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赤いガラスの宮殿

时间: 2022-09-06    进入日语论坛
核心提示:赤いガラスの宮殿小川未明 独(ひと)りものの平三(へいぞう)は、正直(しょうじき)な人間(にんげん)でありましたが、働(はたら)き
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赤いガラスの宮殿

小川未明

 


 独(ひと)りものの平三(へいぞう)は、正直(しょうじき)な人間(にんげん)でありましたが、働(はたら)きがなく、それに、いたって無欲(むよく)でありましたから、世間(せけん)の人々(ひとびと)からは、あほうものに見(み)られていました。
「あれは、あほうだ。」と、いわれると、それをうち消(け)すもののないかぎり、いつしか、そのものは、まったくあほうものにされてしまうばかりでなく、当人(とうにん)も、自分(じぶん)で自分(じぶん)をあほうと思(おも)いこんでしまうようになるものです。平三(へいぞう)も、その一人(ひとり)でありました。
 夏(なつ)のはじめのころであります。
 往来(おうらい)を歩(ある)いていると、日(ひ)ごろ、顔(かお)を知(し)っている、村(むら)に住(す)む若夫婦(わかふうふ)が旅(たび)じたくをしてきかかるのに出(で)あいました。男(おとこ)は、なにか大(おお)きな荷(に)を背負(せお)っています。後(あと)から、やさしい若(わか)い女房(にょうぼう)が、手(て)ぬぐいを頭(あたま)にかぶって、わらじをはいてついてきました。
「どこへいくんだな。」と、平三(へいぞう)は、びっくりした顔(かお)をしてたずねました。
「旅(たび)へ出(で)かけるだよ。この村(むら)にいたっていいことはない。旅(たび)へいってうんと働(はたら)いてくるだ。平(へい)さんも、いかないか。」
「いつ、この村(むら)へ帰(かえ)るだ。」
「それは、わからない。」
「旅(たび)って、どこだな。そこへさえいけばどんないいことがあるけい。」
「それは、広(ひろ)いだ。どこって、おちつく先(さき)は、わからないが、たんといいことがあると聞(き)いているから出(で)かけるだよ。」
「その広(ひろ)い土地(とち)を掘(ほ)ったら、金(きん)か、銀(ぎん)でも出(で)てくるか……。そんなら、おれもいって、精(せい)を出(だ)して掘(ほ)るべい。」
「金(きん)も、銀(ぎん)も、なんでも出(で)てくるだ。おれたちがいって、よかったら、たよりをするだよ。そうしたら、おまえも、出(で)かけてきべい。そんだら、達者(たっしゃ)で暮(く)らしなよ。」
「そんだら、二人(ふたり)も、道中(どうちゅう)気(き)をつけていきなよ。」
 平三(へいぞう)は、いつまでも道(みち)の上(うえ)に立(た)って、二人(ふたり)の姿(すがた)の消(き)えてゆくのを見送(みおく)っていました。
 それから、日(ひ)がたちました。
 彼(かれ)は、村(むら)はずれの丘(おか)のふもとで、ひなたぼっこをして、ぼんやりと空想(くうそう)にふけっていました。おりおり思(おも)い出(だ)したように、初夏(しょか)の風(かぜ)が、ため息(いき)をつくように吹(ふ)いて、彼(かれ)のほおをなでて過(す)ぎました。
 そのとき、三十五、六の女(おんな)が、頭髪(とうはつ)を乱(みだ)して、ぶつぶつとつぶやきながら、せわしそうな足(あし)どりで、なにかざるにいれて、小(こ)わきに抱(かか)えながら、平三(へいぞう)の前(まえ)を通(とお)り過(す)ぎようとしました。
