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都会はぜいたくだ(2)

时间: 2022-11-27    进入日语论坛
核心提示:お金かねがいくら高たかくても、うまいものを買かう人ひとのたくさんいる東京とうきょうへ、あのおじいさんのとったなまずや、寒
(单词翻译:双击或拖选)
 
お金かねがいくら高たかくても、うまいものを買かう人ひとのたくさんいる東京とうきょうへ、あのおじいさんのとったなまずや、寒かんぶなは、この遠とおい北きたの八郎潟ろうがたから送おくられてきたふなのように、送おくられたのではないだろうかと、おかねは考かんがえました。
「奥おくさま、どうして、東京とうきょうの人ひとは、高たかいお金かねを出だして、めずらしい、うまいものを食たべるんでしょうか。」と、おかねは、ききました。
「おまえ、それは、都みやこと田舎いなかとは、いっしょにならないよ。東京とうきょうの人ひとは、口くちがおごっているから。しかし、このごろは、田舎いなかも、だんだん東京とうきょうと同おなじになってきたという話はなしだよ。」と、奥おくさまは、おっしゃいました。
しかし、おかねは、自分じぶんの生うまれた村むらは、昔むかしとかわらないと思おもっていました。
「奥おくさま、そんなことをすると、私わたしどもには、罰ばちがあたります。」と答こたえた。
「ほほほ。」と、奥おくさまは、笑わらわれました。
いろいろ外国がいこくからきた、びんにはいったよい酒さけのならべてあるところへきて、奥おくさまは、青あおい色いろの酒さけをお買かいになりました。
「奥おくさま、お酒さけをめしあがるのでございますか?」と、おかねは、ききました。
「これは、甘あまいお酒さけなのよ。」
ほんとうに、家いえへ帰かえると、かわいらしいグラスのコップについで、奥おくさまは、青あおいお酒さけをめしあがりました。
「おかね、おまえも一杯ぱい飲のんでごらん。」といわれたので、おかねは、びっくりして、
「私わたしは、まだ、お酒さけを口くちにいれたことがありません。」と、辞退じたいしました。
「いいえ、このお酒さけは、けっして、毒どくにはならないの。そして、それを飲のむと、なにかしらん、昔むかしのことを思おもい出だすから……。」と、奥おくさまは、おっしゃいました。
「奥おくさま、昔むかしのことといいますと……。」と、おかねは、なんとなく、なつかしいような不思議ふしぎな気きがしたのです。
「そうなの、忘わすれてしまったことを思おもい出だすのだよ。」
おかねは、そういわれると、飲のんでみたくなりました。
「すこしばかり、いただきます。」といいました。
青あおい夕空ゆうぞらのように、淡あわいかなしみをたたえたお酒さけが、小ちいさなコップにつがれました。おかねは、それに、くちびるをつけると、甘あまくて酒さけという感かんじはしませんでした。これなら、もっと飲のめるように思おもいましたが、やはりそれは、酒さけでありました。いつしか、いい心地ここちとなったのであります。
しばらくすると、胸むねの中なかが熱あつくなりました。そして、おかねは、飲のむのでなかったと思おもいました。
「忘わすれてしまった、昔むかしのことって、いつ、思おもい出だすのだろう? 奥おくさまは、私わたしをおだましになったのかもしれない。」と思おもって、床とこにつきました。
*   *   *   *   *
弥吉やきちじいさんの孫まごに、新吉しんきちという少年しょうねんがありました。おかねとは仲なかよしでありました。新吉しんきちには両親りょうしんがなく、おじいさんに育そだてられたのであります。
ある日ひ、二人ふたりは、草原くさはらの上うえで遊あそんでいました。すると、新吉しんきちは、ぼんやりと立たって、あちらの高たかい山やまの方ほうを見みていましたが、急きゅうに、しくしくと泣なき出だしました。おかねは、驚おどろいて、
「どうしたの? 新しんちゃん。なぜ、泣なくの……。」と、たずねました。
新吉しんきちは、だまって、両手りょうてで自分じぶんの目めをこすって、涙なみだをふきました。
「どうしたの? 新しんちゃん。」と、おかねは、かさねて、たずねました。けれど、新吉しんきちは、さびしそうな顔かおつきをして、だまっていました。そして、いまのことは、すぐに忘わすれてしまって、二人ふたりはそれから、おもしろそうに遊あそんだのであります。
新吉しんきちは、九つのとき、ほんの一夜や、病気びょうきになって臥ねたばかりで死しんでしまいました。弥吉やきちじいさんの、歎なげきは一通ひととおりでありません。その後ご、おじいさんは、さびしい、頼たよりない生活せいかつを送おくらなければなりませんでした。おじいさんは、孫まごの新吉しんきちと仲なかよしであった、おかねをいつまでもかわいがってくれました。
いつのまにか、おかねは、床とこの中なかで、忘わすれていた昔むかしのことを思おもい出だしていました。すると、急きゅうに、昔むかしがなつかしく、ふるさとが恋こいしくなって、床とこの中なかですすり泣なきをしました。そのうちに、眠入ねいってしまったのです。
眠ねむりがさめると、いいお天気てんきでありました。おかねは、もう昨日きのうのことは忘わすれて、せっせと働はたらきました。夏なつの日ひは、はやくから庭にわさきに当あたって、まつばぼたんの花はなが、黄き・紅あか・白しろ、いろいろに美うつくしく燃もえるように咲さいていました。
「まあ、きれいだこと。」と、見みとれていると、小こばちが、羽はねを鳴ならして、花はなの上うえを飛とんでいます。そこへ、奥おくさまは、お見みえになって、笑わらいながら、
「おかねは、昨夜ゆうべ、なにか、夢ゆめを見みたね?」と、おっしゃいました。
おかねは、頭あたまをかしげましたが、思おもい出だすことができません。しかたなく、下したを向むいて笑わらっていました。
「怖おそろしい夢ゆめでも見みたのか、大おおきな声こえを出だしてよ。」と、奥おくさまはいわれました。
おかねは、久ひさしぶりに、子供こどもの時分じぶんのことを床とこにはいってから思おもい出だしたことだけはわかりました。けれど、そのほかのことは、わかりませんでした。彼女かのじょは、また、はればれとした顔かおをして、おもしろそうに、仕事しごとをつづけました。
 
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