返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 小川未明童話集 » 正文

青い星の国へ

时间: 2022-09-06    进入日语论坛
核心提示:青い星の国へ小川未明 デパートの内部(なか)は、いつも春(はる)のようでした。そこには、いろいろの香(かお)りがあり、いい音色
(单词翻译:双击或拖选)
青い星の国へ

小川未明

 


 デパートの内部(なか)は、いつも春(はる)のようでした。そこには、いろいろの香(かお)りがあり、いい音色(ねいろ)がきかれ、そして、らんの花(はな)など咲(さ)いていたからです。
 いつも快活(かいかつ)で、そして、また独(ひと)りぼっちに自分(じぶん)を感(かん)じた年子(としこ)は、しばらく、柔(やわ)らかな腰掛(こしか)けにからだを投(な)げて、うっとりと、波立(なみだ)ちかがやきつつある光景(こうけい)に見(み)とれて、夢心地(ゆめごこち)でいました。
「このはなやかさが、いつまでつづくであろう。もう、あと二時間(じかん)、三時間(じかん)たてば、ここにいる人々(ひとびと)は、みんなどこかにか去(さ)って、しんとして暗(くら)くさびしくなってしまうのだろう。」
 こんな空想(くうそう)が、ふと頭(あたま)の中(なか)に、一片(ぺん)の雲(くも)のごとく浮(う)かぶと、急(きゅう)にいたたまらないようにさびしくなりました。
 そこを出(で)て、明(あか)るい通(とお)りから、横道(よこみち)にそれますと、もう、あたりには、まったく夜(よる)がきていました。その夜(よ)も、日(ひ)の短(みじか)い冬(ふゆ)ですから、だいぶふけていたのであります。そして、急(きゅう)に、いままできこえなかった、遠(とお)くで鳴(な)る、汽笛(きてき)の音(おと)などが耳(みみ)にはいるのでした。
「まあ、青(あお)い、青(あお)い、星(ほし)!」
 電車(でんしゃ)の停留場(ていりゅうじょう)に向(む)かって、歩(ある)く途中(とちゅう)で、ふと天上(てんじょう)の一つの星(ほし)を見(み)て、こういいました。その星(ほし)は、いつも、こんなに、青(あお)く光(ひか)っていたのであろうか。それとも、今夜(こんや)は、特(とく)にさえて見(み)えるのだろうか。
 彼女(かのじょ)は、無意識(むいしき)のうちに、「私(わたし)の生(う)まれた、北国(ほっこく)では、とても星(ほし)の光(ひかり)が強(つよ)く、青(あお)く見(み)えてよ。」といった、若(わか)い上野先生(うえのせんせい)の言葉(ことば)が記憶(きおく)に残(のこ)っていて、そして、いつのまにか、その好(す)きだった先生(せんせい)のことを思(おも)い出(だ)していたのであります。
 すでに、彼女(かのじょ)は、いくつかの停留場(ていりゅうじょう)を電車(でんしゃ)にも乗(の)ろうとせず通(とお)りすごしていました。ものを考(かんが)えるには、こうして暗(くら)い道(みち)を歩(ある)くのが適(てき)したばかりでなしに、せっかく、楽(たの)しい、かすかな空想(くうそう)の糸(いと)を混乱(こんらん)のために、切(き)ってしまうのが惜(お)しかったのです。
 先生(せんせい)は、年子(としこ)がゆく時間(じかん)になると、学校(がっこう)の裏門(うらもん)のところで、じっと一筋道(ひとすじみち)をながめて立(た)っていらっしゃいました。秋(あき)のころには、そこに植(う)わっている桜(さくら)の木(き)が、黄色(きいろ)になって、はらはらと葉(は)がちりかかりました。そして、年子(としこ)は、先生(せんせい)の姿(すがた)を見(み)つけると、ご本(ほん)の赤(あか)いふろしき包(づつ)みを打(う)ち振(ふ)るようにして駆(か)け出(だ)したものです。
