すっくと立つ青い草姿
太古の昔と少しも変わらず
土を従え空を射る
文明に薄明かりが差し込んだ縄文期
大陸から半島を経て渡ってきた
最初の一粒が
この島の土に抱かれて三千年
一日として途切れることなく
命のサイクルは繰り返す
その間
ヒトは水を争い
イクサをし
イネを踏み倒す
天は怒り
川は干上がり
イナゴは地上の命を食い尽くす
それでも
イネはあせらない
固いサヤに護られ
ひたすらに時を待つ
遺伝子は自分の使命を忘れない
再び大地が潤い
空に光が満ちたとき
イネは本能に目覚める
剣のような芽が殻をつき破り
ぬかるむ泥土にしっかり根を張る
天に許された自分を確かめるため
大地の呼び声に応えるため
三千年の祖先の誇りを
背負って立つ