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いちょうの葉

时间: 2022-10-14    进入日语论坛
核心提示:いちょうの葉小川未明 幸(こう)ちゃんと、清(きよ)ちゃんは、二つちがいでしたが、毎日(まいにち)仲(なか)よく学校(がっこう)へ
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いちょうの葉

小川未明


 幸(こう)ちゃんと、清(きよ)ちゃんは、二つちがいでしたが、毎日(まいにち)仲(なか)よく学校(がっこう)へゆきました。いつも幸(こう)ちゃんが迎(むか)えにきたのです。
「もう、幸(こう)ちゃんが、迎(むか)えにくる時分(じぶん)だから。」と、清(きよ)ちゃんは、早(はや)くご飯(はん)を食(た)べて、机(つくえ)の上(うえ)の本(ほん)や、筆入(ふでい)れをランドセルに入(い)れました。すると、
「清(きよ)ちゃん。」と、いって、はたして、幸(こう)ちゃんが、迎(むか)えにきました。
「いますぐ、待(ま)っていてね。」と、いうより早(はや)く、清(きよ)ちゃんは、家(いえ)から駆(か)け出(だ)して、二人(ふたり)は、話(はな)しながら、学校(がっこう)へいったのであります。
 ある日(ひ)、いつも幸(こう)ちゃんがくる時分(じぶん)なのに、どうしたのか、こなかったから、清(きよ)ちゃんはこちらから、幸(こう)ちゃんの家(うち)へ迎(むか)えにゆきました。すると、幸(こう)ちゃんは、かぜをひいて、昨夜(さくや)から熱(ねつ)が高(たか)くて、床(とこ)についているのでした。
「じきなおりますから迎(むか)えにきてくださいね。」と、幸(こう)ちゃんのお母(かあ)さんはおっしゃいました。
 清(きよ)ちゃんは、独(ひと)りさびしく学校(がっこう)へいったのです。しかし幸(こう)ちゃんのことが気(き)にかかって、いつものように、なにをして遊(あそ)んでも、愉快(ゆかい)になりませんでした。
 いつもなら、帰(かえ)りにも待(ま)ち合(あ)わせて幸(こう)ちゃんといっしょにお家(うち)へ帰(かえ)ったのですけど、その日(ひ)ばかりはさびしく一人(ひとり)で帰(かえ)らなければなりませんでした。
 お寺(てら)の前(まえ)を通(とお)ると、大(おお)きないちょうの木(き)の葉(は)が黄色(きいろ)に色(いろ)づいて、風(かぜ)の吹(ふ)くたびにひらひらと舞(ま)って落(お)ちてきました。清(きよ)ちゃんは、一人(ひとり)で門(もん)から入(はい)って、落(お)ちている美(うつく)しい葉(は)を拾(ひろ)いますと、それにまじって、いちょうの実(み)も落(お)ちていました。
「あ、これも拾(ひろ)っていって、幸(こう)ちゃんにあげよう。」と、いって、清(きよ)ちゃんは、拾(ひろ)いました。そして、お家(うち)へ帰(かえ)ると、さっそく、幸(こう)ちゃんのところへ持(も)ってゆきました。これを見(み)て、幸(こう)ちゃんは、どんなに喜(よろこ)んだでありましょう。
「僕(ぼく)、お薬(くすり)を飲(の)んだら、熱(ねつ)が下(さ)がったのだよ。明日(あす)から、また、学校(がっこう)へいっしょにゆこうね。」といいました。
「そうしたら、また、帰(かえ)りにお寺(てら)の中(なか)へ入(はい)ってみようよ。」と、清(きよ)ちゃんは、いって、二人(ふたり)で、いちょうの実(み)や、それから、裏(うら)の林(はやし)の中(なか)に入(はい)ってくりの実(み)を拾(ひろ)ったらどんなにおもしろかろうと考(かんが)えたのです。
「風(かぜ)が吹(ふ)かないから、明日(あす)は、落(お)ちていないかもしれない。」と、幸(こう)ちゃんがいいました。
「風(かぜ)が吹(ふ)かなくても、落(お)ちているよ。」と、清(きよ)ちゃんは、このごろ、木(き)の実(み)がよく熟(じゅく)して、ひとりでに落(お)ちるのを知(し)っていました。それに、あの村(むら)はずれのお寺(てら)は、荒(あ)れはててだれも境内(けいだい)を掃(は)くものがなければ、一日(にち)じゅう、御堂(おどう)の戸(と)が閉(し)まっていることを思(おも)ったのでありました。
「じゃ、帰(かえ)りに、いっしょにいって探(さが)そうね。」と、二人(ふたり)は、お約束(やくそく)をしました。
 こんなように、小学校(しょうがっこう)時分(じぶん)の二人(ふたり)は、楽(たの)しかったのです。そのうち幸(こう)ちゃんは、学校(がっこう)を卒業(そつぎょう)しました。それから、まもなく、奉公(ほうこう)に都会(とかい)へ出(で)てしまいました。学校(がっこう)へゆくにも、帰(かえ)るにも、一人(ひとり)となった清(きよ)ちゃんは、さびしかったのです。そのうち夏(なつ)も過(す)ぎて、また木(き)の葉(は)の色(いろ)づく秋(あき)がきました。
「いつか、幸(こう)ちゃんが、かぜをひいて休(やす)んだとき、僕(ぼく)、学校(がっこう)の帰(かえ)りに、いちょうの葉(は)を拾(ひろ)っていったことがあったがなあ。」と、清(きよ)ちゃんは、思(おも)い出(だ)したのであります。あのときは、たった一日(にち)、一人(ひとり)でいってさえ悲(かな)しかったのにいまは、いつまたあうことができるかわからないのだと思(おも)いました。ある日(ひ)清(きよ)ちゃんは、学校(がっこう)からの帰(かえ)りにお寺(てら)の前(まえ)を通(とお)ると、いちょうの葉(は)がたくさん落(お)ちていました。そして、寺(てら)は、昔(むかし)そのままにひっそりとして人(ひと)の姿(すがた)も見(み)えなければ、ただ、林(はやし)の中(なか)で、小鳥(ことり)が鳴(な)いていました。清(きよ)ちゃんは、門(もん)を入(はい)って大(おお)きないちょうの木(き)の下(した)で、落(お)ち葉(ば)を拾(ひろ)って、お家(うち)へ帰(かえ)ると、それを入(い)れて、幸(こう)ちゃんのところへ、手紙(てがみ)を出(だ)しました。
「幸(こう)ちゃん、ご健康(けんこう)で働(はたら)いていますか、村(むら)のお寺(てら)のいちょうの木(き)の葉(は)が、はや、こんなに色(いろ)づきました。いつか、君(きみ)といっしょに拾(ひろ)って、楽(たの)しかった日(ひ)のことを僕(ぼく)は、ここを通(とお)るたびに思(おも)い出(だ)しています。」と、その手紙(てがみ)には、書(か)いてありました。すると、幸(こう)ちゃんからもじきに返事(へんじ)がきました。それは美(うつく)しい、町(まち)の絵(え)はがきに、
「清(きよ)ちゃんも、お達者(たっしゃ)でなによりです。私(わたし)は、変(か)わりなく働(はたら)いていますから、ご安心(あんしん)してください。このごろ、毎晩(まいばん)、田舎(いなか)の夢(ゆめ)を見(み)ます。昨夜(さくや)も清(きよ)ちゃんと遊(あそ)んだ夢(ゆめ)を見(み)ました。」と、書(か)いてありました。

 

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