 平三(へいぞう)の腰(こし)を下(お)ろしているうしろには、こんもりとした野(の)ばらのやぶがあって、真(ま)っ白(しろ)な花(はな)のさかりでした。それには、無数(むすう)のみつばちが集(あつ)まっています。しかし、そんなことには、ここを通(とお)りかかる女(おんな)も、また平三(へいぞう)すらも気(き)づいていないようすでした。
 彼(かれ)は足音(あしおと)を聞(き)いて、ふと顔(かお)を上(あ)げると、やはり見知(みし)りの村(むら)の女(おんな)でしたから、
「こんにちは、どこへいかっしゃる……。」と、声(こえ)をかけました。女(おんな)は、びっくりして、こちらを向(む)きました。その目(め)の中(なか)は涙(なみだ)にぬれていたのです。
「かわいい、大事(だいじ)な坊(ぼう)やが死(し)んでしまって、おもちゃがあると思(おも)い出(だ)していけないから、みんな河(かわ)に流(なが)してしまおうと思(おも)って、捨(す)てにいくところだよ。」
「ほんとうに、かわいそうなことをしたな。おれに、よく悪口(わるくち)をいったり、石(いし)を投(な)げたり、からかったが、あの子(こ)は、かわいい、いい子(こ)だった。おれ、ちっとも憎(にく)いと思(おも)ったことがなかったよ。」
「ほんに、おまえさんに、よくいたずらしたっけが、後生(ごしょう)だから、悪(わる)く思(おも)って、くんなさんなよ。ちっとも悪気(わるぎ)はなかったのだから……。」と、母親(ははおや)は、思(おも)い出(だ)して新(あたら)しく出(で)る涙(なみだ)をぬぐいました。
「おれ、坊(ぼう)やのおもちゃもらっておくだ。坊(ぼう)やのと思(おも)って、大事(だいじ)にするだ。おくんなせい。」
「そんだら、河(かわ)さ流(なが)さんで、おまえさんにくれべいかな。」
 母親(ははおや)は、子供(こども)のおもちゃを平三(へいぞう)に与(あた)えたのでありました。
 彼(かれ)は、それを自分(じぶん)の小屋(こや)へ持(も)って帰(かえ)った。それらのおもちゃは、びっこの女(おんな)の子(こ)のお人形(にんぎょう)や、セルロイド製(せい)のサンタクロースに似(に)たおじいさんや、馬(うま)や、こわれかかった汽車(きしゃ)や、そのほか絵本(えほん)などでありました。平三(へいぞう)は、壁(かべ)のきわにそれをならべて、死(し)んだ子供(こども)の顔(かお)を思(おも)い出(だ)していたのであります。
 村(むら)の子供(こども)たちは、平三(へいぞう)の留守(るす)の間(ま)に、小屋(こや)の中(なか)へ入(はい)ってきました。そして、彼(かれ)が大事(だいじ)にしているおもちゃを外(そと)へ持(も)ち出(だ)して、いつのまにか、どこへかなくしてしまったのもありました。
「また、いたずら子(こ)が、留守(るす)にはいって、大事(だいじ)にしているおもちゃをどこかへ持(も)ち出(だ)してしまったな。」と、帰(かえ)ってきた平三(へいぞう)は、ひとりでどなり声(ごえ)を出(だ)して、家(いえ)の外(そと)へ出(で)て、どこかに落(お)ちていないかとおもちゃをさがしました。
 もはや、夕闇(ゆうやみ)は、路(みち)の上(うえ)にせまってきて、あたりのものが、はっきりとわかりません。彼(かれ)は悲(かな)しくなって、おもちゃを持(も)っていた、死(し)んだ坊(ぼう)やにすまないことをしたような気(き)がして、涙(なみだ)ぐみましたが、また考(かんが)えてみると、同(おな)じような子供(こども)が、どこかへ持(も)っていって遊(あそ)んだのなら、けっして、罪(つみ)にもならないと思(おも)ったりしたのです。
 木(こ)の葉(は)の落(お)ちる秋(あき)となり、そして、やがて冬(ふゆ)がきました。
