ある日オンドリは、元気よくないたあと、元気よく言いました。
「俺は広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い。誰もかれもついて来い」
百羽のメンドリたちは、
「つれて行って。おねがい」
と、オンドリについて行きました。
一羽のオンドリを先頭に、百羽のメンドリがにぎやかに歩いて行くと、ウシに会いました。
「どこへ行くんだ? モウー」
オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
ウシは、百羽のメンドリのうしろについて行きました。
しばらく行くと、山ヒツジに会いました。
「どこへ行くの? メェー」
オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
山ヒツジは、ウシのあとからついて行きました。
また行くと、今度はガチョウに会いました。
「どこへ行くの? ガァー」
オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
ガチョウは、山ヒツジのうしろからついて行きました。
また行くと、今度ネコに会いました。
「どこへ行くの? ニャー」
オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
ネコは、ガチョウのうしろからついて行きました。
また行くと、今度はイヌに会いました。
「どこへ行くの? ワン」
オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
イヌは、ネコのうしろからついて行きました。
一羽のオンドリ、百羽のメンドリ、ウシ、山ヒツジ、ガチョウ、ネコ、イヌ。
みんなは歩いて歩いて、森の中へ行きました。
日が暮れてくたびれたので、一羽のオンドリを先頭に、一軒のお百姓(ひゃくしょう)さんの家へ行きました。
「今晩泊めてください」
やさしいお百姓さんは一羽のオンドリ、百羽のメンドリ、ウシ、山ヒツジ、ガチョウ、イヌ、ネコを、部屋にいれてくれました。
そして、その家の主人が言いました。
「こんなせまいところでよかったら、寝るがいい。だけど世話はできねえぜ。なにしろ夜中にはオオカミが毎晩やって来て、俺を食べようとするのさ。食べられちゃたまんねえから、俺はパンを二つ焼いて、台所のテーブルに置いとかなくちゃなんねえんだ。あとはふるえて寝るだけさ」
そう聞くと、オンドリが仲間に言いました。
「泊めてくれるこの人をほおってはおけない。力を合わせてオオカミをやっつけよう!」
それをきいたみんなも賛成して、オンドリの考えた作戦どおりにすることにしました。
まずガチョウはテーブルの下にかくれ、ネコはかまどの下に、ウシは脱穀場(だっこくば)、山ヒツジは中庭の草の中、イヌは堆肥(たいひ)のかげ、オンドリとメンドリたちは屋根の上に、それぞれかくれました。
夜中になると、オオカミはいつもどおりに、台所の扉を開けてはいって来ました。
そのとたん、ガチョウがテーブルの下から飛び出して、口ばしでオオカミの目をつつきました。
続いて、かまどから飛び出してきたネコが顔をひっかいたからたりません。
オオカミは、台所から中庭へ逃げ出しました。
すると、イヌと山ヒツジが飛びかかってきて、逃げるところをウシがツノでさしました。
それから、オンドリがさけびました。
「それ! いっせいに鳴くんだ!」
それを合図に、百羽のメンドリたちがいっせいに
「コッコッコー! コッコッコー!」
と、鳴いたので、オオカミはビックリです。
「助けてくれー!」
オオカミは傷だらけで、森の奥へと逃げて行きました。
よく朝、お百姓さんはオンドリと仲間たちにお礼を言いました。
オンドリたちも、お百姓さんに泊めてくれたお礼を言いました。
そして、オンドリと百羽のメンドリとウシ、山ヒツジ、ガチョウ、ネコ、イヌは、また、世界中を見て回る旅に出ました。