けれど食いしん坊のオンドリは、お百姓のおかみさんの差し出したムギ粒やおかしと、金貨の入った財布を取り替えてしまいました。
それを聞いたお父さんニワトリは、大変怒って、
「財布を、取り戻して来い!」
と、言いました。
オンドリがションボリ歩いていくと、オオカミに会いました。
オンドリは、いい事を思いつきました。
「ねえ、オオカミさん。
きみに、ムギ粒になってほしいんだ。
そしてぼくのお腹の中に、入ってほしいんだ」
わけを話して頼むとオオカミはムギ粒に姿を変えて、オンドリはそれを飲み込みました。
少し行くと、今度はキツネに会いました。
そしてキツネも仲間になり、キビ粒に姿を変えると、オンドリのお腹に入りました。
また進んで行くと、川に出ました。
川も仲間になり、砂粒になってオンドリのお腹の中に入りました。
オンドリはお百姓の家につくと、ありったけの声で叫びました。
「ぼくの金貨の入った財布を、返してくれ!」
するとお百姓とおかみさんは、オンドリをウシ小屋に閉じ込めました。
とたんにお腹の中にいたオオカミが飛び出して、ウシをお腹いっぱいに食べると逃げていってしまいました。
次の朝、それを見たお百姓たちはなきわめき、オンドリをニワトリ小屋に閉じ込めました。
すると今度はキツネがお腹の中から飛び出して、ニワトリを全部殺してさっさと逃げて行きました。
まっ赤になって怒ったおかみさんは、オンドリをかまどの中に投げ込みました。
とたんに川が飛び出して、お百姓の家も畑も押し流しました。
おぼれては大変と、お百姓たちも逃げ出しました。
オンドリは屋根の上に飛び上がって、喜びました。
それからお百姓の家の中に入って、とうとう金貨の入った財布を見つけたのです。