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魔术师-五色の雪(3)

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示: ドアの外までたどりついた明智は、鍵穴に目を当てて、室内を覗き込んだ。いるいる。服装が変り、顔の白粉は消えたけれども、テ
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 ドアの外までたどりついた明智は、鍵穴に目を当てて、室内を覗き込んだ。いるいる。服装が変り、顔の白粉は消えたけれども、テーブルに(ひじ)を突いて(さかずき)()めているのは、確かに怪賊だ。視野が狭いので、もう一人の男は見えぬが、多分怪物と向き合って、同じ様に酒を呑んでいるのであろう。
だが変なことに、賊はただ盃を嘗めるばかりで、一向話をする様子がない。ただああして二人が睨み合っているのかしら。それとも、若しや、……
「こいつは油断がならぬぞ」と立ち直ろうとした時には、已に遅かった。グーッと背中を押して来る固いもの。
「手を上げろ」
押しつける様な声。いつの間に来たのか、賊の部下が、両手にピストルを持って、その筒口を明智と二郎の背中に当てがっていた。
不意をつかれた両人は、ただ命ぜられるままに手を上げる外には、何を考える暇もなかった。
「もう出て来てもよござんす。二人の奴は(とりこ)にしました」
男が呼ぶと、ドアが開いて怪物が姿を現わす。悪魔と名探偵の二度目の対面。だが両人とも特別の感情を示すでもなく、平気な顔を見合わせた。
「これはよく御訪問下すった。実は、こういうこともあろうかと、心待ちにしていた訳ですよ」
賊はニヤニヤと不気味に笑いながら挨拶した。
流石に明智は答えない。冗談に応酬するには余りに不利な立場だ。
「ところで、あなたを何とお呼びしましょうかね」賊はさもさも愉快らしく手をすり合わせて、一言一言自分の言葉を(あじわ)う様に、
「音吉爺さんですか。それとも明智小五郎君ですか。イヤ、そんなことは兎に角、折角の御訪問ですから、一つ私の商売の大魔術という奴をお目にかけましょうかね。何もおもてなしが出来ませんので、マア御馳走(ごちそう)代りという訳ですよ」
「それでは、どうかこちらへ」
手下の男までが、首領を真似て馬鹿叮嚀(ていねい)だ。その癖ピストルの筒口では、二人の(とりこ)の背中をつついて、案内どころか牛でも追う様に、無理やり元の入口へ押して行くのだ。
明智も二郎もされるがままになって、玄関のホールへ戻って来た。首領もあとからついて来る。
「サア明智君、これです。君がさっき縛って置いた私の娘の顔を見てやって下さい」
明智は背中をピストルで突かれて、よろよろと前にのめり、危く文代にぶつかり相になった。が、それと同時に筒口が背中を離れた。今だ。明智は一飛びで、娘のうしろに廻り、彼女の身体を(たて)にして、どうして持っていたのか、ポケットからピストルを取出すと、いきなり文代のうなだれた頭部へ狙いを定めた。残念ながら、咄嗟(とっさ)の場合その外に方法がなかったのだ。
無論撃つつもりはない。ただ賊と対等の立場を得る為だ。
だが、アア何という恐ろしい奴だ、怪物はそれを見ると、ゲラゲラ笑い出した。
「ハハハハハハハ、お撃ちなさい。その女が死んだところで、わしは少しも痛痒(つうよう)を感じない。イヤ、(かえ)って御礼を申上げ度い位のものだ」
「だが、君は、僕がこれを撃てば、娘さんが傷つくばかりではない。その銃声で外にいる警官達が飛込んで来ることを、勘定に入れていますか」
明智が初めて口を開いた。彼の目は憎悪に燃えている。野獣にも劣る極悪人の態度に、彼は流石に激昂しないではいられなかった。
「無論、それに気附かぬ私ではない。何百人の警官が這入って来ようと、君がその娘を殺せば、わしの手助けをしたも同然だ。君もわしの一味として捕えられなければなるまい。ワハハハハハハハ。明智君、まあ気を静めて、その女の顔を見るがいい」
それを聞くと、明智は何かしらギョッとしないではいられなかった。彼は淡い光の中で、縛られた娘の全身を眺めた。変だ。はっきり記憶していないけれど、どうも服装が違う様だ。だが、それが一体何を意味するのだ。たった二三分の間に、ここでどんなことが起ったというのだ。ひるむ心をはげまして、彼はうなだれた娘の顔を覗き込んだ。アア、果して果して、彼女は文代ではなかった。明智も二郎も熟知している全く別の女性であった。
驚くべき魔術師の怪技(かいぎ)。いつの間に、どうして、しかもこの娘が!
流石の名探偵も、
「アッ」と叫んだまま、次に採るべき手段を考える力さえ失ってしまった。

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