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手風琴(2)

时间: 2022-11-27    进入日语论坛
核心提示:じいさんは、変かわっている男おとこだと思おもいました。町まちの薬屋くすりやへゆけば、このごろどんな薬くすりでも他たの町ま
(单词翻译:双击或拖选)
 
じいさんは、変かわっている男おとこだと思おもいました。町まちの薬屋くすりやへゆけば、このごろどんな薬くすりでも他たの町まちからきている。そして、光ひかったりっぱな容器ようきの中なかにはいって、ちゃんと効能書こうのうがきがついている。田舎いなかだって、もうこうした売薬ばいやくは、はやらないだろうと思おもいました。
「こうして、歩あるきなさって、薬くすりが売うれますかい。」と、じいさんは、ききました。
「偽物にせものが安やすく買かわれますので、なかなか売うれません。薬くすりばかりは、病気びょうきになって飲のんでみなければわからないので、すぐに本物ほんものとは思おもってくれないのです。」
「都みやこにゆくと、たくさん、大おおきな工場こうばがあって、どんな病気びょうきにもきく薬くすりをいろいろ造つくっているという話はなしだが。」
「おじいさんは、そんな薬くすりを信用しんようなさいますかね。」
「さあ、私わたしは、じょうぶで薬くすりを飲のんだことがないからわからないが。」
男おとこは、さびしそうな顔かおをして、もう、まったく暗くらくなってしまった、暮くれ方がたの空そらを見上みあげました。
「おじいさん、この小舎こやのすみに一晩ひとばん泊とめてくださいますまいか。」と、頼たのみました。
「ああいいとも、これから里さとへ出でるにはたいへんだ。」
その晩ばん、二人ふたりは、炭すみをたくかまどのかたわらで語かたり明あかしました。夜風よかぜが渡わたると、降ふるように落おち葉ばが、小舎こやの屋根やねにかかりました。夜よが明あけて、男おとこが出でかけるときに、
「もしおじいさん、腹はらでも痛いたんだりしたときに、これをおあがんなさい。」と、黒くろい色いろをした薬くすりをすこしばかりくれました。
「なにかな、これは。」
「くまのいです。このくまは大おおきなやつでしたが。」
「こんな高たかいもの、私わたしはいらんが。」
「いくら達者たっしゃでも、人間にんげんは病気びょうきにかかるものです。また来年らいねん、来年らいねんこなければ、明後年みょうごねんやってきます。もし、こなければ、綱つなでも切きれて、がけから落おちて死しんだと思おもってください。」と、男おとこはいいました。
「じゃ、おまえさんも達者たっしゃで。」と、じいさんは、別わかれを告つげました。
秋草あきくさの咲さき乱みだれた高原こうげんを、だんだん遠とおざかってゆく、手風琴てふうきんの音ねがきこえました。
「変かわった薬屋くすりやさんもあったものだ。」
じいさんは、働はたらきながら、男おとこのいったことを思おもい出だしていました。それには、真理しんりがありました。かわいい孫まごが腹下はらくだしをして、わずか二日ふつかばかりで死しんだのであったが、せっかく買かってきた薬くすりがなんのききめもなかったのが思おもい出だされました。
「あのとき、このくまのいがあったら、たすからないともかぎらなかった。」
じいさんは、男おとこが残のこしていった、紙かみに包つつんだくまのいをおしいただいて、帯おびの間あいだにしまいました。坂さかに、一本ぽんの山桜やまざくらがあって、枝えだが垂たれてじいさんの頭あたまの上うえにまで伸のびていました。
今年ことしの葉はは、もう散ちって、枝えだは裸はだかになっていたけれど、葉はの落おちたあとには、来年らいねん咲さく花はなのつぼみが、堅かたく見みえていました。じいさんは、それを見みると、花はなが咲さくまでに、すさまじいあらしと雪ゆきの時節じせつを経へなければならないのだ。しかし、この若木わかぎは、無事ぶじにそれをしのいで、いくたびも春はるを迎むかえて、麗うるわしい花はなを開ひらくであろう、が、こう年としをとった私わたしは、はたして、もう一度ど、その花はなが見みれるだろうかと思おもったのでした。しかし、良薬りょうやくをもらって、その考かんがえが変かわりました。じいさんは、にこにことして、急きゅうに仕事しごとをするのに張はり合あいができたのでした。
「変かわった薬屋くすりやさんだ。信心しんじんするので、神かみさまが薬くすりをおめぐみくだされたのかもしれない。」
じいさんは、まだどこかに手風琴てふうきんの音ねがきこえるような気きがして、耳みみをすましていました。
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