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青い玉と銀色のふえ

时间: 2022-09-06    进入日语论坛
核心提示:青い玉と銀色のふえ小川未明 北(きた)のさびしい海(うみ)のほとりに、なみ子(こ)の家(いえ)はありました。ある年(とし)、まずし
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青い玉と銀色のふえ

小川未明

 


 北(きた)のさびしい海(うみ)のほとりに、なみ子(こ)の家(いえ)はありました。ある年(とし)、まずしい漁師(りょうし)であったおとうさんがふとした病気(びょうき)で死(し)ぬと、つづいておかあさんも、そのあとを追(お)うようにして、なくなってしまいました。かねて、びんぼうな暮(く)らしでしたから、むすめのなみ子(こ)にのこされたものは、ただ青(あお)い玉(たま)と、銀色(ぎんいろ)のふえだけでありました。
 青(あお)い玉(たま)は、ずうっと昔(むかし)、先祖(せんぞ)のだれかが、この海(うみ)べのすなの中(なか)からほり出(だ)して、それが代々(だいだい)家(いえ)につたわったのだということでありました。
 なにかねがい事(ごと)があるとき、この青(あお)い玉(たま)にむかって、真心(まごころ)をこめておねがいすると、その心(こころ)が神(かみ)さまに通(つう)じてかなえられるというので、おかあさんはこの青(あお)い玉(たま)を、とてもだいじにしていました。
 玉(たま)はつやつやしていて、深(ふか)い海(うみ)の色(いろ)のように青黒(あおぐろ)く、どこまで深(ふか)いのか、底(そこ)が知(し)れぬように、じっと見(み)つめていると、引(ひ)き入(い)れられるような気(き)がしました。
 そして、真心(まごころ)をこめておいのりをすると、青(あお)い玉(たま)の表(おもて)に、海(うみ)の上(うえ)をとびさる雲(くも)のように、いろいろなことが絵(え)になってうかんできて、ゆくすえのことをおしえてくれるのでした。
 また、あるときは、青(あお)い玉(たま)がまっかにほのおのようになって見(み)えたり、玉(たま)にひびがはいったりして、不安(ふあん)な気持(きも)ちをいだかせることもありました。
「これには、ご先祖(せんぞ)のたましいがはいっているんです。」といっておかあさんがこの青(あお)い玉(たま)をだいじにしたのも、ふしぎではありません。
 おとうさんの持(も)っていた銀色(ぎんいろ)のふえは、その音色(ねいろ)を聞(き)くと、さびしいあら海(うみ)にすさぶあらしのように、なんとなくひとりぼっちの感(かん)じを起(お)こさせたり、またあるときは、反対(はんたい)に心(こころ)を引(ひ)きたてて、のぞみとよろこびをもたせることもありました。
 そして、このふえの音(ね)がとどくところ、魚(さかな)たちがその音(ね)をしたってよってくるので、思(おも)わぬ大漁(たいりょう)がありました。
「まったくふしぎなふえじゃないか。」
「なんにしてもありがたいことだ。」
 漁(りょう)に出(で)た人々(ひとびと)は、なみ子(こ)のおとうさんの銀色(ぎんいろ)のふえを手(て)にとって、ふしぎそうにながめるのでした。
 このふえもやはり、おじいさんのころからつたわっていましたので、これにも先祖(せんぞ)のたましいがこもっていると、おとうさんは信(しん)じていました。
 なみ子(こ)は、おとうさんが心(こころ)をこめて、このふえをふいた日(ひ)のことをおぼえています。
 その日(ひ)、海(うみ)の上(うえ)には、黒(くろ)い雲(くも)がはびこり、いかにも北(きた)の国(くに)らしいものすごいけしきでした。
 雲(くも)の間(あいだ)からいな光(びかり)がもれ、かみなりが鳴(な)っていました。
