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高い木と子供の話(1)

时间: 2022-11-18    进入日语论坛
核心提示:高い木と子供の話小川未明一善吉ぜんきちは、ほかの子供こどものように、学校がっこうから家いえに帰かえっても、すぐにかばんを
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高い木と子供の話

小川未明

一


善吉ぜんきちは、ほかの子供こどものように、学校がっこうから家いえに帰かえっても、すぐにかばんをほうり出だして、外そとへいって、友ともだちと自由じゆうに飛とびまわって遊あそぶことはできませんでした。仕事しごとのてつだいをさせられるか、弟おとうとを脊中せなかにおぶって、守もりをさせられたからであります。彼かれと同おなじ年としごろの子供こどもたちが、土手どてへはい上あがったり、茶ちゃの木きの蔭かげにかくれたり、みぞをおもしろそうに飛とび越こすのなどを、そばでぼんやりとながめながら、
「おれも、あんなようにして遊あそびたいものだな。」と、心こころのうちで思おもっていました。
彼かれは、どうかして、学校がっこうから帰かえったら、うまく、逃にげ出だしたいものだと考かんがえていました。しかし、家うちのものに気きづかれずに、外そとへいってみんなといっしょに遊あそぶことができたにしても、それは、ほんのすこしの間あいだであって、すぐに、家うちへ呼よびもどされたのです。
「そう、親おやのいうことを聞きかぬようでは、どこかへやってしまうぞ。」
「だれが、ゆくものか。」
「いいや、やってしまう。おまえみたいな、いうことをきかぬ子こは、ほんとうは、うちの子こではないのだ。」
「そんなら、どこの子こだい。」
「どこの子こだか知しらないが、小ちいさなときに、かわいそうだと思おもって拾ひろってきて育そだてたのだ。」
母親ははおやは、むきになってしかりました。善吉ぜんきちはしまいにかなしくなって、しくしくと泣なき出だしました。そして、小ちいさな胸むねの中うちで、
「ほんとうに、おれは、ここの家うちに生うまれたのでなくて、拾ひろわれてきたのだろうか。」と、悲かなしかったのであります。
そのときは、母親ははおやのいうことを聞きいて、手助てだすけをしましたが、すぐにほかの子供こどもたちの楽たのしそうな呼よび声ごえや、笑わらい声ごえをききますと、広ひろい、自由じゆうの世界せかいが恋こいしくなりました。
あるとき、みんなで木登きのぼりをしたときに、善吉ぜんきちはだれよりも上手じょうずでありました。相撲すもうをとったり、走はしりっこをしたのでは、いつでもいちばんに上手じょうずだといわれなかったけれど、木登きのぼりにかけては、自分じぶんは、だれにも負まけないという自信じしんができました。
ほかのものが、怖おそろしがって、低ひくいところで、枝えだにつかまって、それから上うえへ登のぼり得えないのを見みると、自分じぶんは、ぐんぐん上うえへ、上うえへと登のぼっても、けっして、怖おそろしくないばかりか、ますます気持きもちがはればれしくなるのを知しると、なんともいえず、愉快ゆかいでたまりません。
「おうい、ここまで登のぼってくると、海うみが見みえるぞ!」と、善吉ぜんきちは、高たかいすぎの木きの、いちばん先さきの細ほそくなっているあたりまで登のぼって、下したに小ちいさくなってみえる友ともだちに向むかっていいました。
「善ぜんちゃん、ほんとうかい。ほんとうに、海うみが見みえるかい。」
「うそをいうものか。あっちには、町まちが見みえる……。いい景色けしきだなあ。」と、善吉ぜんきちは、木きの頂いただきに登のぼっていいました。
下したの子供こどもたちは、うらやましがって、上うえを仰あおいで口くちを開あけています。中途ちゅうとまで、登のぼったものも、いつか思おもいあきらめて、降おりてしまいました。
「善ぜんちゃん、おっこちたら、死しんでしまうよ。」と、自分じぶんはできなかったので、負まけ惜おしみに、善吉ぜんきちが早はやく降おりるように、そんなことをいっていました。
すると、善吉ぜんきちは、だれもできないことを、ひとりしているので、ますます得意とくいになって、
「海うみが、よく見みえるな。あ、汽車きしゃが通とおっている。ほら森もりに隠かくれた。あ、見みえた。あすこが停車場ていしゃばか。」と、いちいちいって、下したのものをうらやましがらしていました。
「早はやく、善ぜんちゃん降おりておいで、鬼おにごっこをしようや。」
こう下したから呼よぶと、善吉ぜんきちは、ゆうゆうと上うえから降おりてきました。そして、自分じぶんひとりだけしか知しらない、高たかい木きの上うえで見みた景色けしきをいろいろに物語ものがたったのです。
「善ぜんや、善吉ぜんきちや。」
あちらで、母親ははおやが呼よぶ声こえがしました。すると、善吉ぜんきちの、いままで輝かがやいていた顔かおが、たちまち曇くもりました。
「おら、うちへ帰かえって、子守こもりしなければ、しかられるから、鬼おにごっこをよしておこう……。」
こういって、名残なごり惜おしそうに帰かえってゆきました。

 

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