「あまり遅(おそ)いから、どうなさったのかと思(おも)って待(ま)っていたのよ。」と、若(わか)い上野先生(うえのせんせい)は、にっこりなさいました。
「叔母(おば)さんのお使(つか)いで、どうもすみません。」と、年子(としこ)はいいました。窓(まど)から、あちらに遠(とお)くの森(もり)の頂(いただき)が見(み)えるお教室(きょうしつ)で、英語(えいご)を先生(せんせい)から習(なら)ったのでした。
 きけば、先生(せんせい)は、小(ちい)さい時分(じぶん)にお父(とう)さんをおなくしになって、お母(かあ)さんの手(て)で育(そだ)ったのでした。だから、この世(よ)の中(なか)の苦労(くろう)も知(し)っていらっしゃれば、また、どことなく、そのお姿(すがた)に、さびしいところがありました。
「私(わたし)は、からだが、そう強(つよ)いほうではないし、それに故郷(こきょう)は寒(さむ)いんですから、帰(かえ)りたくはないけれど、どうしても帰(かえ)るようになるかもしれないのよ。」
 ある日(ひ)、先生(せんせい)は、こんなことをおっしゃいました。そのとき、年子(としこ)は、どんなに驚(おどろ)いたでしょう。それよりも、どんなに悲(かな)しかったでしょう。
「先生(せんせい)、お別(わか)れするのはいや。いつまでもこっちにいらしてね。」と、年子(としこ)は、しぜんに熱(あつ)い涙(なみだ)がわくのを覚(おぼ)えました。見(み)ると先生(せんせい)のお目(め)にも涙(なみだ)が光(ひか)っていました。
「ええ、なりたけどこへもいきませんわ。」
 こう先生(せんせい)は、おっしゃいました。けれど、先生(せんせい)のお母(かあ)さんと、弟(おとうと)さんとが、田舎(いなか)の町(まち)にいらして、先生(せんせい)のお帰(かえ)りを待(ま)っていられるのを、年子(としこ)は先生(せんせい)から承(うけたまわ)ったのでした。
 また、先生(せんせい)のお母(かあ)さんと、弟(おとうと)さんは、その町(まち)にあった、教会堂(きょうかいどう)の番人(ばんにん)をなさっていることも知(し)ったのでした。
 だが、ついにおそれた、その日(ひ)がきました。せめてもの思(おも)い出(で)にと、年子(としこ)は、先生(せんせい)とお別(わか)れする前(まえ)にいっしょに郊外(こうがい)を散歩(さんぽ)したのであります。
「先生(せんせい)、ここはどこでしょうか。」
 知(し)らない、文化住宅(ぶんかじゅうたく)のたくさんあるところへ出(で)たときに、年子(としこ)はこうたずねました。
「さあ、私(わたし)もはじめてなところなの。どこだってかまいませんわ。こうして楽(たの)しくお話(はなし)しながら歩(ある)いているんですもの。」
「ええ、もっと、もっと歩(ある)きましょうね、先生(せんせい)」
 ふたりは、丘(おか)を下(お)りかけていました。水(みず)のような空(そら)に、葉(は)のない小枝(こえだ)が、美(うつく)しく差(さ)し交(ま)じっていました。
「私(わたし)が帰(かえ)ったら、お休(やす)みにきっといらっしゃいね。」と、先生(せんせい)がおっしゃいました。
 年子(としこ)は、あちらの、水色(みずいろ)の空(そら)の下(した)の、だいだい色(いろ)に見(み)えてなつかしいかなたが、先生(せんせい)のお国(くに)であろうと考(かんが)えたから、
「きっと、先生(せんせい)におあいにまいります。」と、お約束(やくそく)をしたのです。すると、そのとき、先生(せんせい)は年子(としこ)の手(て)を堅(かた)くお握(にぎ)りなさいました。
