ひとことに
限りないやさしさを
くみ取る時
遠い遠い
はるかなはるかな
記憶の中の
一匹の
魚になってゆく
海を出た刻から
魚たちは
魚臭を放つようになった
乱立する
ビルの谷間で
すれ違うことがあっても
仲間同志の
密な
交信をすることもなく
こそこそと
お互いの
体臭を嗅ぎあいながら
あしばやに
立ち去ってしまう
ありったけの
愛を
分かちあえるひとに
出会えたならば
本当の
わたしに還って
悠久の海を
ゆっくりと
ゆっくりと
泳ぎ続けることが
できるに
違いない