小径を抜けていくと
かすかな闇を抱いた
野の茂みに
たどり着く
わたしの忘れ水が
ゆっくりと澱みなく
流れているところ
静かな流れ
わたしの領域
いのちの住み処
今でも誰も
わたしの野を
訪ねてきたものはなく
流れの底に
埋めている炎を
見たものもない
ある日
あの人は音もなく
流れの縁に立ち止まった
ひそやかに
新しい朝を連れてくる
つゆくさのように
わたしの水を
両手で掬い
光を通したあの人
流れの底から
噴き上げてくる炎を
鎮めようとする
わたしと
見極めようとする
わたしが
せめぎあっている