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赤い魚と子供

时间: 2022-09-06    进入日语论坛
核心提示:赤い魚と子供小川未明 川(かわ)の中(なか)に、魚(さかな)がすんでいました。 春(はる)になると、いろいろの花(はな)が川(かわ)
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赤い魚と子供

小川未明

 


 川(かわ)の中(なか)に、魚(さかな)がすんでいました。
 春(はる)になると、いろいろの花(はな)が川(かわ)のほとりに咲(さ)きました。木(き)が、枝(えだ)を川(かわ)の上(うえ)に拡(ひろ)げていましたから、こずえに咲(さ)いた、真紅(まっか)な花(はな)や、またうす紅(くれない)の花(はな)は、その美(うつく)しい姿(すがた)を水(みず)の面(おもて)に映(うつ)したのであります。
 なんのたのしみもない、この川(かわ)の魚(さかな)たちは、どんなに上(うえ)を向(む)いて、水(みず)の面(おもて)に映(うつ)った花(はな)をながめてうれしがったでありましょう。
「なんというきれいな花(はな)でしょう。水(みず)の上(うえ)の世界(せかい)にはあんなに美(うつく)しいものがたくさんあるのだ。こんどの世(よ)には、どうかして私(わたし)たちは水(みず)の上(うえ)の世界(せかい)に生(う)まれ変(か)わってきたいものです。」と、魚(さかな)たちは話(はな)し合(あ)っていました。
 なかにも、魚(さかな)の子供(こども)らは躍(おど)り上(あ)がって、とどきもしない花(はな)に向(む)かって、飛(と)びつこうと騒(さわ)いだのです。
「お母(かあ)さん、あのきれいな花(はな)がほしいのです。」といいました。
 すると、魚(さかな)の母親(ははおや)は、その子供(こども)をいましめて、いいますのには、
「あれは、ただ遠(とお)くからながめているものです。けっして、あの花(はな)が水(みず)の上(うえ)に落(お)ちてきたとて食(た)べてはなりません。」と教(おし)えました。
 子供(こども)らは、母親(ははおや)のいうことが、なぜだか信(しん)じられなかった。
「なぜ、お母(かあ)さん、あの花(はな)びらが落(お)ちてきたら、食(た)べてはなりませんのですか。」と聞(き)きました。
 母親(ははおや)は、思案顔(しあんがお)をして、子供(こども)らを見守(みまも)りながら、
「昔(むかし)から、花(はな)を食(た)べてはいけないといわれています。あれを食(た)べると、体(からだ)に変(か)わりができるということです。食(た)べるなというものは、なんでも食(た)べないほうがいいのです。」といいました。
「あんなにきれいな花(はな)を、なぜ食(た)べてはいけないのだろう。」と、一ぴきの子供(こども)の魚(さかな)は、頭(かしら)をかしげました。
「あの花(はな)が、この水(みず)の上(うえ)に、みんな落(お)ちてきたら、どんなにきれいだろう。」と、ほかの一ぴきは目(め)を輝(かがや)かしながらいいました。
 そして、子供(こども)らは、毎日(まいにち)、水(みず)の面(おもて)を見上(みあ)げて、花(はな)の散(ち)る日(ひ)をたのしみにして待(ま)っていました。ひとり、母親(ははおや)だけは、子供(こども)らが自分(じぶん)のいましめをきかないのを心配(しんぱい)していました。
「どうか、花(はな)を私(わたし)の知(し)らぬまに食(た)べてくれぬといいけれど。」と、独(ひと)り言(ごと)をしていました。
 木々(きぎ)の咲(さ)いた花(はな)には、朝(あさ)から、晩(ばん)になるまで、ちょうや、はちがきてにぎやかでありましたが、日(ひ)がたつにつれて、花(はな)は開(ひら)ききってしまいました。そして、ある日(ひ)のこと、ひとしきり風(かぜ)が吹(ふ)いたときに、花(はな)はこぼれるように水(みず)の面(おもて)にちりかかったのであります。
「ああ、花(はな)が降(ふ)ってきた。」と、川(かわ)の中(なか)の魚(さかな)は、みんな大騒(おおさわ)ぎをしました。
「まあ、なんというりっぱさでしょう。しかし、子供(こども)らが、うっかりこの花(はな)をのまなければいいが。」と、大(おお)きな魚(さかな)は心配(しんぱい)していました。
 花(はな)は、水(みず)の上(うえ)に浮(う)かんで、流(なが)れ流(なが)れてゆきました。しかし、後(あと)から、後(あと)から、花(はな)がこぼれて落(お)ちてきました。
「どんなに、おいしかろう。」といって、三びきの魚(さかな)の子供(こども)は、ついに、その花(はな)びらをのんでしまいました。
 その子供(こども)らの母親(ははおや)は、その翌日(よくじつ)、我(わ)が子(こ)の姿(すがた)を見(み)て、さめざめと泣(な)いたのです。
「あれほど、花(はな)びらをたべてはいけないといったのに。」といいました。