「たとえ、遠(とお)いたって、ここから二筋(ふたすじ)の線路(せんろ)が私(わたし)の町(まち)までつづいているのよ。汽車(きしゃ)にさえ乗(の)れば、ひとりでにつれていってくれるのですもの。」
 そうおっしゃって、先生(せんせい)の黒(くろ)いひとみは、同(おな)じだいだい色(いろ)の空(そら)にとまったのでした。
 流(なが)れるものは、水(みず)ばかりではありません。なつかしい上野先生(うえのせんせい)がお国(くに)に帰(かえ)られてから三年(ねん)になります。その間(あいだ)に、おたよりをいただいたとき、北(きた)の国(くに)の星(ほし)の光(ひかり)が、青(あお)いということが重(かさ)ねて書(か)いてありました。そして、雪(ゆき)の凍(こお)る寒(さむ)い静(しず)かな夜(よる)の、神秘(しんぴ)なことが書(か)いてありました。
 青(あお)い星(ほし)を見(み)た刹那(せつな)から、彼女(かのじょ)を北(きた)へ北(きた)へとしきりに誘惑(ゆうわく)する目(め)に見(み)えない不思議(ふしぎ)な力(ちから)がありました。
 とうとう、二、三日(にち)の後(のち)でした。年子(としこ)は、北(きた)へゆく汽車(きしゃ)の中(なか)に、ただひとり窓(まど)に凭(よ)って移(うつ)り変(か)わってゆく、冬枯(ふゆが)れのさびしい景色(けしき)に見(み)とれている、自分(じぶん)を見(み)いだしました。
 東京(とうきょう)を出(で)るときには、にぎやかで、なんとなく明(あか)るく、美(うつく)しい人(ひと)たちもまじっていた車室(しゃしつ)の内(うち)は、遠(とお)く都(みやこ)をはなれるにしたがって人数(にんずう)も減(へ)って、急(きゅう)に暗(くら)くわびしく見(み)えたのでした。そのとき、汽車(きしゃ)は、山(やま)と山(やま)の間(あいだ)を深(ふか)い谷(たに)に沿(そ)うて走(はし)っていたのです。
「まあ、山(やま)は真(ま)っ白(しろ)だこと、ここから雪(ゆき)になるんだわ。」
 年子(としこ)は、思(おも)わずこういって目(め)をみはりました。
「山(やま)を越(こ)してごらんなさい。三尺(じゃく)も、四尺(しゃく)もありますさかい。おまえさんは、どこから乗(の)っていらしたの。」
 黒(くろ)い頭巾(ずきん)をかぶったおばあさんが、みかんをむいて食(た)べながらいいました。年子(としこ)は、話(はな)しかけられて、はじめて注意(ちゅうい)しておばあさんを見(み)ました。なんだかあわれな人(ひと)のようにも見(み)え、また気味悪(きみわる)いようにも感(かん)じられたのです。
「東京(とうきょう)から乗(の)ったのです。そして、つぎのつぎの、停車場(ていしゃじょう)で下(お)りますの。」
「着(つ)くと暗(くら)くなりますの。」
 おばあさんは、それぎりだまってしまいました。雪(ゆき)の曠野(こうや)を走(はし)って、ようやく、目的地(もくてきち)に着(つ)きました。しかし、急(きゅう)に思(おも)いたってきたので、通知(つうち)もしなかったから、この小(ちい)さな寂(さび)しい停車場(ていしゃじょう)に降(お)りても、そこに、上野先生(うえのせんせい)の姿(すがた)が見(み)いだし得(え)ようはずがなかったのです。
 手(て)に、ケースを下(さ)げて、不案内(ふあんない)の狭苦(せまくる)しい町(まち)の中(なか)へはいりました。道(みち)も、屋根(やね)も、一面(めん)雪(ゆき)におおわれていました。寒(さむ)い風(かぜ)が、つじに立(た)っている街燈(がいとう)をかすめて、どこからか、枯(か)れたささの葉(は)の鳴(な)る音(おと)などが耳(みみ)にはいりました。
