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透明怪人-三个明智小五郎

时间: 2021-11-14    进入日语论坛
核心提示:三人の明智小五郎 部屋じゅうの人が、「アッ。」と声をあげて、そう立ちになりました。そのとき、小林少年といっしょに、部屋へ
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三人の明智小五郎


 部屋じゅうの人が、「アッ。」と声をあげて、そう立ちになりました。そのとき、小林少年といっしょに、部屋へはいってきたのが、あまりに意外な人だったからです。それは名探偵明智小五郎でした。明智がふたりになったのです。けさから、しらべ室に腰かけている明智と、いまはいってきた明智と、顔も服も、まったく同じなのです。ふたごのように、そっくりなのです。
「ワハハハ……、どうです、諸君ビックリしたかね。中村君、このふたりの明智小五郎をしばってください。なわをかけてください。どっちかが、にせもののはずだ。しかし、どっちがそうか、まだよくわからない。ふたりともしばってください。にげられては、たいへんだからね。」
 怪老人は手じょうをはめられたまま、イスから立ちあがって、わめきました。中村係長を、中村君などと、呼びすてにして、いばっているのです。まるで、この部屋の中で、怪老人がいちばんえらい人のように見えました。
 もっとふしぎなのは、中村係長のたいどでした。怪老人をしかりつけるどころか、老人の言うままに、ベルをおして、部下の刑事を呼びよせ、にらみあっているふたりの明智小五郎を、ほじょうで、しばらせてしまいました。ふたりをべつべつのイスにかけさせ、うしろ手にしばって、そのなわを、イスのせなかにくくりつけたのです。
 どちらがほんもので、どちらがにせものか、わかりませんが、ふたりの明智小五郎は、あっけにとられているうちに、手ばやくしばられたので、てむかいするひまもなかったのです。
「ワハハハ……、いよいよおもしろくなってきたね。ところで、みなさん、わしはひとつ、はくじょうしなければならんことがある、それは、このわしも、にせものだということですよ。わしは透明人間をつくる老人じゃない。そのかえだまですよ。あの老人にたのまれて、ばくだいなお礼をもらって、ちょっと、かえだまをつとめたのです、そして、わざと、つかまえられたのです。ほんものの怪老人が、あんなにやすやすと、つかまるはずはありませんからね。
 透明怪人の首領は、わしをかえだまにして、つかまえさせ、みんなが、そのほうに気をとられているすきに、まったくべつのものに変装して、ゆくえをくらましたのです。いや、ゆくえをくらますといっても、遠くへ逃げたとはかぎらぬ。すぐわれわれの目の前に、かくれているかもしれません。それも、いまじきにわかることです。ワハハハ……、じつに、ゆかいですよ。
 わしは、いま正体をあらわします。変装をとくのです、それには、この手じょうがじゃまじゃ。中村君、ちょっと、これをはずしてください。」
 怪老人はそう言って、両手を中村係長の前にさしだしました。そんなことを言って、手じょうをはずさせ、いきなり、逃げだすつもりではないでしょうか。あぶない、あぶない。しかし、中村係長はへいきです。ポケットからかぎをだして、老人の手じょうをパチンとはずしてやったではありませんか。
 老人は、逃げだしたでしょうか。
 いや、逃げだしはしませんでした。ただ、部屋のすみへいって、向こうをむいたまま、しゃがんでしまったのです。
 見ていますと、老人のしらがのあたまが、まるで皮をはがすように、スッポリとぬけて、その下から、黒いモジャモジャの毛が、あらわれました。カツラをかぶっていたのです。つぎには、長い白ひげと、二つの白いまゆ毛が、ヒラヒラと、ゆかにおちました。これもつけひげと、つけまゆ毛だったのです。それから、しばらくモジモジとからだを動かしていましたが、黒いダブダブのガウンを、パッとぬぎすててクルッとこちらを向いて、立ちあがったすがた……、おお、ここにもまたひとり、明智小五郎です。怪老人が名探偵に、はやがわりしてしまったのです。
 どこからどこまで、すこしもちがわない、三人の明智小五郎、ふたりはうしろ手にしばられて、イスに腰かけ、ひとりは部屋のすみに立って、たがいに顔を見あわしている三人の名探偵。ああ、これは、なんとしたことでしょう。みんな夢を見ているのでしょうか。いや、夢ではありません。そこには捜査課長と係長の中村警部のほかに、さっき明智をしばったふたりの刑事、小林少年、文代さん、五人の中学生などがいるのです。こんなにおおぜいの人が、そろって、同じ夢を見るはずがありません。
 怪老人の変装をといた第三の明智探偵は、いままでの老人とは、にてもにつかぬシャンとしたすがたで、ツカツカと部屋のまん中に、すすみました。
「小林君、きみはひじょうな手がらをたてた。さすがは、ぼくの助手だよ。さて、捜査課長はじめ、みなさんに、申しあげたいことがあります。
 ぼくはいま、老人からのお礼をもらって、老人のかえだまになったと、言いましたが、それはむろん、明智としてではありません。老人が敵の明智探偵に、かえだまをたのむはずがないからです。ぼくは老人のかくれがへ、ひとりのコックとして、すみこんでいました。そして、頭の悪い、うすのろのコックとみせかけていたのです。
 老人は、しんぺんが、あやうくなってきたので、自分をかきけしてしまって、まったくべつの人に化ける決心をしました。それにはかえだまをつかって、警察をだまさなければならない。それには、うすのろのコックが、もってこいだ。というわけで、ぼくに金をつかませて、老人に変装させ、わざと焼けビルの中へのこしておいて、明智探偵に、つかまえさせたのです。
 みなさん、じつにふしぎではありませんか。明智探偵が明智探偵を、とらえたのです。とらえたほうの明智が、ほんものでしょうか。とらえられたほうの明智がほんものでしょうか。いや、それだけではありません。もうひとり明智がいるのです。小林君が悪者のすみかから、すくいだしてきた明智君が、そこにしばられています。いったい、この三人のうちで、だれが、ほんとうの明智小五郎なのでしょうか。
 小林君にすくいだされたのが、ほんものとすれば、ぼくと、ぼくをとらえたふたりの明智がにせもののはずです。また、焼けビルから、樋をつたって、逃げだし、それから、中村君といっしょに、老人に化けたぼくをとらえた明智君が、ほんものだとすると、ぼくと、そちらにしばられている明智君とが、にせもののはずです。じつに、めんどうなことに、なったものですね。いったい、なんのために、明智小五郎が、三人もあらわれたのでしょう。
 それは、こういうわけです。この三人のうちには、ほんとうの明智と、明智が日ごろから用意しておいた、明智のかえだまと、それから、明智に化けた透明怪人の首領とがいるからです。ひとりは明智、ひとりは明智のかえだま、ひとりは賊の首領です。三人のうちの、だれが明智でしょう。だれが賊の首領でしょう。それは、いまにわかります。ぼくがこれから、それをといてみましょう。そうすれば、透明怪人のひみつも、すっかりとけるのです。」
 第三の明智は、そこまで言って、ことばをきり、グルッとあたりを見まわしました。あっけにとられた人々は、息をするのもわすれたように、じっと第三の明智のすがたを、見つめています。おおぜい、人がいるのに、部屋の中はシーンとして、ものすごいほどの、しずけさです。

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