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鏡のなかの犬

时间: 2017-12-30    进入日语论坛
核心提示: 五郎くんが、草花を植えかえようとして、庭のすみをシャベルでほっていた。 すると、シャベルがなにかに当たって、カチリと音
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 五郎くんが、草花を植えかえようとして、庭のすみをシャベルでほっていた。
 すると、シャベルがなにかに当たって、カチリと音がした。なんだろうと思って、注意しながらほり出してみると、それは古い鏡だった。じょうろの水をかけて洗うと、鏡はきれいになって、あたりのけしきがうつるようになった。
 五郎くんが、鏡をのぞきこんでいると、一匹のかわいい犬が、鏡にうつった。まっ白な、小さな犬だった。
「おや、見なれない犬がいるぞ」
 五郎くんは、ふり返って、いま、犬のうつっていたあたりを見まわしたが、犬はどこにもいなかった。
 そこで、また、鏡をのぞくと、そこには、ちゃんと犬がいた。
 五郎くんは、ためしに、鏡にむかって、
「来い、来い」
 と呼んでみた。すると、その犬は、あっというまに、鏡からとび出して来た。そして、五郎くんの足にじゃれついた。
「おまえは、鏡のなかに住んでいるのかい」
 ときいてみると、犬は、「そうですよ」と答えるように、ワンワンとほえた。五郎くんが、ポケットにあったビスケットをやると、犬は、うれしそうにしっぽをふって、それを食べた。
「公園へ遊びに行こう」
 五郎くんが、鏡を持って走りだすと、その犬も五郎くんについて走りだした。
 公園は、五郎くんの家のすぐ近くだ。公園に来ると、五郎くんは、きのうのことを思い出して、
「きのう、このへんで野球をして、新しいボールをなくしてしまったんだよ」
 と言った。
 すると、犬は、しばらく首をかしげていたが、ワンワンとほえて、いきおいよくかけだした。五郎くんは、あとを追いかけて、犬の立ち止まった草むらへ行ってみた。そこには、きのうなくしたボールが、ちゃんところがっていた。
「すごいな。よく見つけてくれたね。おまえは、りこうな犬なんだなあ。なくしたものは、なんでも見つけることができるのかい」
 犬は、ワンワンとほえて、うなずいた。
「それなら、ぼくがいつかなくした、メダルを見つけてくれるかい」
 犬は、また、元気よくかけだした。五郎くんが、あとからついて行くと、犬は、おふろ屋のうらのあき地へ行った。そして、土管のつんである所でとまった。見ると、犬の足もとには、ちゃんとメダルが落ちていた。
「なんだ。こんな所にあったんだな。ぼくは、公園でなくしたんだとばかり思っていたよ。ほんとうに、りこうな犬だ」
 五郎くんが、頭をなでてやると、犬はよろこんでしっぽをふった。
 そのうち、犬は、立ち上がったかと思うと、鏡のなかにとびこんで行った。
 五郎くんは、しばらく鏡のなかを見ながら考えていた。
「あっ、まだ、ビスケットがのこっているぞ」
 五郎くんは、ポケットからビスケットを取り出して、それを見せながら、犬を呼んだ。すると、犬は、また、鏡のなかからとび出して来た。
 ビスケットを食べている犬に、五郎くんは命令した。
「ぼくは、前から、双眼鏡がほしかったのだ。だれかがなくした双眼鏡のある所へ、連れて行ってくれ」
 だが、こんどは、犬は動こうとしなかった。そこで、五郎くんは言った。
「連れていってくれないのなら、鏡をこわして、おまえを帰れなくしてしまうぞ。それでもいいのかい」
 しかし、犬は、ちっとも動かなかった。
 五郎くんは、おこって、石ころを拾うと、鏡に投げつけた。しかし、その石が、鏡にぶつかる少し前に、いままで動かなかった犬が、ぱっと鏡のなかにとびこんだ。そして、石は、犬のとびこんだ鏡を、こなごなにこわしてしまった。
「しまった」
 五郎くんはこうさけんだが、もうおそかった。
 あわてて、われた鏡のかけらを拾って、一つずつのぞきこんでみた。しかし、どのかけらにも、あのりこうな、白い犬のすがたは見えなかった。
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