小学校高学年のころから父に反抗するようになった私は口喧嘩をするようになりました。
相談をしても「やられたらやり返せ」しか言ってくれず女はそういう訳にはいかないのだと意見が違いその度に喧嘩をしました。
そんな日々が続いて5年後の春、私は中学の卒業を目の前に控えていました。卒業式には親への感謝の手紙を読むことになっており、私はその内容を考えていました。その時、私は床に物がぶつかったような小さな傷を見つけました。これは何だろう?と思い返していくと、それは父が怒って物にあたった時の傷だったことを思い出しました。そして今まで私が言う事を聞かなくて何度も怒らせ、困らせたことが次々と浮かんできたのです。父は人に手を出さない分、物にあたる性格でした。そのころ人間関係で悩んでいた父に対して私はどれだけ迷惑をかけたのだろうと思うととても悲しくなりました。そしてその思いをこの機会に言ってみようと思いました。
当日、私は泣きながらではありますが、気持ちを言うことができたのですが、顔を上げて見てみると、父が涙を流していたのです。普段、感情をあまり出さない父の涙を私が見たのは初めてでした。父はごまかすように私の頭をポンポンとなで教室に戻るように急かしました。その仕草に私の涙腺はさらに緩み涙が止まりませんでした。あの手の温かさを思い出すと今でも涙が出てくるのです。そんな優しい父とも、一緒に過ごせるのはあと残りわずかです。今でも口喧嘩は耐えませんが、以前とは少し違うような気がします。
「ありがとう」が素直に言えない私ですが、感謝の気持ちを忘れずに残りの日々を大切に過ごしたいです。