 雪(ゆき)は、ちらちらと降(ふ)りはじめました。田(た)や畠(はたけ)に、餌(えさ)がなくなると、からすは、ひもじいとみえて、カアカア鳴(な)いて、人家(じんか)のある方(ほう)へ飛(と)んできました。
「こんな雪(ゆき)の日(ひ)には、困(こま)るのは、だれも同(おな)じこった。そら、おまえにもくれてやろう。」と、平三(へいぞう)は自分(じぶん)の食物(しょくもつ)をわけて、からすに投(な)げてやりました。
 からすという鳥(とり)は、黒(くろ)い陰気(いんき)な鳥(とり)で、人間(にんげん)にはきらわれますが、なかなかりこうな鳥(とり)でした。さかしそうな目(め)つきをして、木(き)の枝(えだ)にとまって、平三(へいぞう)の方(ほう)を見(み)ましたが、じきに飛(と)んできて、それを食(た)べました。それから後(のち)は、いつでも平三(へいぞう)の小屋(こや)の近(ちか)くにいて、遠(とお)くへいっても、また、このあたりの木(き)に帰(かえ)ってきました。
 雪(ゆき)のないうちは、手助(てだす)けにやとわれたりして、どうにか暮(く)らしてゆきましたが、雪(ゆき)が降(ふ)ってからは、外(そと)の仕事(しごと)もなくなってしまい、平三(へいぞう)をやとうようなものもなかったのです。
「平三(へいぞう)は、どうしたろうな。」
「せんだって、往来(おうらい)を通(とお)っていたら、からすが屋根(やね)にとまって、アホウ、アホウと鳴(な)いていたぞ。」と、戯談(じょうだん)をいったものがあります。
「無欲(むよく)な、正直(しょうじき)な人間(にんげん)だ。そんな悪口(わるくち)をいうもんでねえ。雪(ゆき)が降(ふ)って、仕事(しごと)がなくなって困(こま)っているだろうから、私(わたし)は、明日(あす)にも、ちょっといってのぞいてみるつもりだ。みんなも、なにかよけいなものがあったら、くれてやるがいいだ。」と、老人(ろうじん)が、口(くち)をいれました。
 こんなに、かげで、村(むら)の人(ひと)から同情(どうじょう)されているとも知(し)らずに、平三(へいぞう)は小屋(こや)の中(なか)で、一人(ひとり)で雪(ゆき)ぐつをつくっていました。
「カア、カア。」と、からすが、外(そと)のかきの枝(えだ)にとまって、しきりに鳴(な)いています。
「なにかくれてやりたいが、今夜(こんや)は、一(ひと)つぶの飯(めし)もねえだ。我慢(がまん)をしろよ。このくつを持(も)って、明日(あす)は、早(はや)く売(う)りにいってくる。そして、帰(かえ)りに食(た)べるものを買(か)ってくるからな。」と、小屋(こや)の中(なか)で、聞(き)こえるはずもないのに、からすにはなしをしていました。
 ちょうど、そのころのことであります。ほどへだたった町(まち)の酒屋(さかや)に、嫁入(よめい)りがありました。その評判(ひょうばん)は、この村(むら)でもたいしたものでありました。
「三国(ごく)一の嫁御(よめご)というこった。あんな器量(きりょう)よしは、まあ、金(かね)のわらじをはいて、さがしても、ほかには二人(ふたり)とないという話(はなし)だ。」
 こんなうわさは、端(はし)から、端(はし)にまでひろまりました。平三(へいぞう)はそれを聞(き)くと、
「どんな、嫁御(よめご)だろうな。」といって、ぼんやりと考(かんが)えこんだのです。
 村(むら)で、町(まち)へいって、その嫁御(よめご)を見(み)てきたものは、帰(かえ)ると、その美(うつく)しいことを、ほこり顔(がお)に語(かた)ったのでありました。平三(へいぞう)は自分(じぶん)も、どうかして、その嫁御(よめご)を見(み)たいと思(おも)いました。しかし、そんな手(て)づるはどこにもありません。考(かんが)えたすえに、彼(かれ)は酒(さけ)を買(か)いにいったら、あるいは見(み)えまいものでもないと思(おも)ったのでした。
