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赤い船とつばめ

时间: 2022-09-06    进入日语论坛
核心提示:赤い船とつばめ小川未明ある日ひの晩方ばんがた、赤あかい船ふねが、浜辺はまべにつきました。その船ふねは、南みなみの国くにか
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赤い船とつばめ

小川未明

 

ある日ひの晩方ばんがた、赤あかい船ふねが、浜辺はまべにつきました。その船ふねは、南みなみの国くにからきたので、つばめを迎むかえに、王おうさまが、よこされたものです。
長ながい間あいだ、北きたの青あおい海うみの上うえを飛とんだり、電信柱でんしんばしらの上うえにとまって、さえずっていましたつばめたちは、秋風あきかぜがそよそよと吹ふいて、木きの葉はが色いろづくころになると、もはや、南みなみの方ほうのお家うちへ帰かえらなければなりませんでした。寒さむさに弱よわい、この小鳥ことりは、あたたかなところに育そだつように生うまれついたからです。
王おうさまは、もうつばめらの帰かえる時分じぶんだと思おもうと、赤あかい船ふねを迎むかえによこされました。つばめたちも、船ふねに乗のりおくれてはならぬと思おもって、その時分じぶんには、海岸かいがんの近ちかくにきて、気きをつけていました。そして、波間なみまに、赤あかい船ふねが見みえると、
「キイ、キイ……。」といって、喜よろこんで鳴ないたのです。
早はやく見みつけたつばめは、それをまだ知しらない友ともだちに告つげるために、空高そらたかく舞まい上あがって、紺色こんいろの美うつくしい翼つばさをひるがえしながら、
「赤あかい船ふねがきましたよ。さあ、もう私わたしたちは、立たつときです。どうか、遠方えんぽうにいるお友ともだちに知しらせてください。」といいました。
なかには遠とおいところにいて、まだ知しらずにいるものもありました。そういうつばめは、村むらに他たのいいお友ともだちができて、「まあ、まあ、そんなに急いそいで、お帰かえりなさることはない。」といわれて、引ひきとめられているつばめたちであったのでした。
赤あかい船ふねは、浜辺はまべに四日よっか、五日いつか、とまっていました。そして、四方ほうから、毎日まいにちのように集あつまってくるつばめを待まっていました。もう、たくさんつばめが船ふねに乗のって、最後さいごには、ほばしらの上うえまで止とまって、まったく、はいる席せきがなくなった時分じぶん、静しずかに海岸かいがんをはなれたのです。
たいていは、月つきのいい晩ばんを見みはからって、出発しゅっぱつしました。なぜなら、長ながい海うみの上うえをゆくには、景色けしきが見みえなければ、退屈たいくつであるし、また途中とちゅうから、船ふねをたよって、飛とんできて加くわわるものがないとはかぎらなかったからです。
あるとき、一羽わのつばめは、船ふねに乗のろうと思おもって、遠とおいところから、急いそいで飛とんできましたが、すでに船ふねの立たってしまった後あとでした。
そのつばめは、ひじょうにがっかりしました。しかたなく、木きの葉はを船ふねとして、これに乗のってゆこうと決心けっしんしました。それより海うみのかなたへ、渡わたる途みちはなかったのです。
昼間ひるまは、木きの葉はをくわえて飛とんで、夜よるになると葉はを船ふねにして、その上うえで休やすみました。そのつばめは、こうして、旅たびをしているうちに、一夜や、ひじょうな暴風ぼうふうに出であいました。驚おどろいて、木きの葉はをしっかりとくわえて暗くらい空そらに舞まい上あがり、死しにもの狂ぐるいで夜よるの間あいだを暴風ぼうふうと戦たたかいながらかけりました。
夜よが明あけると、はるか目めの下したの波間なみまに、赤あかい船ふねが、暴風ぼうふうのために、くつがえっているのを見みました。それは、王おうさまのお迎むかえに出だされた赤あかい船ふねです。つばめは、急いそいで帰かえって、このことを王おうさまに申もうし上あげました。――王おうさまは、ここにはじめて、自みずからの力ちからをたよることのいちばん安心あんしんなのを悟さとられ、あくる年としから、赤あかい船ふねを出だすことを見合みあわせられたのであります。
――一九二六・九――
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