ところが猟師のおかみさんはとても食いしん坊で、猟師がとってきたえものを料理するとみんな一人で食べてしまいます。
「肉は、ネコにとられちゃったのよ」
いつもそんな事を言って、猟師には骨ばかりのスープしかあげませんでした。
ある日の事、猟師は山で一人の魔女(まじょ)に声をかけられました。
「気の毒にね。あんたはおかみさんに、だまされているよ。ほら、この三粒のマメをあげるから、家の台所と、ろうかと、戸口に一粒ずつ置いてごらん。きっと肉の料理が、食べられるようになるよ」
そこで猟師はマメをもらって家に帰ると、魔女に言われた通りにしました。
さて、何も知らないおかみさんがウズラを料理してから、一人でコッソリ食べようとすると、
?おかみさん
?だんなさんには
?あげないで
?みんな一人で
?食べちゃうよ
?これがうそなら
?ぼくは悪魔(あくま)に
?さらわれてもいい
と、台所のマメ粒が歌い出しました。
「きゃっ! ???何なの?」
びっくりしたおかみさんはろうかへ飛び出すと、今度はそこで食べようとしました。
するとろうかに置いてあったマメ粒が、また歌い出しました。
?おかみさん
?だんなさんには
?あげないで
?みんな一人で
?食べちゃうよ
?これがうそなら
?ぼくは悪魔に
?さらわれてもいい
「何よ! 一体何なの?!」
おかみさんはあたりを見回しましたが、誰もいません。
「おかしいわね。こうなれば、戸口で食べましょう」
そう言って、戸口のところへ食べようとすると、戸口のマメがまた同じ歌を歌うではありませんか。
?おかみさん
?だんなさんには
?あげないで
?みんな一人で
?食べちゃうよ
?これがうそなら
?ぼくは悪魔に
?さらわれてもいい
「もうー、いや!」
さすがに食いしん坊のおかみさんも食べる気がなくなってしまい、仕方なく肉をナベにもどしました。
その日から猟師は、魔女の言葉通り肉の入った料理を食べられるようになったのです。