 黒(くろ)い子供(こども)の体(からだ)は、いつのまにか、二ひきは、赤(あか)い色(いろ)に、一ぴきは白(しろ)と赤(あか)の斑色(ぶちいろ)になっていたからです。
 母親(ははおや)の歎(なげ)いたのも、無理(むり)はありませんでした。この三びきの子供(こども)が、川中(かわなか)でいちばん目立(めだ)って美(うつく)しく見(み)えたからであります。そして、川(かわ)の水(みず)は、よく澄(す)んでいましたから、上(うえ)からでものぞけば、この三びきの子供(こども)らが遊(あそ)んでいる姿(すがた)がよくわかったのであります。
「人間(にんげん)が、おまえらを見(み)つけたら、きっと捕(と)らえるから、けっして水(みず)の上(うえ)へ浮(う)いてはならないぞ。」と、母親(ははおや)は、その子供(こども)らをいましめました。
 町(まち)からは、こんどは、人間(にんげん)の子供(こども)たちが毎日(まいにち)川(かわ)へ遊(あそ)びにやってきました。
 町(まち)の子供(こども)たちの中(なか)で、川(かわ)にすむ、赤(あか)い魚(さかな)を見(み)つけたものがあります。
「この川(かわ)の中(なか)に、金魚(きんぎょ)がいるよ。」と、その魚(さかな)を見(み)た子供(こども)がいいました。
「なんで、この川(かわ)の中(なか)に金魚(きんぎょ)なんかがいるもんか、きっとひごいだろう。」と、ほかの子供(こども)がいいました。
「ひごいなんか、なんでこの川(かわ)中(なか)にいるもんか。それはお化(ば)けだよ。」と、ほかの子供(こども)がいいました。
 けれど、子供(こども)たちは、どうかして、その赤(あか)い魚(さかな)を捕(と)らえたいばかりに、毎日(まいにち)川(かわ)のほとりへやってきました。
 町(まち)では、子供(こども)たちの母親(ははおや)が心配(しんぱい)いたしました。
「どうして、そう毎日(まいにち)川(かわ)へばかりゆくのだえ。」と、子供(こども)たちをしかりました。
「だって、赤(あか)い魚(さかな)がいるんですもの。」と、子供(こども)は答(こた)えました。
「ああ、昔(むかし)から、あの川(かわ)には赤(あか)い魚(さかな)がいるんですよ。しかし、それを捕(と)らえるとよくないことがあるというから、けっして、川(かわ)などへいってはいけません。」と、母親(ははおや)はいいました。
 子供(こども)たちは、母親(ははおや)がいったことをほんとうにしませんでした。どうかして、赤(あか)い魚(さかな)を捕(つか)まえたいものだと、毎日(まいにち)、川(かわ)のふちへきてはうろついていました。
 ある日(ひ)のこと、子供(こども)たちは、とうとう赤(あか)い魚(さかな)を三びきとも捕(つか)まえてしまいました。そして、家(うち)へ持(も)って帰(かえ)りました。
「お母(かあ)さん、赤(あか)い魚(さかな)を捕(つか)まえてきましたよ。」と、子供(こども)たちはいいました。
 お母(かあ)さんは、子供(こども)たちの捕(つか)まえてきた赤(あか)い魚(さかな)を見(み)ました。
「おお、小(ちい)さいかわいらしい魚(さかな)だね! どんなにか、この魚(さかな)の母親(ははおや)が、いまごろ悲(かな)しんでいるでしょう。」と、お母(かあ)さんはいいました。
「お母(かあ)さん、この魚(さかな)にもお母(かあ)さんがあるのですか?」と、子供(こども)たちはききました。
「ありますよ。そして、いまごろ、子供(こども)がいなくなったといって心配(しんぱい)しているでしょう。」と、お母(かあ)さんは答(こた)えました。
 子供(こども)たちは、その話(はなし)をきくとかわいそうになりました。
「この魚(さかな)を逃(に)がしてやろうか。」と、一人(ひとり)がいいました。
「ああもう、だれも捕(つか)まえないように大(おお)きな河(かわ)へ逃(に)がしてやろう。」と、もう一人(ひとり)がいいました。子供(こども)たちは、三びきのきれいな魚(さかな)を町(まち)はずれの大(おお)きな河(かわ)へ逃(に)がしてやりました、その後(あと)で子供(こども)たちは、はじめて気(き)がついていいました。
「あの三びきの赤(あか)い魚(さかな)は、はたして、魚(さかな)のお母(かあ)さんにあえるのだろうか?」
 しかし、それはだれにもわからなかったのです。子供(こども)たちはその後(のち)、気(き)にかかるので、いつか三びきの赤(あか)い魚(さかな)を捕(つか)まえた川(かわ)にいってみましたけれど、ついにふたたび赤(あか)い魚(さかな)の姿(すがた)を見(み)ませんでした。
 夏(なつ)の夕暮(ゆうぐ)れ方(がた)、西(にし)の空(そら)の、ちょうど町(まち)のとがった塔(とう)の上(うえ)に、その赤(あか)い魚(さかな)のような雲(くも)が、しばしば浮(う)かぶことがありました。子供(こども)たちは、それを見(み)ると、なんとなく悲(かな)しく思(おも)ったのです。

 

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