 あわれな平三(へいぞう)は、夜(よ)の目(め)も眠(ねむ)らずに、わらをあんで、雪(ゆき)ぐつをつくりました。そして、翌日(よくじつ)は、それを持(も)って、村(むら)から村(むら)へ、売(う)って歩(ある)きました。
 晩方(ばんがた)、家(うち)に帰(かえ)ると、小(ちい)さな徳利(とくり)をさげて、町(まち)の酒屋(さかや)へ酒(さけ)を買(か)いに出(で)かけたのです。
 彼(かれ)は、毎日(まいにち)毎日(まいにち)、晩方(ばんがた)になると、徳利(とくり)をさげて、酒(さけ)を買(か)いにゆきました。しかし、三国(ごく)一の花嫁(はなよめ)は、家(いえ)の奥深(おくふか)くはいっているとみえて、一度(ど)も、その顔(かお)を見(み)ることができなかった。いつも、頭(あたま)のはげあがった番頭(ばんとう)が、上目(うわめ)を使(つか)って、じろりと平三(へいぞう)の顔(かお)をにらむように見(み)て、一合(ごう)ますに酒(さけ)をはかっていれて渡(わた)しました。彼(かれ)は、毎日(まいにち)毎日(まいにち)失望(しつぼう)して、家(いえ)へ帰(かえ)ってきたのであります。
「あほうの平三(へいぞう)は、いつから、あんなに飲(の)み助(すけ)になりおったか。」といって、村(むら)の人(ひと)たちは、彼(かれ)が、ちらちらと雪(ゆき)の降(ふ)る中(なか)を町(まち)の方(ほう)へ徳利(とくり)をさげてゆく、さびしそうな姿(すがた)を見送(みおく)ったのでした。
 平三(へいぞう)は、あまり、酒(さけ)が好(す)きでなかったから、飲(の)み残(のこ)しを、大(おお)きな徳利(とくり)にうつしておきました。そして、だんだんそれがたまって、酒(さけ)は大(おお)きな徳利(とくり)いっぱいになろうとしました。
 ある日(ひ)、彼(かれ)は、今日(きょう)こそ美(うつく)しい嫁御(よめご)を見(み)たいものだと思(おも)って、酒(さけ)を買(か)いにゆきましたが、やはり見(み)られなかったばかりでなく、番頭(ばんとう)から、冷淡(れいたん)にされて、悲(かな)しんで家(うち)へ帰(かえ)ると、徳利(とくり)の酒(さけ)を茶(ちゃ)わんにうつして、かなしみを忘(わす)れようとして飲(の)みほしました。いつになく、量(りょう)をすごして酔(よ)ってしまうと、彼(かれ)はごろりと横(よこ)になって、眠(ねむ)ってしまったのです。
 この村(むら)にいても、おもしろくないので、平三(へいぞう)もいよいよ旅(たび)へ出(で)かけたのでした。こわれかかったような、小(ちい)さな汽車(きしゃ)に乗(の)って、野原(のはら)の中(なか)を走(はし)っています。石(いし)くれがごろごろとして、短(みじか)い草(くさ)が風(かぜ)になびき、向(む)こうの方(ほう)には、さびしい丘(おか)がつづいていました。そのさきは、海(うみ)になっているらしく、しろい雲(くも)が、ちぎれて飛(と)んでいます。
 ピョーと、汽笛(きてき)が高(たか)くひびいて、汽車(きしゃ)がとまると、彼(かれ)はおりなければならなかった。
「ここは、どこだろう……。」
 彼(かれ)は、足(あし)の向(む)くままに歩(ある)いてゆくと、
「どこへいくんだい。」と、ふいに声(こえ)をかけた子供(こども)があった。ふり向(む)くと、あの死(し)んだ坊(ぼう)やでありました。
