返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 小川未明童話集 » 正文

谷にうたう女(1)

时间: 2022-11-18    进入日语论坛
核心提示:谷にうたう女小川未明くりの木きのこずえに残のこった一ひとひらの葉はが、北きたの海うみを見みながら、さびしい歌うたをうたっ
(单词翻译:双击或拖选)

谷にうたう女

小川未明


くりの木きのこずえに残のこった一ひとひらの葉はが、北きたの海うみを見みながら、さびしい歌うたをうたっていました。
おきぬは、四つになる長吉ちょうきちをつれて、山やまの畑はたけへ大根だいこんを抜ぬきにまいりました。やがて、冬ふゆがくるのです。白髪しらがのおばあさんが、糸いとをつむいでいるように、空そらでは、雲くもが切きれたり、またつながったりしていました。
下したの黒土くろつちには、黄きばんだ大根だいこんの葉はが、きれいに頭あたまを並ならべていました。おきぬは子供こどもがかぜぎみであることを知しっていました。持もってくるはずのねんねこを忘わすれてきたのに気きがついて、
「長吉ちょうきちや、ここに待まっておいで、母かあちゃんは、すぐ家うちへいってねんねこを持もってくるからな。どこへもいくでねえよ。」
子供こどもは、だまって、うなずきました。
おきぬは、ゆきかけて、またもどってきました。
「ほんとうに、どこへもいくでねえよ。そこにじっとして待まっていれや。」
そういって、彼女かのじょは、坂道さかみちを駈かけ下おりるようにして、急いそぎました。
あたりには人ひとの影かげもなかったのです。くりの木きのこずえについていた枯かれた葉はは、今夜こんやの命いのちも知しらぬげに、やはり、ひらひらとして、風かぜの吹ふくたびに歌うたをうたっていました。そしてふもとの水車場すいしゃばから、かすかに車くるまの音おとがきこえてきました。
すこしの間あいだが、小ちいさな長吉ちょうきちにとっては、堪たえられないほどの長ながい時間じかんでした。
「おっかあ。」といって、子供こどもは、母ははを呼よんで泣なき出だしました。
しかし、いくら呼よんでも、この子供こどもの声こえは、下したの村むらへは達たっしなかったでありましょう。
このとき、どこからか、笛ふえと太鼓たいこの音おとがきこえてきました。それは、村むらの祭まつりのときにしかきかなかったものです。山やまの林はやしに鳴なく、もずや、ひよどりでさえ、こんないい声こえは出だし得えなかったので、長吉ちょうきちは、ぼんやりと、その音おとのする方ほうを見みると、山やまへ登のぼってゆく道みちを、赤あかい旗はたを立たて、青あおい着物きものをきた人ひとたちが列れつをつくって歩あるいてゆきました。そして、その後あとから、にぎやかな子供こどもたちの話はなし声ごえなどがしてくるので、泣なくのを忘わすれて見みとれていると、葉はの落おちて、裸はだかとなった林はやしの間あいだから、その列れつがちらちらと見みえたのです。長吉ちょうきちは、いそいで、その後あとを追おいかけました。
二、三度ども彼かれはころんだけれど、泣なきもせずその後あとを追おいかけてゆきました。
空そらで、糸いとをつむいでいた、白髪しらがのおばあさんの姿すがたが見みえなくなって、風かぜが募つのってきました。おきぬが畑はたけにもどってきたときには、くりのこずえにしがみついて歌うたをうたっていた葉はが、くるくるとまわって、がけの底そこの方ほうへ落おちていったのです。
「長吉ちょうきちや、長吉ちょうきちや、長吉ちょうきちはどこへいったろう?」
彼女かのじょは、あらしのうちを、さがしまわりました。
山やまの上うえへとつづいている道みちは、かすかにくさむらの中なかに消きえていました。そして、山やまの頂いただきは灰色はいいろに曇くもって、雲脚くもあしが、速はやかったのです。
村むらじゅうが、大騒おおさわぎをして、長吉ちょうきちをさがしたけれど、ついにむだでありました。年寄としよりたちは、
「前まえにも一度どこういうことがあった。人ひとさらいにつれていかれたか、たぬきにでもばかされたのであろう。」と、囲炉裏いろりに粗朶そだをたきながら話はなししました。
それから、後のちのことです。村むらの人ひとたちは、髪かみを乱みだして、素足すあしでうたって歩あるくおきぬを見みました。
「ねんねん、ころころ、ねんねしな。
なかんで、いい子こだ、ねんねしな。」
子供こどもを失うしなった悲かなしみから、気きの狂くるったおきぬは、昼ひるとなく、夜よるとなく、こうしてうたいながら、村道むらみちを歩あるいて山やまの方ほうへとさまよっていました。
村むらにあられが降ふり、みぞれが降ふりました。そして、山やまに雪ゆきがくると、いろいろの小鳥ことりたちが、里さとを慕したって下おりるように、村むらの娘むすめたちもまた都会とかいを慕したったのです。おかよは、こうして彼女かのじょが十六のときに奉公ほうこうに出でました。
旅たびに立たつ前夜ぜんやのこと、うれしいやら、悲かなしいやらで、胸むねがいっぱいになって、戸との外そとにすさぶあらしの音おとをきいていると、ちょうどおきぬの前まえをうたって通とおる、子守唄こもりうたが、ちぎれちぎれに耳みみへ入はいったのでした。なんという、いじらしいことかと、彼女かのじょは少女心おとめごころにも深ふかく感かんじたのでありました。
月日つきひは、足音あしおとをたてずにすぎてゆきました。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: