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ちょうせんぶなと美しい小箱

时间: 2022-11-23    进入日语论坛
核心提示:ちょうせんぶなと美しい小箱小川未明正吉しょうきちくんは、はじめて小田おだくんの家うちへあそびにいって、ちょうせんぶなを見
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ちょうせんぶなと美しい小箱

小川未明


正吉しょうきちくんは、はじめて小田おだくんの家うちへあそびにいって、ちょうせんぶなを見みせてもらったので、たいそうめずらしく思おもいました。
「君きみ、この魚さかなはどこに売うっていたの?」
「このあいだ、おじいさんが売うりにきたのを買かったのだよ。」と、小田おだくんはいいました。
「こんどきたら、ぼくも買かおうかな。」と、正吉しょうきちくんは、あかずに、ちょうせんぶなのダンスをするのをながめていました。
「それよか君きみ、あしたいっしょに魚さかなつりにいこうね。」と、小田おだくんはいいました。
「ぼく待まっているから、君きみ、さそってくれたまえ。」
「ああ、お昼ひるすぎになったら、じきにいくからね。」
二人ふたりは、こうおやくそくをして、正吉しょうきちくんはやがてお家うちへかえっていきました。途中とちゅうに大おおきなかしの木きがありました。その下したで、金魚売きんぎょうりのおじいさんが休やすんでいました。
「あのおじいさんではないかしら。」と、正吉しょうきちくんは思おもいました。
ちかづいて、たずねました。
「おじいさん、ちょうせんぶなあるの?」
たばこを吸すっていたおじいさんはにこにこしながら、
「ええ、ありますよ。」と、答こたえました。
「いくらですか?」
「三匹びき十銭せんにおまけしておきますよ。」と、おじいさんはいいました。
それを聞きくと、正吉しょうきちくんは、お家うちへ走はしってかえってきました。
「お母かあさん、ちょうせんぶなを買かうのだからお金かねをちょうだい。」と、ねだりました。
「ちょうせんぶななんてあるのですかね。」と、お母かあさんはおっしゃいました。
「とてもおもしろいですよ。ちょうどあたりまえのふなみたいなかたちで、水みずの中なかを上うえへのぼったり、下したへおりたりして、かわいらしいのだから。」といって、小田おだくんのところで見みてきたちょうせんぶなの説明せつめいをいたしました。
そこへ、姉ねえさんのとき子こさんが出でてきて、この話はなしをききました。
「私わたしも知しっているわ。正しょうちゃんは、ちょうせんぶなを買かってきてどこへ入いれるつもり?」と、とき子こさんはききました。
「うちの水盤すいばんの中なかへ入いれるよ。入いれてもいいだろう?」と、正吉しょうきちくんは姉ねえさんの顔かおを見みました。
なぜなら、水盤すいばんは自分じぶんひとりのものではなくて、きょうだいたちみんなのものであったからです。
「いけないわ。ちょうせんぶななんか入いれては金魚きんぎょをみんな食くってしまうじゃないの。」と、とき子こさんは反対はんたいしました。
「金魚きんぎょなんか食たべるものか。」
「正しょうちゃんはまだ知しらないのよ。太田おおたさんのお家うちにもちょうせんぶながいたけれど、おなかがすくと、共食ともぐいをはじめて、強つよいちょうせんぶなが、ほかの弱よわいのをみんな食たべてしまったというのよ。」
「そして、どうしたの?」
「その強つよいのが、いつのまにかどこかへいってしまって、いなくなったというのよ。」
「ねこに食くわれたんだね。」
「羽はねがあるからとんでいったんだって、太田おおたさんがいっていたわ。」
こんな話はなしをきくと、正吉しょうきちくんは、なんだか自分じぶんにもいやな魚さかなのように思おもえたけれど、またそれだけかってみたいという気きもおこりました。
