夕日の進む音
たとえば
大輪の薔薇が頽れていく速度
たとえば
鼻腔から真っすぐに降りてくる
季節の濃度
そんな何気ない数値の
柔らかな壁面に
君は
立ったことがあるだろうか
その時 体内を
つつうっと流れていく
白い糸
澱みを透き通らせて過ぎていく
一本の冷たい糸に
気付いたことがあるだろうか
私の存在と呼応して
何と鮮烈なことか
寂しさって
魂の目眩みたいなものかと思っていたら
こんな はっきりした形を持っていたんだ
掬っても掬っても掬えない
この糸に
私は
微量の思慕を
積み重ね始めた
円錐を逆さに立てたような日々は
どこまで行っても空洞だ
「どう生きるか」という問いを餌にして踞る
深海魚のように
じっと 時間の影にもたれて
白い糸を
感じていようか