線路沿いにある
列車が通るたびに
部屋で聴いているラジオの声が
かき消されてしまう
鍵のかかった窓や
レースのカーテンを
すりぬけて
雷を呑みこんだ
夕立のような
音の網で
ラジオの声を
さらってゆくのだ
その聴けなかったところにこそ
最良の言葉が
あったんじゃないかと
私の裡に
根拠のない
くやしさが
芽生える
聴きたくない言葉だったかも知れない
と
なぜ思わないのだろう
届かなかった
空白の音色は
上りの列車が
街へ運んでいった
聴きそびれた
空白の音色は
下りの列車が
海辺へ運んでいった
私の空白が
静かに
満ちてくる