悠久の時が生まれる
温んだ川の水が
乾き切った土くれをどどっと潤すとき
埃っぽいがどこか懐しい匂いが
太古の眠りから
ぼくらを呼び覚ます
今年もまた
ぼくらは還ってきた
田んぼに水が引かれるこの一瞬のために
カブトエビは存在する
この世に目覚めると
草もミジンコも手当たり次第むさぼり食らう
そして再び
ひたすら長い眠りを受け入れる
何の疑いもなく
心一つ後に残さず
土に還る
連綿と続く遺伝子のらせんのかなたを信じて
祖父から父へ
父から息子へ
命のバトンは受け継がれる
祖先と同じ姿のまま
ぼくらは三億年を生きてきた
この惑星の乾いた土を
水が潤す限り
未来の記憶は
確実によみがえる