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ある夜の星たちの話(2)

时间: 2022-10-14    进入日语论坛
核心提示:「そうです、汽車(きしゃ)が、通(とお)っています。町(まち)からさびしい野原(のはら)へ、野原(のはら)から山(やま)の間(あいだ)
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「そうです、汽車(きしゃ)が、通(とお)っています。町(まち)からさびしい野原(のはら)へ、野原(のはら)から山(やま)の間(あいだ)を、休(やす)まずに通(とお)っています。その中(なか)に乗(の)っている乗客(じょうきゃく)は、たいてい遠(とお)いところへ旅(たび)をする人々(ひとびと)でした。この人(ひと)たちは、みんな疲(つか)れて居眠(いねむ)りをしています。けれど、汽車(きしゃ)だけは休(やす)まずに走(はし)りつづけています。」と、下界(げかい)のようすをくわしく知(し)っている星(ほし)は答(こた)えました。
「よく、そう体(からだ)が疲(つか)れずに、汽車(きしゃ)は走(はし)れたものだな。」と、運命(うんめい)の星(ほし)は、頭(あたま)をかしげました。
「その体(からだ)が、堅(かた)い鉄(てつ)で造(つく)られていますから、さまで応(こた)えないのです。」と、やさしい星(ほし)がいいました。
 これを聞(き)くと、運命(うんめい)の星(ほし)は、身動(みうご)きをしました。そして、怖(おそ)ろしくすごい光(ひかり)を発(はっ)しました。なにか、自分(じぶん)の気(き)にいらぬことがあったからです。
「そんなに堅固(けんご)な、身(み)のほどの知(し)らない、鉄(てつ)というものが、この宇宙(うちゅう)に存在(そんざい)するのか? 俺(おれ)は、そのことをすこしも知(し)らなかった。」と、盲目(めくら)の星(ほし)はいいました。
 鉄(てつ)という、堅固(けんご)なものが存在(そんざい)して、自分(じぶん)に反抗(はんこう)するように考(かんが)えたからです。
 このとき、やさしい星(ほし)はいいました。
「すべてのものの運命(うんめい)をつかさどっているあなたに、なんで汽車(きしゃ)が反抗(はんこう)できますものですか。汽車(きしゃ)や、線路(せんろ)は、鉄(てつ)で造(つく)られてはいますが、その月日(つきひ)のたつうちにはいつかはしらず、磨滅(まめつ)してしまうのです。みんな、あなたに征服(せいふく)されます。あなたをおそれないものはおそらく、この宇宙(うちゆう)に、ただの一つもありますまい。」
 これを聞(き)くと、運命(うんめい)の星(ほし)は、快(こころよ)げにほほえみました。そして、うなずいたのであります。
 また、しばらく時(とき)が過(す)ぎました。空(そら)に風(かぜ)が出(で)たようです。だんだん暁(あかつき)が近(ちか)づいてくることが知(し)れました。
 星(ほし)たちは、しばらく、みんな黙(だま)っていましたが、このとき、ある星(ほし)が、
「もう、ほかに変(か)わったことがないか。」といいました。
 ちょうど、このときまで、熱心(ねっしん)に下(した)の地球(ちきゅう)を見守(みまも)っていましたやさしい星(ほし)は、
「いま、二つの工場(こうじょう)の煙突(えんとつ)が、たがいに、どちらが毎日(まいにち)、早(はや)く鳴(な)るかといって、いい争(あらそ)っているのです。」といいました。
「それは、おもしろいことだ。煙突(えんとつ)がいい争(あらそ)っているのですか?」と、一つの星(ほし)は、たずねました。
 新開地(しんかいち)にできた工場(こうじょう)が、並(なら)び合(あ)って二つありました。一つの工場(こうじょう)は紡績工場(ぼうせきこうじょう)でありました。そして一つの工場(こうじょう)は、製紙工場(せいしこうじょう)でありました。毎朝(まいあさ)、五時(じ)に汽笛(きてき)が鳴(な)るのですが、いつもこの二つは前後(ぜんご)して、同(おな)じ時刻(じこく)に鳴(な)るのでした。
 二つの工場(こうじょう)の屋根(やね)には、おのおの高(たか)い煙突(えんとつ)が立(た)っていました。星晴(ほしば)れのした寒(さむ)い空(そら)に、二つは高(たか)く頭(あたま)をもたげていましたが、この朝(あさ)、昨日(きのう)どちらの工場(こうじょう)の汽笛(きてき)が早(はや)く鳴(な)ったかということについて、議論(ぎろん)をしました。
「こちらの工場(こうじょう)の汽笛(きてき)が早(はや)く鳴(な)った。」と、製紙工場(せいしこうじょう)の煙突(えんとつ)は、いいました。
