられた治雄と

いう倅せがれ、また、おたまのことを聞いてみたんですが、おたまのことはともかく、お

こま母子や治雄という息子のことを知っているひとは、ほとんどいないんですね」

 金田一耕助は眉まゆをひそめて、

「すると、治雄という息子は、親おや爺じといっしょに住んでいなかったんですか」

「そうなんです。これは植松もいってましたがね。なにしろ、親爺の植辰が、つぎからつ

ぎへと女をとりかえるもんだから、治雄も家にいづらくて、小学校を出たじぶんから、神

戸のどこかへ奉公にいっていて、親爺のところへかえることは、ほとんどなかったそうで

す。おこまはおこまで、じぶんより年の若い妾のいるところへなど、顔出ししたくなかっ

たんでしょうな。ほとんど寄りつかなかったらしい。と、いうわけで、おこま母子や治雄

のことは、てんで要領をえませんでしたが、さいわい、ちかごろ……と、いっても、もう

一年ほどまえのことですが、妾のおたまに会ったというひとを見つけましてね」

「ああ、すると、おたまは鳥取から、またこっちへ舞いもどっているんですね」

「そうなんです。そのひと……おたまにあったというひとですね、……そのひとがいうの

に、去年の秋、神戸の新開地でばったりおたまに会ったというんです。そのとき、ちょっ

と立ち話をしたが、そのときのおたまさんの口ぶりでは、新開地の近所の、アベック専門

の旅館、つまり、いまはやりの温泉マークのついた旅館ですね。そういうところへ女中と

して住みこんでいるらしいというんです。そこでさっそく新開地へとんで見たんですが

ね」

「まあまあ、ほんまにまあ、えらいお仕事だすな。それでおたまはんの居所がわかりまし

たのかいな」

「それがねえ、そのひとも旅館の名前は知らぬというんです。おたまさんに聞いたかも知

らぬが、忘れてしまったというんですよ。それで、仕方がないから、おたまに会ったとい

う地点を中心として、その付近の温泉マークの旅館を虱しらみつぶしに調べてみたんで

す」

「そんなにたくさん、そういう種類の旅館があるところなんですか。新開地というの

は?」

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