「ぼく、水盤すいばんに入いれなければいいだろう。ほかの入いれものに入いれておけばいい?」
「だって、そんないやな魚さかななんか、私わたし、かうのはきらいだわ。」と、とき子こ姉ねえさんは、正吉しょうきちくんのいうことに賛成さんせいしませんでした。
これをお聞ききになったお母かあさんは、
「おなかまを食たべてしまうようなお魚さかななんか、よしたほうがいいでしょう。」とおっしゃいました。
正吉しょうきちくんは金魚売きんぎょうりのおじいさんが、自分じぶんがひっかえしてくるかと思おもって、ゆるりゆるり歩あるいているすがたを思おもいうかべると、早はやくいってやりたいので、だだをこねました。
「正しょうちゃん、そのかわり姉ねえさんのだいじな、きりの小こばこをあげるわ。」と、とき子こさんがいいました。
「え、あの小こばこをくれるの?」
正吉しょうきちくんが目めをまるくしたのも道理どうりです。とき子こ姉ねえさんの持もっている美うつくしいきりの小こばこが、前まえから正吉しょうきちくんはほしくてならなかったのです。それで、これまでたびたびほしいといったのですけれど、姉ねえさんはくれなかったのでした。
「ほんとうに、くれるの?」と、正吉しょうきちくんは、念ねんをおしました。
「ええ、いやなちょうせんぶななんかかわなければね……。」と、とき子こ姉ねえさんはいったのであります。
「ぼく、小こばこをくれれば、ちょうせんぶななんか買かわないよ。」と、正吉しょうきちくんはやくそくをしました。
「正しょうちゃんは小こばこをなににするつもり?」
「ぼくのいちばんいいものを入いれるんだよ。」
「正しょうちゃんのいいものって、なあに?」
とき子こさんは自分じぶんのおへやから、だいじにしていた美うつくしい小こばこを持もってきて正吉しょうきちくんにくれました。
ところが、正吉しょうきちくんのるすのときでありました。お母かあさんが、
「なんだろうね、この茶ちゃだんすのあたりで、ガサガサいうのは?」と、おっしゃいました。
とき子こさんがわらいながら、
「昼間ひるまからねずみは出でませんから、なんでもないんでしょう。」と、いいました。
「いいえ、さっきからガサガサといっていますよ。」
そうお母かあさんにいわれてみると、とき子こさんも、さすがにうすきみ悪わるくなりましたが、なんでもないのだと思おもって茶ちゃだんすの上うえを見みたり、戸とをあけて中なかを見みたりしました。茶ちゃだんすの上うえには、自分じぶんがきのう弟おとうとにくれてやった美うつくしい小こばこがありました。
「ねえ、お母かあさん、正しょうちゃんが、なんかこのはこの中なかに入いれたのではないでしょうか?」
「さあ、あの子このことだからわかりませんよ。」
とき子こさんは小こばこを取とってふたをあけて見みますと、中なかからまっ黒くろな虫むしが出でてきました。
「かわいそうに、かぶとむしがはいっていますのよ。」
「まあ、そうなの!」
そのはこの中なかには白しろざとうが入いれてありました。
ちょうど、そこへ正吉しょうきちくんがかえってきて、お姉ねえさんにしかられると、
「だって、かぶとむしは、くらい地面じめんの穴あなの中なかにはいっているだろう。」と、答こたえました。
「じゃ、このはこは、かぶとむしのお家うちのつもり?」
「ぼく、かぶとむしが大だいすきだから、美うつくしい御殿ごてんにしてやったのだよ。」
「はこの中なかでは、息いきができないでしょう。かぶとむしには、このはこが御殿ごてんではなくて、牢屋ろうやなのよ。さっきから苦くるしそうにもがいていたわ。」と、お姉ねえさんがいいました。
「もがいていた?」と、正吉しょうきちくんは目めをみはりました。
そして、正吉しょうきちくんは、かぶとむしをにがしてやろうと、森もりの中なかへいきました。
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