「いや、私(わたし)のほうの工場(こうじょう)の汽笛(きてき)が早(はや)かった。」と、紡績工場(ぼうせきこうじょう)の煙突(えんとつ)はいいました。
 結局(けっきょく)、この争(あらそ)いは、果(は)てしがつかなかったのです。
「今日(きょう)は、どちらが早(はや)いかよく気(き)をつけていろ!」と、製紙工場(せいしこうじょう)の煙突(えんとつ)は、怒(おこ)って、紡績工場(ぼうせきこうじょう)の煙突(えんとつ)に対(むか)っていいました。
「おまえも、よく気(き)をつけていろ! しかし、二人(ふたり)では、この裁判(さいばん)はだめだ。だれか、たしかな証人(しょうにん)がなくては、やはり、いい争(あらそ)いができて同(おな)じことだろう。」と、紡績工場(ぼうせきこうじょう)の煙突(えんとつ)はいいました。
「それも、そうだ。」
 こういって、二つの煙突(えんとつ)が話(はな)し合(あ)っていることを、空(そら)のやさしい星(ほし)は、すべて聞(き)いていたのであります。
「二つの煙突(えんとつ)が、どちらの工場(こうじょう)の汽笛(きてき)が早(はや)いか、だれか、裁判(さいばん)するものをほしがっています。」と、やさしい星(ほし)は、みんなに向(む)かっていいました。
「だれか、工場(こうじょう)のあたりに、それを裁判(さいばん)してやるようなものはないのか。」と、一つの星(ほし)がいいました。
 すると、あちらの方(ほう)から、
「この寒(さむ)い朝(あさ)、そんなに早(はや)くから起(お)きるものはないだろう。みんな床(とこ)の中(なか)に、もぐり込(こ)んでいて、そんな汽笛(きてき)の音(おと)に注意(ちゅうい)をするものはない。それを注意(ちゅうい)するのは、貧(まず)しい家(いえ)に生(う)まれて親(おや)の手助(てだす)けをするために、早(はや)くから工場(こうじょう)へいって働(はたら)くような子供(こども)らばかりだ。」といった星(ほし)がありました。
「そうです。あの貧(まず)しい家(いえ)の二人(ふたり)の子供(こども)も、もう床(とこ)の中(なか)で目(め)をさましています。」と、やさしい星(ほし)はいいました。
 それから後(のち)も、やさしい星(ほし)だけは、下(した)の世界(せかい)をじっと見守(みまも)っていました。
 姉(あね)も、弟(おとうと)も、床(とこ)の中(なか)で目(め)をさましていたのです。
「もうじき、夜(よ)が明(あ)けますね。」と、弟(おとうと)は、姉(あね)の方(ほう)を向(む)いていいました。
 また、今日(きょう)も電車(でんしゃ)の停留場(ていりゅうじょう)へいって、新聞(しんぶん)を売(う)らねばならないのです。弟(おとうと)は昨夜(ゆうべ)、犬(いぬ)に追(お)いかけられた夢(ゆめ)を思(おも)い出(だ)していました。
「いま、じきに、製紙工場(せいしこうじょう)か、紡績工場(ぼうせきこうじょう)かの汽笛(きてき)が鳴(な)ると、五時(じ)なんだから、それが鳴(な)ったら、お起(お)きなさいよ。姉(ねえ)さんは、もう起(お)きてご飯(はん)の支度(したく)をするから。」と、姉(あね)はいいました。
 このとき、すでに母親(ははおや)は起(お)きていました。そして、姉(ねえ)さんのほうが起(お)きて、お勝手(かって)もとへくると、
「今日(きょう)は、たいへんに寒(さむ)いから、もっと床(とこ)の中(なか)にもぐっておいで。いまお母(かあ)さんが、ご飯(はん)の支度(したく)して、できたら呼(よ)ぶから、それまで休(やす)んでおいでなさい。まだ、工場(こうじょう)の汽笛(きてき)が鳴(な)らないのですよ。」と、お母(かあ)さんはいわれました。
「お母(かあ)さん、赤(あか)ちゃんは、よく眠(ねむ)っていますのね。」と、姉(あね)はいいました。
「寒(さむ)いから、泣(な)くんですよ。いまやっと眠入(ねい)ったのです。」と、お母(かあ)さんは、答(こた)えました。
 姉(ねえ)さんのほうは、もう床(とこ)にはいりませんでした。そして、お母(かあ)さんのすることをてつだいました。
 地(ち)の上(うえ)は、真(ま)っ白(しろ)に霜(しも)にとざされていました。けれど、もうそこここに、人(ひと)の動(うご)く気(き)がしたり、物音(ものおと)がしはじめました。星(ほし)の光(ひかり)は、だんだんと減(へ)ってゆきました。そして、太陽(たいよう)が顔(かお)を出(だ)すには、まだすこし早(はや)かったのです。

 

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