「こんな日(ひ)には、はたはたがとれそうだ。」と、おとうさんはいいました。
 そして、ひさしぶりに大漁(たいりょう)にしてみんなをよろこばせたいと、銀色(ぎんいろ)のふえを持(も)っていきました。
 おとうさんが船(ふね)の上(うえ)でふえをふくと、たくさんの魚(さかな)が、波(なみ)の上(うえ)でおどりました。いかやさばも、むれをつくってよってきて、思(おも)わぬ大漁(たいりょう)になりました。
「季節(きせつ)はずれに、こんなにいろいろな魚(さかな)がとれたのも、みんなふえのおかげだ。」といって、人々(ひとびと)は、浜(はま)に帰(かえ)ってから酒(さか)もりを始(はじ)めました。
 そして、人々(ひとびと)は、お酒(さけ)によいながら、おとうさんにそのふえをふいてもらって、その音色(ねいろ)に耳(みみ)をかたむけていると、またあすのはたらきに新(あたら)しいのぞみがわき、たとえ、海(うみ)があれていても、命(いのち)をかけてはたらき、おたがいになかよくたすけあっていきたいという気持(きも)ちになるのでした。
 いさましく人々(ひとびと)の心(こころ)をうきたてたあのときのふえの音色(ねいろ)を、なみ子(こ)は、いまでもおぼえていました。
「もう一度(ど)、楽(たの)しかったあの時分(じぶん)になってみたい。」と、なみ子(こ)は思(おも)いました。
 ある日(ひ)、青(あお)い玉(たま)と銀色(ぎんいろ)のふえを持(も)ち出(だ)すと、すなはまの上(うえ)で、おとうさんやおかあさんのことをしのびながら、じいっとながめていました。
「この青(あお)い玉(たま)は、おかあさんがだいじにしていらしたんだわ。ああ、この銀色(ぎんいろ)のふえは、おとうさんが、みんなとお魚(さかな)をとるときにふいたんだわ。」
 なみ子(こ)が、海(うみ)の方(ほう)を見(み)ながらつぶやいていると、
「やあ、なみちゃんか。そんなところでなにをしているな。」と、そこを通(とお)りかかったおじいさんの漁師(りょうし)が声(こえ)をかけました。
「海(うみ)の夕日(ゆうひ)が、こんなに赤(あか)くうつるのは、おじいさん、おかあさんが、空(そら)からあたしを見(み)ていらっしゃるのかしら。」
 なみ子(こ)は、青(あお)い玉(たま)にうつる美(うつく)しい夕日(ゆうひ)をながめていいました。
「おっかさんも、おとっつぁんも、そりゃあ、おまえさんをじいっと見(み)まもっていてくださるな。早(はや)く大(おお)きく、りっぱなおとなになるのを待(ま)っていられるぞ。」と、おじいさんは答(こた)えました。
「おじいさん、いまでもこのふえをふけば、お魚(さかな)がよってくるかしら。」
 なみ子(こ)は、こんどは銀色(ぎんいろ)のふえをとり出(だ)して聞(き)きました。
 おじいさんは、なつかしそうに、にぶく光(ひか)るふえをながめていいました。
「そういえば、このごろしけで、魚(さかな)がすくないんだな。魚(さかな)がすくないと、ついつまらんことでなかまわれがしたり、けんかが起(お)こったりする。おまえのおとっつぁんはりっぱな漁師(りょうし)だったから、どんなときでもけんかなどしなかったがな。」
 おじいさんは、なみ子(こ)のおとうさんを思(おも)い出(だ)してほめました。
「おじいさん、このふえをかしてあげましょう。よくふいて、たくさん、お魚(さかな)をとってください。」
 なみ子(こ)は、だいじなふえをさしだしました。
「ありがとう。おとうさんのかたみのふえをかりていいのかい。」
「魚(さかな)がたくさんとれて、このはまの人(ひと)たちがなかよくなれたら、おとうさんもきっとよろこんでくださるわ。」と、なみ子(こ)は心(こころ)から答(こた)えたのでした。

 

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