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台風の子(2)

时间: 2022-11-18    进入日语论坛
核心提示:いつであったか、源吉げんきちと龍夫たつおの二人ふたりが、豪雨ごううの後あとのこと、いまにもギイギイと鳴なって、水勢すいせ
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いつであったか、源吉げんきちと龍夫たつおの二人ふたりが、豪雨ごううの後あとのこと、いまにもギイギイと鳴なって、水勢すいせいのために押おし流ながされそうな橋はしのたもとで、水面すいめんを見みつめていると、いくつも赤あかいトマトが浮うきつ沈しずみつしてきました。二人ふたりは、このダンスでもするように、おもしろそうに流ながれていく、トマトに気きを取とられていると、こんどは人間にんげんの頭あたまほどのかぼちゃが流ながれてきました。つづいて見当けんとうのつかぬ妙みょうなものが……それは、近ちかづくと大おおきな竹たけかごだとわかったのでした。
「おや、どこかの八百屋やおやから流ながれてきたんだよ。」
「きっと、川かわぶちの八百屋やおやに水みずが上あがったんだ。」
そのうちにこんどは、おけが流ながれてきました。いったいどこの町まちの八百屋やおやだろうと思おもっていると、あちらから、自転車じてんしゃに乗のって、八百屋やおやの主人しゅじんらしい男おとこが、なにか叫さけびながら、おけを拾ひろおうとして、追おいかけてきました。けれど橋はしのところまでくると立たち止どまって、ただ見みているだけで、どうすることもできなかったのです。

「釣つり堀ぼりの金魚きんぎょやこいが流ながされたろう。水みずが引ひいたら田圃たんぼへいってみようよ。」
龍夫たつおは、急きゅうに楽たのしそうに、いいました。そして、
「また、台風たいふうがこないかな。」といいました。
「昨日きのう、きたばかりじゃないか。」
「すぐ後あとへ台風たいふうの卵たまごができたって。」
「君きみ、そんなに台風たいふうが好すきかい。」
「僕ぼくのお父とうさんがくるんだもの、昨夜ゆうべも、いまごろお父とうさんが、お通とおりだといって、お母かあさんは、お仏壇ぶつだんに燈火あかりをあげられた。僕ぼくも、死しんだら台風たいふうになるよ。」
「君きみ、そうしたら、僕ぼくの家いえの頭あたまの上うえを通とおるだろう。」
「ああ、きっと通とおるよ。そのときは、君きみ、見みておいで!」
「あはは……。」と、二人ふたりは、声こえをたてて笑わらいました。
そんな冗談じょうだんをいった龍夫たつおは、その年としの秋あきの末すえ、寒さむくなろうとするおり、急性肺炎きゅうせいはいえんにかかって、ほんとうに死しんでしまいました。
一年ねんは、刻々こくこくと時計とけいの針はりの進すすむごとく、また、いつしか季節きせつがめぐってきた。
ラジオは、天気予報てんきよほうの時間じかんに、台風たいふうの近ちかづいたことを警告けいこくしていました。源吉げんきちは、龍夫たつおのいた時分じぶんのことを思おもい出だした。なんで彼かれのいったことを忘わすれよう。
前まえぶれとして、いつものごとく、驟雨しゅううがやってきました。それは、銀ぎんの細引ほそびきのように太ふとい雨あめが降ふり注そそぎました。破やぶれたといからは、滝津瀬たきつせと水みずが落おちました。屋根やねの上うえは風かぜのためにしぶきをあげているし、木々きぎの大枝おおえだがもまれにもまれています。
「愉快ゆかいだな。」
源吉げんきちは、じっとしていられなくなって、小降こぶりになるのを待まち、雨あまマントをかぶって外そとへ出でました。
「川かわの水みずが、去年きょねんのようにいっぱいになったろう。」
彼かれは、龍夫たつおといっしょに立たってながめた、橋はしの方ほうへいこうとしました。ちょうど役所やくしょの退ひけごろで、雨あめの中なかを人々ひとびとが往来おうらいしています。しかし老人ろうじんの顔かおは、たいてい曇くもっていました。
「また出水しゅっすいするだろう、それで、床板ゆかいたをぬらすし、病気びょうきは出でるし、作物さくもつにはよくないだろう。」
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