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高い木と子供の話(2)

时间: 2022-11-18    进入日语论坛
核心提示:二いつからともなく、善吉ぜんきちは、みんなから離はなれて、高たかい木きに登のぼって、ひとり、広々ひろびろとした景色けしき
(单词翻译:双击或拖选)
 

二


いつからともなく、善吉ぜんきちは、みんなから離はなれて、高たかい木きに登のぼって、ひとり、広々ひろびろとした景色けしきを見みて楽たのしむことを好このむようになりました。ほかの子供こどもたちは、善吉ぜんきちをさるとあだ名なづけたのです。彼かれは、ぞうりを草くさの中なかに隠かくして、高たかい木きに登のぼりさえすれば、いっさい、うるさい世よの中なかのことからはなれてしまえば、また、耳みみに聞きくこともなかったのでした。たとえ、母親ははおやが、いくら自分じぶんの名なを呼よびながら探さがしても、見みつかる気遣きづかいもなければ、だれだって、自分じぶんの姿すがたを探さがし出だすものはなかったのです。
「しっかり、枝えだに足あしをかけて、わき見みをしてはだめだ。そうだ、もう一段だん、もう一段だん……。」と、太陽たいようは、大空おおぞらから声こえをかけてくれて、にこやかに笑わらいながら、善吉ぜんきちの登のぼるのを見みていました。
「こんなに、よく遠とおく晴はれているが、おまえには海うみに浮うかんでいる白帆しらほの影かげは、見みえなかろう……。」と、やさしい風かぜは、やわらかに吹ふいて、善吉ぜんきちのほおをなでてゆきました。やっと、しなしなしなう頂いただきまで登のぼって顔かおを出だすと、
「おまえは、まるで鳥とりのようだな。」と、太陽たいようは、円まるい顔かおで、あきれるように、口くちを開あけていいました。
「その枝えだは、あぶない。その下したの枝えだに足あしをかけて、この枝えだにしっかりつかまっていればだいじょうぶだから。」と、風かぜは、しんせつに、善吉ぜんきちに注意ちゅういしてくれました。
彼かれは、いつまでも、こうして、ここで、広々ひろびろとした景色けしきをながめて、空想くうそうにふけっていたかった。脊中せなかに子供こどもをおぶわされては、飛とびまわることもできず、暗くらくなるまで子守こもりをするのは、いやであった。それをいやといえば、母親ははおやにしかられる。「どこかへやってしまうぞ。おまえは、ほんとうは、家うちの子こでない、捨すててあったのをかわいそうに思おもって、拾ひろってきて育そだてたのだ。」いつもこんなにいわれる。はたして、自分じぶんは、捨すて子ごだったろうか。ほんとうのお母かあさんは、ほかにいるのだろうか? 木きの上うえで、彼かれはいろんな空想くうそうにふける。
☆石竹色せきちくいろの雲くもが、鏡かがみのような北きたの空そらに、あらわれたかと思おもうと、それが天使てんしの舞まっている姿すがたとなり、やがて、小ちいさくなって、鳥とりのようになり、そして、消きえてしまった。
「お母かあさん!」
善吉ぜんきちは、目めに、いっぱい涙なみだをためて、ほんとうのお母かあさんを呼よんだのでした。いつも、高たかい木きに登のぼって、遠とおく見みるたびに、ほんとうのやさしいお母かあさんが、どこか、美うつくしい町まちに住すんでいて、やはり、自分じぶんのことを思おもっているような気きがしたのであります。

 

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