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地狱风景-海底水族馆

时间: 2021-10-16    进入日语论坛
核心提示:地底水族館 その夜から翌日にかけて、ジロ楽園の隈(くま)なき大捜査が行われた。木島刑事の報告によって、所轄警察署から、十数
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地底水族館
 その夜から翌日にかけて、ジロ楽園の(くま)なき大捜査が行われた。木島刑事の報告によって、所轄警察署から、十数名の警官隊が駈けつけたのだ。
 警官隊と楽園の傭人達と、数十人の捜索隊が、人数丈けの提燈をふりかざして、或は塔の上を、或は迷路の中を、或は観覧車の箱の一つ一つを、メリーゴーラウンドを、地底の地獄を、水族館を、広い野原を、深い森を、縦横無尽に探し廻ったが、夜があけるまで、片輪者の姿はどこにも発見されなかった。
 楽園の(そと)へ逃げ出したかも知れないという説も出たけれど、それは信じられぬ事であった。あの一目で分る畸形児がこの楽園を飛び出して、どこへ身を隠し、どこに食物を求めることが出来よう。それ自体が一つの巨大なる迷路を為すこの楽園こそ、人目を忍ぶ犯罪人には、こよなき隠れがではないか。のみならず、彼奴(あいつ)は、七月十四日の大計画を目の前に控えているのだもの。
 翌日のお昼頃になると、人々は疲れ切って、楽園の中心にある建物に集って来た。
「そのカーニバル祭とかを中止して、ここの人達がもっと安全な場所へ避難してはどうですか。つまり、ジロ楽園を空っぽにしてしまうのですね」
 警察署長が腹立ちまぎれに怒鳴った。
「僕達は(ほか)に行く所がありません。いつもいう通り、僕達にはこの楽園が唯一の世界なんです。ここを見捨てる気にはなれませんよ。それよりも、もう一度探して下さい、もう犯人は分っているのです。捉えさえすればいいのです」
 治良右衛門が不眠の為に青ざめた顔で頼んだ。
「探すと云って、どこをです。僕達はもう探し尽したじゃありませんか」
「僕に少し心当りがあるのです。あすこじゃないかと思う場所があるのです」
「どこです」
「地の底の水族館です」
「アア、あすこなら、十度も見たじゃありませんか」
 木島刑事が口をはさんだ。
「見方がいけないのです。これは僕もたった今気づいたのですが、あすこには誰にも分らぬすばらしい隠れ場所があるんです。あの恐ろしい片輪者はそれを知っていたかも知れません」
「じゃ、そこへ案内して下さい」
 署長が進まぬ口調で応じた。
 木島刑事と五名の警官とが、治良右衛門のあとに従って、地底の水族館へと降りて行った。
 そこにはコンクリート作りの長いトンネルが、曲り曲って続き、その両側の壁に、幾つもの大きなガラス窓が開いて、厚ガラスの(そと)は、直に海底の景色になっていた。
 無論真実の海底ではなく、ガラスの外にはやっぱりコンクリートの水槽があって、その底に岩や小石や土を置き、雑多の海草を植え、各種の珍魚異魚を放したものである。燐光(りんこう)を放つ海蛇(うみへび)の水槽の(ほか)は、皆水の上に明るい電燈がついていて、海底を模した水槽は、底の小石の一つ一つまで、ハッキリと、しかし青い鹽水(しおみず)の層に(ゆが)んで、眺められた。
「あなた方はどこを探したのです。まさかこのガラス張の向側までは注意しなかったでしょうね」
 先頭に立った治良右衛門が、六人の同勢を振返って尋ねた。
「ガラス張りの向側ですって? そこは水の中じゃありませんか。いくらなんでも……」
「イヤ、水の中といっても、水面の上に広い隙間があるのです。そこの空気を呼吸して生きていることが出来ます」
 それを聞くと、六人の人達は、顔見合せて、意味の分らぬ呟きを漏らした。余りにも奇抜な犯人の隠れがが恐ろしく思われたのだ。
「すると、あなたは、あのせむし男が、水族館のタンクに身を沈めて、顔丈けを水面に出して、じっとしているとおっしゃるのですか」
「その外に、もう探す場所がないではありませんか」
 人々の歩き方が俄にのろくなった。一つ一つのガラス窓を、丹念に覗き始めたからだ。
 治良右衛門と木島刑事とは、肩を並べて、一つの大きなガラス張りの前に立っていた。
 そこは魚類ではなくて、異形(いぎょう)な海草ばかりを集めた水槽であったから、ガラス窓一面、魔女の乱れ髪が逆立って、泥沼の様な陰影を作っている為、いくら電燈があっても、見通しが利かず、疑えば最も疑うべき場所であった。
「ここには、大きな(うお)でもいるのですか」
 刑事が不思議相に尋ねた。
「イイエ、ここは海草ばかりです。魚なんて一匹もいない筈です」
 この答えが、刑事を飛上らんばかりに驚かせた。
「でも、君、あのゆれ方は、あの菎布(こんぶ)の葉のゆれ方は」
 見ていると、海草のヌルヌルした青黒い密林が、おどろおどろと乱れゆらいで、白い五(べん)の花が、ポッカリと咲き出でた。生白(なまじろ)い五つの花(べん)ひとでの様に物欲しそうに、キューッキューッと海水を締め(つか)んだ。
「手だ、君、人間の手だ!」
 それは明かに、人間の五本の指であった。しかも断末魔にもがき苦しむ指であった。
 指にかき拡げられた海草のうしろから、ニョイと、大きな口が現われた。口ばかりの大きな畸形児の顔が。彼は(うつ)ろな目を一杯に見開いて、口からは滝津瀬(たきつせ)と真赤な絵の具を吹き出しながら、水の中で何かわめいていた。声のない叫びを叫んでいた
 若し、木島刑事がリップリーディングを心得ていたなら、今断末魔の餌差宗助の(こい)の様な(くちびる)から、身の毛もよだつ呪咀(じゅそ)の言葉を読み得たであろうものを惜いかな、彼は、唇の文字には少しも通じていなかった。
 無論二人は、(ただち)(まわ)(みち)をして、その水槽へ駈けつけたけれど、もう手遅れだった。宗助は何者かの為に胸を刺されて、その水槽へ投げ込まれ、(すで)にこときれて浮上っていた。

 本号で犯人探しを締切(しめき)ります。犯人探しにはふさわしくない変なお話になってしまいましたが、読者の多くは、論理的にではなくても、作者の隠している真犯人を、(すで)に感づいていらっしゃることと思います。それを答えて下さればよいのです。

 

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