「おお、坊(ぼう)や。おまえは、こんなところにきているのか、母(かあ)さんが、泣(な)いていたぞ。そして、おまえは、死(し)んだのではなかったのか。」
「まだ、たくさんあちらにいるよ。つれていってやろう。」
 子供(こども)は、先(さき)にたって、平三(へいぞう)を丘(おか)の上(うえ)へ案内(あんない)しました。いつしか、子供(こども)の姿(すがた)は見(み)えなくなって、彼(かれ)は、赤(あか)いガラスでつくられた宮殿(きゅうでん)の前(まえ)に立(た)っていました。頭(あたま)のとがった、三角形(かくけい)の赤(あか)いガラスの建物(たてもの)は傾斜(けいしゃ)した丘(おか)の上(うえ)にあって、かたむいていました。そして、この建物(たてもの)には、ふしぎに入(い)り口(ぐち)がついていませんでした。赤(あか)いガラスをとおして、内部(ないぶ)をのぞくと、いくつか、影(かげ)が動(うご)いています。じっと見(み)るとおじいさんが、腰(こし)かけていました。また、いつか、旅(たび)へ出(で)かけた若(わか)もの夫婦(ふうふ)がいました。女房(にょうぼう)は、にこにことして、なにか盆(ぼん)にのせて、あちらへ運(はこ)んでいました。こちらには、びっこの娘(むすめ)が、さびしそうにして立(た)っている。そればかりでない、犬(いぬ)も、子馬(こうま)も、みんないっしょにむつまじく暮(く)らしていました。おじいさんは、なにかいっているとみえて、口(くち)だけは動(うご)いていたが、ガラスの内部(ないぶ)でいっているので、声(こえ)がすこしも聞(き)こえてきませんでした。平三(へいぞう)は、なんだか、そのおじいさんも、娘(むすめ)も、みんなどこかで、一度(ど)見(み)たことのあるような気(き)がして、考(かんが)えていました。が、それらは、すべて、自分(じぶん)の持(も)っていたおもちゃであったことに気(き)がつかなかったのです。
「もし、もし、おれも、仲間(なかま)にいれてくんなされ。もし、もし。」と、平三(へいぞう)は、叫(さけ)んだけれど、あらしが強(つよ)くて、その声(こえ)を吹(ふ)き消(け)したのでした。
 青々(あおあお)とすみわたった空(そら)の下(した)で、すさまじいあらしが、吹(ふ)いていました。たちまち、どっと、おそって、この赤(あか)いガラスの宮殿(きゅうでん)にぶっつかったかと思(おも)うと、さながら氷(こおり)をくだいたようなひびきをたて、みごとな建物(たてもの)は、さんらんとして、空中(くうちゅう)に、飛(と)び散(ち)ってしまいました。
 夢(ゆめ)からさめた平三(へいぞう)は、ぼんやりとして、外(そと)をながめました。めずらしく、よく空(そら)は晴(は)れて、夕焼(ゆうや)けが赤々(あかあか)と雪(ゆき)の平野(へいや)をそめていました。そして、なにかいいことのある知(し)らせのように、からすが鳴(な)いていました。
「こんどこそ、魂(たましい)をいれかえて働(はたら)くだ。」
 彼(かれ)は、生(う)まれ変(か)わったように、さとりました。たまたま遠(とお)い、浜(はま)の方(ほう)へ帰(かえ)ってゆく、からのそりがありました。浜(はま)へゆけば、冬(ふゆ)でも仕事(しごと)があると聞(き)いていました。彼(かれ)は大(おお)きな徳利(とくり)の酒(さけ)を男(おとこ)にやって、浜(はま)の方(ほう)まで、そのそりに乗(の)せてもらうことにしました。彼(かれ)は、永久(えいきゅう)に、その村(むら)から去(さ)ったのです。からすだけが、彼(かれ)との別(わか)れを惜(お)しんで鳴(な)いていました。

 

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