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魔术师-八対一(1)

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示:八対一「ワハハハハハハハハハハ」 突如として、笑いが爆発した。奥村源造が腹を抱えて笑い出した。「オイ、探偵さん。こいつは
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八対一


「ワハハハハハハハハハハ」
 突如として、笑いが爆発した。奥村源造が腹を抱えて笑い出した。
「オイ、探偵さん。こいつは愉快だね。一足おそかったよ。おそかりし探偵さんだ。ワハハハハハハハ、俺はもうお先きに仕事を済ませてしまったのだよ。君が妨げようとして、あんなにもがき廻っていた仕事をだぜ。オイ、分るかね。玉村一家のものは、今頃どこにどうしているか、君は知っているかね」
 勝ちほこった源造が、気違いのようにわめいた。だが、明智がそれに驚く筈はない。
「旗本屋敷の穴蔵で、水責めにあっているとでも云うのですか」
 彼は皮肉な調子で聞返した。
「ゲッ、それでは、キ、貴様、あれを、……」
 源造は極度の狼狽(ろうばい)に、口も利けぬ。見る見る、額には玉の汗が浮んで来た。
「ご安心なさい。玉村親子は、無事に救われました。今頃は邸に帰って、暖いストーブの前で、おくれた晩餐(ばんさん)をやっている時分ですよ」
 それを聞いた源造の顔は、絶望にひん曲った。一刹那、サッと血の気が失せたかと思うと、次の瞬間には、顔中が紫色にふくれ上り、額の静脉が虫の様に(うごめ)いた。明智は生れてから、こんな恐ろしい人間の表情を嘗つて見たことがなかった。
 絶望の悪魔は、両手で頭を抱えて、ヨロヨロと椅子に倒れ込んだ。そして、血走った目を不気味にキョロキョロさせて、取るべき手段を思いめぐらすと見えたが、やがて、徐々に奇妙な安心の色が浮んで来た。彼は激情の余り、ついそれを胴忘(どうわす)れしていたのだ。
「だがね、探偵さん」
 源造は考え考え切り出した。
「君は、いつかの森ヶ崎の西洋館を忘れたかね。あすこで一体どんなことがあったのだろう。エ、思い出して見給え。ホラ、君と俺と妙な取引きをやったことがあるじゃないか」
 だが、それにも明智は驚かなかった。
「ウン、覚えていますよ。あの時は君の方に妙子さんという人質があって、結局僕の負けになったのですね」
 オヤ、こいついやに落ちついているな。と思うと、源造は少し不安になって来たが、屈せず喋り続ける。
「ホラ見給(みたま)え。あの時と今と、一体どう違うのだ。君は、妙子が今どこにいるか、知っているのかね」
「知っていますとも」明智はニヤニヤ笑った、「向うの小部屋に閉め込んであるというのでしょう。ところが、僕はあの部屋の鍵を手に入れたのですよ。そして、妙子さんにピストルを二挺渡して、その鍵で内側から締りをして置く様に云って来たのですよ。で、誰かが、例えば君の部下が、あすこへ這入ろうとすれば、第一ドアが開かぬし、仮令それを叩き破っても、妙子さんのピストルで、お陀仏(だぶつ)。と云う訳なのです」
 源造は心を落ちつける為に、長い間黙り込んでいた。この様な強敵に対しては、(あわ)ててはいけない。ゆっくり考えて、最善の手段をとらねばならぬ。
「で、つまり俺をどうしようというのだね。君は一人だ。俺の方には七人の部下がいる。おまけに、この船はどこへでも走り出すのだ。俺の云った人質というのは、なにも妙子ばかりではないのだぜ」悪魔は不気味な嘲笑を浮べ、いきなり人差指を明智につきつけた、「君だよ、人質というのは。飛んで火に入る夏の虫という、古いせりふがあったっけね。フフフフフフフフ」
 彼は含み笑いをしながら、部屋の隅の机に近づいて、その抽斗(ひきだし)を開き、何かを取出そうと、手をさし入れたが、探しても探しても、その品物がないのを知ると、ハッとして明智の顔を見つめた。
「君の探しているのは、これじゃありませんか。君の留守中に、抜かりなく拝借して置きましたよ。僕だって、命は惜しいですからね」
 明智はそう云いながら、ポケットからピストルを出して、相手に狙いを定めた。
「畜生ッ」
 源造は、又しても先手をうたれて、地だんだを踏んだ。(しか)し、ピストルを持つ相手に飛びかかる訳にも行かぬ。
「サア、文代さん。外へ出ましょう。僕達はまだ仕残した仕事があるのです。お父さんですか。ナニ、お父さんは暫くこの部屋で御休息願うことにしましょうよ」
 明智の言葉に、文代はオズオズと立上って入口へ近づいた。
「コラ、文代、貴様(きさま)親を裏切る気か」
 源造の恐ろしい目が、刺す様に睨みつけた。
「お父さん。私も一緒に牢屋(ろうや)へ行きます。死刑になる運命なら、私も一緒に死にます。どうか堪忍(かんにん)して下さい」
 文代は泣きながら、父をあとに残して部屋を出た。明智はそのドアへ、外から鍵をかけた。(鍵はさい前、ピストルと一緒に手に入れて置いたのだ)流石の源造も、相手が飛道具を持っているので、どうすることも出来なかった。
「サア、君はこれを持っていて下さい。そして、奴等が手向いし相だったら、構わずぶっ放して下さい」
 明智はピストルを文代に渡して、部下の者を捕縛(ほばく)する為に、甲板へ出て行った。

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