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朝の公園

时间: 2022-09-13    进入日语论坛
核心提示:朝の公園小川未明 それは、さむいさむい朝(あさ)のことでした。女中(じょちゅう)のおはるは、赤(あか)いマントをきた、小(ちい)
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朝の公園

小川未明

 


 それは、さむいさむい朝(あさ)のことでした。女中(じょちゅう)のおはるは、赤(あか)いマントをきた、小(ちい)さいお嬢(じょう)さんをつれて、近(ちか)くの公園(こうえん)へあそびにきました。そこはもう、朝日(あさひ)があたたかくてっていたからです。公園(こうえん)には、ぶらんこがあり、すべりだいがありました。もう子供(こども)たちがあつまって、笑(わら)ったりかけたりしていました。
 小(ちい)さなお嬢(じょう)さんは、ひとりであそんでいました。おはるはベンチに腰(こし)をかけて、もってきた少女雑誌(しょうじょざっし)を読(よ)んでいました。いなかにいるときから、本(ほん)を読(よ)むのがすきでありましたので、こちらへきてからも毎月(まいげつ)のお小(こ)づかいの中(なか)から雑誌(ざっし)を買(か)って、おしごとのおわったあととか、ひまのときにはとり出(だ)して、読(よ)むのをたのしみにしていたのであります。
 いま、おはるは、その雑誌(ざっし)にのっている、少女小説(しょうじょしょうせつ)をむちゅうになって読(よ)んでいました。あわれな家(うち)があって、感心(かんしん)な少女(しょうじょ)が病気(びょうき)の母親(ははおや)と弟(おとうと)をたすけてはたらく話(はなし)が、かいてありました。しばらく、雑誌(ざっし)に目(め)をおとしてかんがえこんでいると、ふいになきさけぶお嬢(じょう)さんの声(こえ)がきこえました。おはるは、はっとして立(た)ちあがりました。見(み)ると、お嬢(じょう)さんはすべりだいからどうしておちたものか、泣(な)いているのです。
「まあ、どうなすったのですか?」と、おどろいてとんでいきました。
 が、おはるがとんでいくよりも先(さき)に、みすぼらしいはんてん着(ぎ)の男(おとこ)がかけよって、お嬢(じょう)さんをだきおこしてくれたのでした。
「おお、いい子(こ)、いい子(こ)。」といって、その男(おとこ)はなだめていました。
「ありがとうございました。」と、おはるはお礼(れい)をいって、
「お嬢(じょう)さん、ころんだのですか、どこか痛(いた)くって?」とききますと、ちょっとおどろいたばかりとみえて、べつにけがはなかったようすです。
 おはるは、安心(あんしん)しました。そして、さっきの男(おとこ)の人(ひと)をみると、むこうのベンチにもどって、ゆうべからこうしてじっとしているらしく、両腕(りょううで)をくんでうつむいているのでした。
「きっと、とまるところがなかったんだわ。」
 おはるは、このごろ、宿(やど)がなくて公園(こうえん)で夜(よ)をあかすあわれな人(ひと)のあることをきいていました。それで、その人(ひと)もそうであろうと思(おも)ったのです。
 おはるはお嬢(じょう)さんをだいて、むこうがわのベンチに腰(こし)をおろしました。そして思(おも)いだしたように、ときどき、そのあわれな男(おとこ)のようすを見(み)ていました。男(おとこ)はそんなことに気(き)のつくはずもなく、いつまでもじっとしてうなだれていました。
「しごとがないのだろうか? それとも、年(とし)をとっていて、しごとができないのだろうか?」
 いろいろのことを考(かんが)えながら見(み)まもっているうちに、いつか自分(じぶん)の父親(ちちおや)のすがたが、目(め)にうかんできました。気(き)のせいか、あの男(おとこ)のすがたのどこかにお父(とう)さんと似(に)たところがあるようです。
「きょうだいもない、子供(こども)もない、ひとりものなのかしら?」
 そう考(かんが)えているうちにおはるは、故郷(こきょう)ではたらく両親(りょうしん)のすがたが、まざまざと目(め)に見(み)えるような気(き)がして、この暮(く)れにはなにかお父(とう)さんやお母(かあ)さんのすきそうなものをおくってあげようと思(おも)ったのでした。
「さあ、おうちへかえりましょう。そしてまたあとであそびにまいりましょう。」といって、おはるはお嬢(じょう)さんの手(て)をひいて、おうちへかえりかけました。
 公園(こうえん)の花壇(かだん)は霜枯(しもが)れがしていて、いまは赤(あか)く咲(さ)いている花(はな)もありませんでした。けれど、黒(くろ)いやわらかな土(つち)からは、来年(らいねん)さく草花(くさばな)の芽(め)が、もうぷつぷつとみどり色(いろ)に頭(あたま)を見(み)せていたのです。公園(こうえん)を出(で)るとき、おはるはもういちどふりむいて、あのルンペンのような男(おとこ)を見(み)ました。男(おとこ)は、やはり動(うご)かない置(お)きもののように下(した)をむいて、じっとしていました。
 ちょうどその日(ひ)の、昼(ひる)ごろのことです。おはるがおつかいに出(で)ると、公園(こうえん)のそばで子供(こども)たちが、いまルンペンらしい男(おとこ)が、たおれていたのを巡査(おまわり)さんがつれていったと話(はな)していたので、おはるは、もしやさっきお嬢(じょう)さんをだきおこしてくれたしんせつな男(おとこ)ではないかと思(おも)ったので、
「あんた、その人(ひと)を見(み)たの?」と、子供(こども)の一人(ひとり)にききました。
「見(み)たよ。はんてん着(ぎ)でみじかいズボンをはいて、黒(くろ)いぼうしをかぶっていたよ。」と、その子供(こども)はいいました。
「まあ! その男(おとこ)は死(し)んでしまっていたの?」
 おはるは、たしかにさっきの男(おとこ)であるとわかると、きゅうに頭(あたま)の中(なか)が、かわいそうな気(き)もちでいっぱいになりました。
「さむいのになにもたべないので、おなかがすいてたおれたんだって、巡査(おまわり)さんがいっていたよ。だから、死(し)にはしないだろう。」と、その子供(こども)はこたえました。
「どこへつれていかれたの?」
「さあ、どこだか。」
 子供(こども)たちはすぐにそんなことはわすれてしまったように、たこをあげたり鬼(おに)ごっこをしたりしていました。
 おはるは、用事(ようじ)をすまして、おうちへかえると、自分(じぶん)がしまっておいたお給金(きゅうきん)の中(なか)から、五十銭(せん)銀貨(ぎんか)を一枚(まい)とりだしました。そして、紙(かみ)につつんで交番(こうばん)の巡査(おまわり)さんのところへもっていきました。
「どうかこれを、公園(こうえん)でたおれたきのどくな人(ひと)にあげてください。」といって、さしだしました。
 巡査(おまわり)さんはふしぎそうにおはるの顔(かお)を見(み)ていましたが、おはるが今朝(けさ)からの話(はなし)をしてきのどくでならないからといいますと、巡査(おまわり)さんもうなずきながら、
「感心(かんしん)なお志(こころざし)です。たしかにとどけてあげます。どんなに喜(よろこ)ぶかしれませんよ。」といって、こころよくひきうけてくださいました。

 

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