 どちらへ曲(ま)がったらいいかわからなかったので、しばらくたたずんで、きかかった人(ひと)に、教会堂(きょうかいどう)の在所(ありか)をたずねますと、すぐわかって、そこから三、四丁(ちょう)のところでありました。
 雪催(ゆきもよ)いの曇(くも)った空(そら)に、教会堂(きょうかいどう)のとがった三角形(かくけい)の屋根(やね)は、黒(くろ)く描(えが)き出(だ)されていました。そして、かたわらの小(ちい)さな家(うち)から、ちらちらと灯(あかり)がもれていました。年子(としこ)は、刹那(せつな)の後(のち)に展開(てんかい)する先生(せんせい)との楽(たの)しき場面(ばめん)を想像(そうぞう)して、胸(むね)をおどらしながら入(はい)ってゆきました。
 先生(せんせい)のお母(かあ)さんらしい人(ひと)が、夕飯(ゆうはん)の仕度(したく)をしていられたらしいのが出(で)てこられました。そして、年子(としこ)が、先生(せんせい)をたずねて、東京(とうきょう)からきたということをおききなさると、急(きゅう)にお言葉(ことば)の調子(ちょうし)は曇(くも)りを帯(お)びたようだったが、
「それは、それは、よくいらしてくださいました。さあお上(あ)がりなさいまし。」と、ちょうど我(わ)が子(こ)が遠方(えんぽう)から帰(かえ)ってきたように、しんせつにしてくださいました。
 年子(としこ)は、先生(せんせい)の姿(すがた)が見(み)えないのを、もどかしがっていると、お母(かあ)さんは、おちついた態度(たいど)で、静(しず)かに、先生(せんせい)は、もうこの世(よ)の人(ひと)でないこと、なくなられてから、はや、半年(はんとし)あまりにもなること、そして、その節(せつ)は、お知(し)らせせずにすまなかったとお話(はな)しなされたのでした。
 これをきくと、年子(としこ)は、前後(ぜんご)をわきまえず、そこに泣(な)きくずれました。やがて、北国(ほっこく)の夜(よる)はしんとしました。静(しず)かなのが、たちまちあらしに変(か)わって、吹雪(ふぶき)が雨戸(あまど)を打(う)つ音(おと)がしました。このとき、家(うち)の内(なか)では、こたつにあたりながら、年子(としこ)は、先生(せんせい)のお母(かあ)さんと、弟(おとうと)の勇(いさむ)ちゃんと、三人(にん)で、いろいろお話(はなし)にふけっていたのでした。
「スキーできる?」と、勇(いさむ)ちゃんがききました。
「ちっとばかり。」と、年子(としこ)は答(こた)えた。
「じゃ、明日(あした)、お姉(ねえ)さんのお墓(はか)へ、いっしょにゆこう。」と、勇(いさむ)ちゃんが、いいました。
 翌日(よくじつ)は、いいお天気(てんき)でした。ふたりは、町(まち)を距(へだ)たった、林(はやし)の下(した)にあった寺(てら)の墓地(ぼち)へまいりました。墓地(ぼち)は雪(ゆき)に埋(う)まっていましたけれど、勇(いさむ)ちゃんは、木(き)に見覚(みおぼ)えがあったので、この下(した)にお姉(ねえ)さんが眠(ねむ)っていると教(おし)えたのでした。
「先生(せんせい)、私(わたし)はお約束(やくそく)を守(まも)っておあいしにまいりました。それだのに、先生(せんせい)は、もうおいでがないのです。私(わたし)は、ひとりぽっちで、さびしく帰(かえ)ってゆかなければなりません。」と、年子(としこ)は目(め)を泣(な)きはらして、手(て)を合(あ)わせました。勇(いさむ)ちゃんは、ハーモニカを唇(くちびる)にあてて、姉(ねえ)さんの好(す)きだった曲(きょく)を、北風(きたかぜ)に向(む)かって鳴(な)らしていたのです。

 

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: