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魔术师-殺人第三(1)

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示:殺人第三 その翌日、例になく早起きをした二郎が、庭を散歩しながら、何気なく玄関の前まで来かかると、音吉爺さんが、西洋館の
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殺人第三


 その翌日、例になく早起きをした二郎が、庭を散歩しながら、何気なく玄関の前まで来かかると、音吉爺さんが、西洋館の入口の大扉を、せっせと雑巾(ぞうきん)で拭いているのに出合った。見ると、彼は漫然と雑巾がけをしているのではなくて、その扉へ誰かが白墨(はくぼく)でいたずら書きをしたのを、()きとっていたのだ。
 二郎はハッと立止って、思わず声をかけた。
「爺や一寸御待ち、消しちゃいけない」
 音吉はびっくりして、手を止めたが、文字は已に大部分拭きとられて無意味な一線を残しているばかりだ。
「爺や、お前そこに書いてあった字を覚えているだろうね」
 二郎の目の色が変っているので、音吉爺さんドギマギしながら、答える。
「ヘエ、誰がいたずらをしたんだか、困った奴等です」
「イヤ、そんなことどうだっていい。爺や思い出しておくれ。何という字が書いてあったのか。まさか数字じゃあるまいね」
「ヘエ、数字、アア、そうおっしゃれば、数字だったかも知れません。あたしゃ横文字は苦手でございましてね。よく読めませんが、エートあれは幾つという字だったか」
「そこへ指で形を書いてごらん」
「形は訳ございませんよ。この横の棒の下に、こう(はす)っかけに一本引張ってあったんで」
「それやお前、7という字じゃないか」
「アア、そうそう、七だ、七でございますね」
 二郎は真青になって立ちすくんだ。昨日は8、今日は7だ。いたずら書きと云ってしまえばそれまでだが、この一目下(ひとめさが)りの数字の出現が、果して偶然の一致だろうか。下手くそな落書きみたいなもの丈けに、一層不気味にも思われるのだ。
 その翌日は、二郎の方で、例の数字の出現を心待ちに待ち構えていた。しまいには邸中をアチコチと歩いて、どこかの隅に6という字が現われていはしないかと、探し廻りさえした。すると、アア、彼は又しても怪文字に出くわしたのである。
 今度は進一少年が発見者だった。二郎が探しあぐんで、やっぱり気のせいだったかと、稍々(やや)安堵を感じながら自分の部屋へ戻って来ると、そこに進一少年がいて、彼が這入るなり声をかけた。
「小父さん、こんなにカレンダーめくってしまって、いたずらだなあ。今日は十一月の二十四日でしょう。それに、十二月六日だなんて」
 云われてそのカレンダーを見ると、なる程6という字が大きく現われている。
「進ちゃん、君だね。こんないたずらしたのは」
 二郎は笑おうとしたが、うまく笑えなかった。
 進一がそんな悪さをしないことは分っていた。無論、何者かがその部屋に忍込んで、例の数字を書く代りに、カレンダーを破って、6という字を示して置いたのだ。前二回は屋外であったのが、今度は屋内のしかも二郎自身の部屋だ。魔術師の様な怪物は、誰にも見とがめられず、自由自在にこの邸内を歩き廻っているのだ。二郎はもう黙っている場合ではないと思った。
 翌晩日の暮れ暮れに玉村氏の自動車は、京浜(けいひん)国道を大森の自邸へと走っていた。東京の店からの帰りだ。二郎もこの車に父と同車していた。彼はこの頃気がかりな父の身辺を守る為に、人知れぬ苦労をしているのだ。
 話そうか、どうしようか。若しあれがただのいたずらだったら、忙しい父に無用の心配をかけることはないがと、迷っている内に、車は大森駅を過ぎて、もう山の手にさしかかっていた。とっぷり日が暮れて、ヘッドライトが点ぜられた。
「お父さん、僕はもっと用心をした方がいいと思いますね」二郎は思い切って云い出した。
「お前、あいつのことを云っているのかい。充分用心しているじゃないか。雇人も増したし、わしの往復にはこうしてお前がついていてくれるし」
「駄目ですよ。僕の想像が間違いでなかったら、あいつは、もう僕等の家の中へ這入り込んでいるんですよ」
 と、二郎は三日間の出来事をかいつまんで話した。すると父玉村氏は笑い出して、
「馬鹿馬鹿しい。お前の気のせいだよ。いくらなんでもあの大勢の雇人の目をかすめて、家の中を歩き廻ったり出来るものかね。魔法使いじゃあるまいし」
「イヤ、それが油断です。あいつは魔法使なんだ。福田の叔父さんの時で分っているじゃありませんか」

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