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馬を殺したからす(2)

时间: 2022-10-17    进入日语论坛
核心提示: しかし、いくら同(おな)じように黒(くろ)っぽくても、からすとはととは、ちょっと見(み)てもよくわかります。子供(こども)らは
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 しかし、いくら同(おな)じように黒(くろ)っぽくても、からすとはととは、ちょっと見(み)てもよくわかります。子供(こども)らは、からすを見(み)つけると、石(いし)を拾(ひろ)っていっせいに投(な)げつけました。
 いろいろのことを思(おも)って、茫然(ぼうぜん)としていましたからすは、不意(ふい)に石(いし)が飛(と)んできたので、びっくりして立(た)ち上(あ)がりました。そして、木(き)の枝(えだ)に止(と)まって下(した)をながめますと、子供(こども)らは、なお自分(じぶん)を目(め)がけて石(いし)を投(な)げるのであります。
 からすはしかたなく、その社(やしろ)の境内(けいだい)から逃(に)げ出(だ)しました。けれど、どこへいっても、自分(じぶん)を仲間(なかま)に入(い)れてくれるはとの群(む)れはありませんでした。そして、人間(にんげん)に見(み)つけられると憎(にく)まれ、また追(お)われました。ちょうどそのことは里(さと)にいたときも同(おな)じことです。むしろかえって、都(みやこ)のほうがいっそうひどいように思(おも)われました。
 からすは、はとの仲間入(なかまい)りすることは断念(だんねん)しましたが、都(みやこ)の空(そら)は煙(けむり)でいつも濁(にご)っていて、それに、餌(え)を探(さが)すようなごみためがいたって少(すく)ないので、そこにいる間(あいだ)は餓(う)えを忍(しの)んでいなければなりませんでした。からすは、この都(みやこ)がちっとも自分(じぶん)にとって、いいところではありませんでした。
「こんなことになるのも、みんなかもめのいったことを信(しん)じたからだ。」と、彼(かれ)は、かもめをうらみました。
 しかたなしにからすは、ふたたび、自分(じぶん)の産(う)まれた里(さと)を指(さ)して帰(かえ)ってゆきました。こんなことがあってから、このからすは、ひとをおだてたり、うそをいって困(こま)らせたりすることを喜(よろこ)ぶようになりました。それもまったくかもめの言葉(ことば)を信(しん)じて、とんだめにあった復讐(ふくしゅう)を他(た)に向(む)かってしたのでございます。
 ある日(ひ)、からすは田(た)の上(うえ)や、圃(はたけ)の上(うえ)を飛(と)んで田舎路(いなかみち)をきかかりますと、並木(なみき)に牛(うし)がつながれていました。その体(からだ)は黒(くろ)と白(しろ)の斑(ぶち)でありました。そして、脊(せ)に重(おも)い荷(に)をしょっていました。これを見(み)ると、さっそく、からすはその木(き)の枝(えだ)に止(と)まりました。そして、下(した)を見(み)おろしながら、
「牛(うし)さん、牛(うし)さん、主人(しゅじん)はどこへいった。」と聞(き)きました。
 牛(うし)は、穏(おだ)やかな大(おお)きな目(め)をみはって、遠方(えんぽう)の日(ひ)の光(ひかり)に照(て)らされて暑(あつ)そうな景色(けしき)を見(み)ていましたが、からすが頭(あたま)の上(うえ)でこう問(と)いますと、
「俺(おれ)の主人(しゅじん)は、あちらの茶屋(ちゃや)で昼寝(ひるね)をしているのだ。」と答(こた)えました。
 これを聞(き)くとからすは、
「なんて人間(にんげん)というやつは自分(じぶん)かってなんだ。おまえさんなぞは、人間(にんげん)の幾倍(いくばい)となく力(ちから)が強(つよ)いじゃないか。なぜこんな綱(つな)なんか断(た)ち切(き)ってしまって、山(やま)の中(なか)へ逃(に)げていかないのだね。山(やま)の中(なか)へ入(はい)りゃ、草(くさ)もあるし、水(みず)もあるし、木(き)の実(み)もあるし、遊(あそ)んでいて楽(らく)に暮(く)らしてゆけるじゃないか。そして、獣物(けもの)の王(おう)さまにならないともかぎらないじゃないか。」と、おだてました。
 牛(うし)は黙(だま)って、からすのいうことを聞(き)いていましたが、なんとなくそれを信(しん)じることができませんでした。
「いったい、そんなことができるだろうか。」といいました。
「なんでできないことがあるものか、おまえさんたちは臆病(おくびょう)なんだ。」と、からすはいいました。
「先祖代々(せんぞだいだい)から、まだそんな乱暴(らんぼう)なことをしたものを聞(き)かない。」と、牛(うし)は答(こた)えました。
「やればできたんだが、みなおまえさんのような弱虫(よわむし)ばかりだ。」と、からすはいいました。
 人(ひと)のいい牛(うし)も、ついに腹(はら)を立(た)てずにはいられませんでした。
「小(ちい)さな癖(くせ)に、なまいきをいうな。」と、上(うえ)を向(む)いて太(ふと)い鼻息(はないき)を吹(ふ)きかけますと、からすはびっくりして、
「ばか、ばか。」と、悪口(あっこう)をいって逃(に)げ去(さ)ってしまいました。
