返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 江户川乱步 » 魔术师 » 正文

魔术师-殺人映画(2)

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示: 室内の場面には、玄人(くろうと)の様にライトが用いられ、地下室の暗黒も巧みに撮影されている。主人も客も、フラフラに酔っぱ
(单词翻译:双击或拖选)

 室内の場面には、玄人(くろうと)の様にライトが用いられ、地下室の暗黒も巧みに撮影されている。
主人も客も、フラフラに酔っぱらっている。主人が、恐ろしい意味をこめて、ゲラゲラ笑うと、まだ気づかぬ客も、同じ様にゲラゲラ笑った。二人の酔っぱらいの、不気味な大写し。
主人がさっき掘った洞穴を指さすと、客はそれを通路と誤ったらしく、壁の穴へとつき進んで、土の中へ転がり込む。
ハハハハハハ。ワハハハハハハハ。土の中へ転がったまま(たま)らぬ様に笑っている、可哀相な忍男の大写し。
と、主人の態度が一変した。彼は本当に酔っていたのではない。シャンとすると、驚くべき敏捷(びんしょう)さで、そこに置いてあった煉瓦を取り、(こて)を持ち、漆喰(しっくい)をすくって、壁の穴へ、煉瓦を二重に積み始めた。
壁の奥では、酔っぱらいが、何も知らずに笑っている。彼の前に、恐ろしい速度で煉瓦の壁が積上げられて行くのを、空ろな目で眺めている。
煉瓦積みの単調な場面が暫らく続く。
やがて、恐ろしい作業が殆ど完成した。あと五六個の煉瓦を余すばかりだ。
「アハハハハハハハ、こいつは耐らぬ。何という滑稽ないたずらだ。オイ、この思いつきは素敵だぞ。お前はうまいことを考えたものだね」
壁の中の、洞穴の大写し。そこに笑いこけた忍男が、そんなことをわめいているのが、ありありと想像される。
外の男は、とうとう最後の煉瓦をはめ込んで、ハタハタと着物の汚れをはたいている。満足そうな薄笑い。そして、穴蔵を出て、鉄の(ドア)をしめて、足どりも軽く階段を昇り、元の客間へ帰ると、残っていた酒をガブガブ呑んで、舌なめずりをしながら、ニタニタと、身震いの出る様な笑い顔。
と、場面はもう一度穴蔵に戻る。完全にとじこめられた、壁の奥の真暗な土の中の大写し。酔っぱらいの忍び男は、もう一生涯そこを出る望みがないのも知らぬ体で、まだゲラゲラ笑い続けている。アア、何という戦慄すべき笑いであったろう。
それがパッと消えると、暫くは時間の経過を示す為の暗黒、そして、再び現われたのは、やっぱり元の壁の中だ。
男はもう笑っていない。すっかり酔が醒めたのだ。恐怖に飛出し相な両眼。何をわめくのか、大きく開いた唇。虚空(こくう)を掴む断末魔の指先。
彼は凡てを悟ったのだ。女の主人が彼の不義を知っていて、恐ろしい復讐を()しとげたことを気づいたのだ。どんなに叫んでも、もがいても、永久に出ることの出来ない、生きながらの埋葬を悟ったのだ。早くも漆喰(しっくい)が固って、押しても叩いても厚い煉瓦の壁はビクともしない。
無駄とは分っていても、併し、彼はもがかぬ訳には行かなかった。土の中の見るも無残な気違い踊り。網にかかった鼠の様に、ガリガリと壁を掻いて狂い廻った。
この世のものとも思われぬ、恐怖の表情の大写し。そして、徐々に徐々に溶暗…………。
恐ろしき映画が終った。穴蔵の中は真の闇、感動の余り誰も口を利くものはない。死の様な沈黙の数秒。
やがて、闇の中から、牛原氏の妙に押しつけた声が聞えて来た。
「玉村さん。この写真の意味がお分りでしたか」
玉村氏は、恐ろしい予感に震えて、返事をする気力もない。
「お分りになりませんか。では、教えてあげましょう。今から五十年以前、ああしてこの穴蔵へとじこめられた、みじめな男は、かく云う私の父親なのです。そして、この世にも恐ろしい復讐をなしとげた人物は、玉村さん、あなたのお父さんの幸右衛門(こうえもん)という人でした。あなたは、まさかこんな出来事があったのはご存じないかも知れぬ。だが、密通者奥村源次郎(おくむらげんじろう)が、妻子を残して行方不明になったことは、お聞き(および)でしょう。世の中では、源次郎が何か悪いことをして、身を隠したのだと取沙汰しました。誰もこの恐ろしい復讐の犠牲になったことは知りませんでした。併し、たった一人、本当のことを知っている者があった。彼は苦心を重ねてこの穴蔵の秘密を探り出したのです。そして、とうとう源次郎の死体を発見し、源次郎が煉瓦を傷けて書き残した、異様な遺書を読んだのです。そして、彼の生涯を復讐事業に捧げる決心をしたのです。それが誰であったかは、云わずともお察しでしょう。源次郎の一子奥村源造(げんぞう)です。(すなわ)ちかく云う私なのです」
闇の中の声がパッタリ途絶えた。
「牛原さん、冗談はいい加減にして下さい。いたずらが過ぎますぜ。こうして私達を思う存分怖がらせて置いて、あとで大笑いをなさろうという訳でしょう。ハハハハハ。その手には乗りませんよ」
玉村氏は震え声で、夢中になって打消した。それを信じるのが、余りに恐ろしかったのだ。
「冗談ですって?」
闇の中の不気味な声が答えた。
「あなたは冗談やなんかでないことを、知り抜いておいでなさる。さっき、例のダイヤモンドをお見せした時から、あなたは心の隅で私を疑っていた。若しやこの男が、あの魔術師といわれる兇賊ではあるまいかとね。その通りですよ。私が得二郎氏を殺した本人であればこそ、あの宝石を持っていたのですよ。私は半生を復讐事業の為めに捧げました。ただ父の遺志を果す為に生きて来ました。そして、やっと、今晩、その目的を達したのです。玉村一家を亡ぼしてしまう時が来たのです。玉村さん。私の嬉しさが、あなたには分りますか。気違いになり相ですよ」

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG:
[查看全部]  相关评论