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魔术师-屋根裏の捕物(2)

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示: 三人は背景と背景との作る洞穴(ほらあな)の様な隙間を選んで這入って行った。闇の中に、蜘蛛(くも)の巣とほこりと泥絵具の匂い
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 三人は背景と背景との作る洞穴(ほらあな)の様な隙間を選んで這入って行った。闇の中に、蜘蛛(くも)の巣とほこりと泥絵具の匂いばかりだ。
明智の鋭い直覚が人の気配を感じた。彼は手を伸ばして頭の上にぶら下っている二本の棒を掴んだ。足だ。背景の上部に平蜘蛛の様にへばりついていた逃亡者の一人だ。
力をこめて引っぱると、バリバリと背景の布の破れる音。併し、曲者は声も立てずに、床上に降り立った。
明るい場所へ引出して姿を見れば、道化服の首領ではない。古めかしいタキシードを着込んだ奇術助手だ。
「座長はどこにいる」
明智が男の腕をねじ曲げて尋ねる。非常手段だ。男は存外あっけなく閉口してしまって、どもりながら答えた。
「あすこ、あすこ」
指さす方を見ると、背景で出来たトンネルの向側に、ボンヤリと見える、道化姿。
三人は男を捨てて、その方へ忍び寄る。先に立つのは若い道具方だ。
向うの道化服はいつまでも同じ場所に立っている。妙なことには、何の為か両手を(はね)の様に伸ばして、ゆらゆらと動かしている。
「オイ、待った」
明智がやっと気附いて叫んだ時には、もう先頭の道具方が相手に飛びかかっていた。そして、ひどく額を打って跳ね返されていた。
それは奇術に使う大鏡だった。どこかにいる道化服の怪物が、斜めになった鏡に写っていたのが、あたりが薄暗い為本物と間違ったのだ。
本物はどこにいるのだ。
二人の道具方が明智の視線を追って見上げると、意外にも、曲者は舞台上の天井に張り渡した針金の上を、両手で調子を取りながら、渡っている。道化者の滑稽な綱渡りだ。
何という奇抜な隠れ場所。若し鏡の助けがなかったら、一寸急には発見出来なかったかも知れない。
舞台下手の出入口に近く、天井に達する直立の梯子(はしご)がある。三人はそこへ飛んで行って天井へと駈け昇った。道具方は慣れたもの、明智も引けは取らぬ、三匹の猿だ。
追手に驚いた道化者は、針金を渡り尽し、屋根裏の横木を伝って、見物席の天井の上へ逃込んだ。三人も遅れず同じ穴から這い込む。
屋根裏の大捕物(おおとりもの)だ。
格天井(ごうてんじょう)の隙間から、逆様の夕立ちみたいに射し込む光線の糸。その外には何の光もない、べら棒に広いがらんどうの暗闇だ。
曲者の白いダブダブの道化服が白い光の糸を、チラチラと通り過ぎる。
古い天井には所々、足を踏み抜く程の大きな穴があいている。天井裏を這う間に、そんな穴に出くわすと、遙か下方の見物席の全景が、手に取る様に眺められる。そこにはもう、一人も見物人はいない。不意の椿事(ちんじ)に驚いて、先を争って帰ったのであろう。僅かに物好きな弥次馬(やじうま)が五六人、劇場事務所の人々などが、曲者が屋根裏に逃げ込んだと聞いたのか、舞台の方へ走っている。その中に玉村二郎の姿も見える。アア、警官も到着した。木戸口からなだれ込む数名の制服姿。アア、流石の魔術師ももう(ふくろ)(ねずみ)だ。
やがて曲者は、表側の屋根裏の隅っこへ追いつめられた。相手は三人、身をかわして逃げ出す見込みはない。絶体絶命だ。
彼は三角に狭まった隅っこに身をかがめて、じっと動かなかった。猫に追いつめられた鼠が、反対に猫に飛びかかろうとする時の、あの物凄い姿勢だ。下から洩れて来る光の糸が、その部分部分を(しま)にして、一層不気味に浮上がらせている。
追手が三方からジリジリと獲物目がけて這い寄って行く。
突然曲者の右手にキラッと光ったものがある。ア、短刀だ。愈々鼠は猫に刃向って来る(つも)りだ。
道具方二人は逃げ腰になった。明智も足場を定めて、防戦の身構えをした。そして、なおもジリジリと敵に近づいて行く。
と、途方もない不思議なことが始まった。賊は短刀の刃先を追手に向ける代りに、我と我が喉に当てて、今にも自殺し相な様子を示す。驚いて一歩退くと、短刀の手を卸すが、又近づくと、その切先が(のど)へと飛上る。

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