 からすは、ついに牛(うし)をおだてそこないました。そして野(の)や、圃(はたけ)の上(うえ)を飛(と)んできますと、今度(こんど)は一ぴきの馬(うま)が並木(なみき)につながれていました。その馬(うま)は脊(せい)の高(たか)い、まだ年若(としわか)い赤毛(あかげ)の馬(うま)であります。からすはさっそく、その木(き)のいちばん下(した)の枝(えだ)に止(と)まりました。馬(うま)は、足(あし)もとの草(くさ)を食(た)べていました。
「お馬(うま)さん、お馬(うま)さん、あなたがほんとうにかけ出(だ)したら、どんなに疾(はや)いでしょうね。私(わたし)はあなたのようなりっぱなお馬(うま)さんが、こうして綱(つな)で縛(しば)られているのが不思議(ふしぎ)でならないのですよ。なぜこんなところにまごまごして、朝(あさ)から晩(ばん)まで重(おも)い荷(に)をしょわされていなければならないんですか。」と、からすがいいました。
「おまえはだれかと思(おも)ったらからすか、よく俺(おれ)の足(あし)が疾(はや)いことを知(し)っているな。ほんとうにかけ出(だ)したら、どんなものでも追(お)いつけるものでない。けれど逃(に)げ出(だ)したって、いきどころがないじゃないか、それとも、どこかいいところがあるというのか。」と、若(わか)い馬(うま)は問(と)い返(かえ)しました。
「それはありますよ。だれも束縛(そくばく)するようなもののいない、そして、暗(くら)い夜(よる)というようなものもない、まったく自由(じゆう)で、一日(にち)明(あか)るい昼(ひる)ばかりのよい国(くに)がありますよ。」
「それは、いったいどこだ。」
「それですか、西(にし)の紅(あか)い夕焼(ゆうや)けのする国(くに)です。毎日(まいにち)、あなたはその方(ほう)を見(み)るでしょう。いつもその方(ほう)を見(み)ると、愉快(ゆかい)にはなりませんか。」と、からすはいいました。
「愉快(ゆかい)になるよ。俺(おれ)は夕焼(ゆうや)けの方(ほう)を見(み)るのが大好(だいす)きだ。けれど、そんないい国(くに)があるなどとは知(し)らなかった。おまえは、ほんとうにいって見(み)てきたのか。」
「私(わたし)は、太陽(たいよう)の近(ちか)くまでいって見(み)てきました。」と、からすはいいました。
「太陽(たいよう)の近(ちか)くへ? 真紅(まっか)だろうな。しかしおまえは翼(つばさ)があるからゆける、俺(おれ)には翼(つばさ)がない。」と、馬(うま)は悲(かな)しそうに答(こた)えました。
「そのかわり、疾(はや)い脚(あし)があるじゃありませんか。どんなところでも、あなたなら飛(と)び越(こ)せないことはありません。」と、からすはいいました。
「たいていのところなら飛(と)び越(こ)せるつもりだ。」と、馬(うま)は答(こた)えて、しばらく考(かんが)えていました。
 からすは、今度(こんど)はうまくやったなと、高(たか)いところへ飛(と)んでいって、じっと馬(うま)のすることを見(み)ていました。すると、馬(うま)は不意(ふい)にはねだしました。そして脊中(せなか)に積(つ)んであった荷物(にもつ)をみんな落(お)として、綱(つな)を切(き)り放(はな)って、野(の)となく林(はやし)となくかけてゆきました。からすは、馬(うま)がしまいにどうするか空(そら)を飛(と)んで従(つ)いてゆきました。馬(うま)はついに林(はやし)や、野(の)や、おかを越(こ)えて、海(うみ)の辺(ほと)りに出(で)てしまいました。日(ひ)はようやく暮(く)れかかって、海(うみ)のかなたは紅(あか)く、夕焼(ゆうや)けがしていました。馬(うま)はじっとその方(ほう)を見(み)て、かなたの国(くに)にあこがれながらも、どうすることもできませんでした。
「やってみろ! おまえならこの海(うみ)を飛(と)び越(こ)せるだろう。」と、このとき、空(そら)でからすがいいました。
 馬(うま)は、ほんとうにそうかと思(おも)いました。そして、一思(ひとおも)いに海(うみ)を飛(と)び越(こ)そうとはね上(あ)がりました。けれど、二間(けん)とは飛(と)べず、海(うみ)の中(なか)に落(お)ちて死(し)んでしまいました。これを見(み)たからすは、
「あほう、あほう。」といいながら、飛(と)んでいってしまいました。
 その年(とし)の暮(く)れ、大雪(おおゆき)が降(ふ)って寒(さむ)い晩(ばん)に、からすは一つの厩(うまや)を見(み)つけて、その戸口(とぐち)にきて、うす暗(ぐら)い内(うち)をうかがい、一夜(や)の宿(やど)を求(もと)めようと入(はい)りました。するとそこには白(しろ)と黒(くろ)のぶちの肥(ふと)った牛(うし)がねていました。
「おまえは、いつかのからすじゃないか。あのとき、おまえのおだてにのって山(やま)の中(なか)へ入(はい)ってみろ、この大雪(おおゆき)に、どうして安(やす)らかにねることができるか。おまえのようなうそつきには、宿(やど)を貸(か)してやることはできない。」と、牛(うし)は追(お)いたてました。
 からすは、大雪(おおゆき)の中(なか)をあてもなく、そこから立(た)ち去(さ)ったのであります。

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