二人の家は小さくて、持ち物は一羽のメンドリだけでした。
しばらくして、メンドリは六つのタマゴを生みました。
六つのタマゴは、六羽の可愛いヒヨコになりました。
「さあ、お母さんのあとについておいで」
メンドリは大喜びで、ヒヨコたちの世話をしました。
タカやトビなど、怖い鳥たちにさらわれない様に気をつけて、大事に大事に育てました。
ところが、ある晩の事です。
メンドリがヒヨコたちを寝かしつけていますと、こんな話し声が聞こえてきました。
「ばあさんや、明日から村でお祭りがあるそうじゃ。わしらもお祭りに行きたいが、神さまヘのお供え物をどうしよう?」
「本当にどうしましょう? わたしらは貧乏で、物を買うお金もありません。でも、お祭りに何も神さまにお供えしなかったら、ほかの人たちに、けちん坊と思われるでしょうね」
おじいさんとおばあさんは、お祭りのお供え物の相談をしていたのです。
そしてとうとう、おじいさんが言いました。
「どうだろう。一羽しかいないが、あのメンドリをお供えしたら」
おばあさんは、悲しそうにうなずきました。
「そうですね。ヒヨコたちが可愛そうですけど、それしかないですね」
二人の話を、メンドリはみんな聞いていました。
明日は、小さな子どもたちを残して死ななければなりません。
メンドリは、ヒヨコたちに言いました。
「可愛い子どもたち、明日、お母さんは死ななければならないの。
お願いよ、お母さんがいなくなっても、お前たちはけんかせずに、仲良く暮らしなさいね。
食べ物を見つけたら、いつでも一緒に食べてね。
決して、離ればなれにならないでね。
それから、家の外に出たりしちゃだめよ。
怖いイヌがいるからね」
「いやだよ! お母さん。どうして死ななくちゃならないの?」
ヒヨコたちが、泣き出しました。
お母さんも、泣き出したいのをがまんして、
「おじいさんとおばあさんが、わたしの肉を神さまにお供えすると話していたの。
死ぬ事は怖くないけれど、小さなお前たちを残して行くのが心配で。
それからそうだわ、どんなに遊びたくなっても、空き地へは出て行かないと約束して。
タカやトビに狙われるからね。
それから???」
と、ひと晩中、ヒヨコたちに色々な事を言い聞かせました。
次の日、おじいさんは朝早く起きると、すぐにメンドリを殺しました。
それから羽をむしる為に、グラグラ煮えたお湯の中にメンドリを投げ込みました。
それを見ていたヒヨコたちは、もうジッとがまんしている事が出来ません。
「お母さん、今すぐ、ぼくたちも行くからね!」
「天国に行っても、一緒にいようね!」
ヒヨコたちは小さな羽をはばたかせると、次々と、お湯の中へ飛び込んでいきました。
この可愛そう鳥たちの様子を、天の神さまが見ていました。
「何という、美しい母と子の心だろう。
お前たちがいつまでも一緒にいられるよう、星に生まれかわらせてやろう」
こうして、お母さんと六羽のヒヨコたちは、夜空にきらめく七つの星になりました。