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名探偵と怪人二十面相

时间: 2023-09-15    进入日语论坛
核心提示:名探偵と怪人二十面相まだふりつづいていたカニ円盤が、つぎつぎと、少年たちの頭の上へおりてきました。いやらしいすじのある、
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名探偵と怪人二十面相


まだふりつづいていたカニ円盤が、つぎつぎと、少年たちの頭の上へおりてきました。いやらしいすじのある、あの白っぽい腹を見せて……。
さいしょに、ねらわれたのは、井上少年です。円盤がグーッと頭の上に、せまってきたので、びっくりして、にげだしましたが、円盤は、にげるほうへにげるほうへと、ついてくるのです。
そして、あの大木のような二本のはさみが下へのびて、井上君の両方の腕を、はさみこんでしまいました。そして、こんどは、ぎゃくに空へと、まいあがっていきます。井上君はカニのはさみにはさまれたまま、高く高く、天にのぼっていくのです。
おなじことが十五人の少年たちに、つぎつぎと、おこりました。ワシがあかんぼうをさらうように、カニ円盤がスーッとおりてきては、少年をはさんで、空へのぼっていくのです。十五のカニ円盤が、ひとりずつ少年をぶらさげて、とびあがっていくのです。
飛行機やヘリコプターに乗っているのとはちがいます。大きなカニのはさみにはさまれて、ぶらさがっているのですから、いつおとされるかわかりません。おとされたら、命はないのです。
小林少年は、カニ円盤にぶらさがったまま、考えました。
「どうも、ふしぎだ。ほんとうかしら。夢をみているんじゃないかしら。」
そうです。おそろしい夢に、うなされているような気持です。頭がボンヤリしています。すべてが、かすみをとおして見るようなかんじです。
小林君は、気力をふるいおこして、頭をはっきりさせようとしました。夢をさまそうとしました。しかし、どうしてもかすみがとれません。自分の心が、なにか、おそろしい力で、思わぬ方角へむけられているような気がします。
ふと気がつくと、あたりはまっくらになっていました。日がくれるにしては、まだ早いし、こんなに急に暗くなるはずがありません。
暗くても、自分の上や下に、ひとりずつ少年をぶらさげた、十五のカニ円盤が、飛んでいるのはよく見えます。おちついた少年は、宙にぶらさげられても、じっとしていますが、おくびょうな少年は、泣きさけびながら、もがいています。もがけば、かえってあぶないのですが、そんなことを考えるよゆうもないのでしょう。いちばん大きな声で、泣きさけんでいるのは、野呂一平君のノロちゃんでした。
下を見ると、まっくらで、おくそこがしれず、どのくらい高くとんでいるのか、見当もつきません。ふつうなら、どんな夜中でも、町の火が見えるはずですが、一つの火も見えません。それほど高くのぼってしまったのでしょうか。
「ワハハハハ……。」
あの、ききおぼえのある二十面相の声が、どこからか、ひびいてきました。
「ワハハハハ……、どうだ、こわいか。さすがの少年探偵団も、こうなったら、いくじがないね。きみたちが、さんざんおれのじゃまをしたおれいだ。わかったか。いまに、もっとおそろしいことがおこるぞ。」
そして、たちまち、そのおそろしいことがおこったのです。
小林君の、両方の腕をはさんでいた、カニのはさみが、パッとひらき、小林君のからだは、まっくらな空中を、サーッと下へおちてきました。
おくそこのしれない深さです。はじめは、まっすぐにおちていましたが、いつのまにか、おもい頭のほうが下になり、まっさかさまについ落していくのです。
そんななかでも、あたりの空中を見まわすと、十五人の少年たちが、ぜんぶおちてくるのがわかりました。みんな、まっさかさまです。風をきって、おちてゆきます。ノロちゃんの泣きさけぶ声が、空中に尾をひいて、下へ下へと、おちていくのです。
おちる速度は、みるみる速くなっていきます。ヒューッ、ヒューッと、風を切る音が、耳をかすめます。しかし、いつまでおちても、下へ着かないのです。地面にぶっつかったら、死んでしまうにきまっていますが、そのときが、いつまでたっても、こないのです。速度はいよいよ速くなりました。もう人間の力では、たえられないほどの速さです。さすがの小林君も、とうとう気をうしなってしまいました。ほかの少年たちは、もっと早く気をうしなっていました。十五少年は、失神しっしんしたまま、まっくらな空間を、いつまでも、下へ下へとおちていくのでした。
それからどのくらいたったかわかりません。小林君は、ふっと目をひらきました。
もう風を切る音はきこえません。シーンとしずまりかえっています。ここは原っぱでなくて、広い部屋の中のようです。うすぐらい電灯の光で、そばにおおぜいの少年たちが、ゴロゴロころがっているのが見えます。みんな、まだ気をうしなったままなのでしょう。
部屋の中に一ヵ所、スポットライトをあてたように、まぶしいほどあかるいところがありました。
「あっ、明智先生っ。」
そうです。そこに名探偵明智小五郎が立っていたのです。それにむかいあって立っているのは、メフィスト姿の怪人二十面相でした。ああ、巨人と怪人は、五十センチの近さで、顔と顔とむきあわせて、じっとにらみあっていたのです。
二十面相の四角いめがねのおくの目は、とびだすほど見ひらかれています。そして、かれのひたいからは、タラタラと、汗が流れているのです。
明智探偵の目も、おそろしい光をはなって、二十面相をにらみつけていました。探偵の顔には、汗はながれていません。
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