家の中にいつも花を飾る習慣になっている人はとてもうらやましい。別によい服を着ていなくても、贅沢な食事をしていなくても、広い部屋に住んでいなくても、花を飾って生活をしている人には憧れてしまう。というのは、私は地べたから生えている花は平気だが、切り花はどうも弱いからなのである。
そうはいっても、自分の殺風景の部屋に、なんとかかっこをつけようと思って、あきかけのや蕾が混ざったバラを買ったことがあった。花瓶にいけて眺めて見ると、狭い部屋でも、花があるのとないのとでは、雰囲気が大違いであった。
「やっぱりこのくらいはしなくちゃね」
私はひとりで悦にいっていた。だんだん蕾が開いて、きれいな花を咲かせてくれた。
「まあ、きれい、きれい」
といいながら喜んでいた。問題はその先である。いつまだも花をきれいに咲いていないから、日に日に花びらの色が変わり、茎も発っぱも萎びてくる。とたんに部屋の中が何となく悲しく、うら淋しくなってしまうのである。ここでいつも私は悩む。見てくれを考えればさっさと捨ててしまえばいいのだが、まだ水を吸って生えているかと思うと、ゴミ箱行きにできないのだ。
どうしようと迷っているうちに、花は萎れてくる。花が咲いてきれいなときはほんのわずかで、萎れかけてから枯れるまでのほうがずっと長い。
「早く枯れてくれないかなあ」
と期待しても、これが結構しぶとい。みっともないから、なるべく人目につかない場所に花瓶を移動しようとするのだが、物陰に持っていくとますます悲惨になってくる。私は首項垂れた花が入っている花瓶を持って、部屋のなかをうろうろするハメになるのである。花びらが落ち、茎もパサパサになると、やっとゴミ箱にポイする決心がつく。花を飾るのは本当に神経が疲れる。私は基本的にこういうことには向いていない。