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花と人間の話(2)

时间: 2022-12-05    进入日语论坛
核心提示:ある日ひのこと、近所きんじょに住すんでいる金持かねもちが、店みせさきへはいってまいりました。「まことにみごとな常夏とこな
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ある日ひのこと、近所きんじょに住すんでいる金持かねもちが、店みせさきへはいってまいりました。
「まことにみごとな常夏とこなつだな、どうか私わたしに、これを譲ゆずってくださらぬか。」といいました。
おじいさんは、それどころではありませんでした。
「いえ、これは、私わたしの大事だいじな常夏とこなつです。売うることはできません。」と答こたえました。
金持かねもちは、しかたなく、店みせから出でてゆきました。しかし、よほど、この花はなが気きにいったとみえて、それから、二、三日にちすると、また、金持かねもちは、やってきました。
「私わたしは、三円えん出だします。どうか、この花はなを売うってくださらぬか。」といいました。
「せっかくのお頼たのみですけれど、これは、私わたしの大事だいじな花はなです。お譲ゆずりすることはできません。」と、おじいさんは、答こたえました。
おばあさんは、三円えんになれば、売うってもよさそうなものにと、いわぬばかりの顔かおつきをして、おじいさんを見みていました。
その日ひも、金持かねもちはしかたなく帰かえりました。その後あとで、おばあさんは、おじいさんに向むかって、
「三円えんのお金かねをこの店みせでもうけるのはたいへんなことだ。お売うりなさればよかったのに。」といいました。
「私わたしの丹精たんせいを考かんがえてみるがいい。いくら金かねになったって、この常夏とこなつは、売うれるものではない。」と、おじいさんは、頭あたまを振ふって答こたえました。
金持かねもちは、よほど、その花はなが気きにいったものとみえます。また、四、五日にちするとやってきました。
「どうか、この常夏とこなつを売うってくださらぬか。五円えんさしあげますから。」といいました。
おばあさんは、こんなことが、またとあるものではない。売うったほうがいいと、そばでおじいさんに、小ちいさな声こえですすめました。おじいさんは、なるほど、考かんがえてみれば、この店みせで、それだけの金かねをもうけるのは、たいへんなことだと考かんがえたから、つい、その金持かねもちに、常夏とこなつを売うってしまいました。
金持かねもちは、喜よろこんで、常夏とこなつを抱かかえて家うちへ帰かえりました。その後あとで、おじいさんは、大事だいじな子供こどもを奪うばわれたように、がっかりしました。もはやさびしい家いえのうちを、どこを探たずねても、真紅まっかないきいきとした、花はなの影かげは見みられなかったのです。おじいさんは、また、前まえのたよりない、さびしい生活せいかつに帰かえってしまいました。
金持かねもちは、家うちへ持もっていって二、三日にちは、飽あかず、その花はなをながめていましたが、そのうちに、だんだん青々あおあおとした葉はが、弱よわって、花はながしおれてきました。金持かねもちは、水みずをやったり、肥料こやしをやったり、日ひに当あてたりしましたが、花はなは、小ちいさなときから、親したしく、慣なれた、おじいさんの手てを離はなれてしまったので、万事ばんじ調子ちょうしが変かわったとみえて、しだいに、いけなくなってしまったのです。
「また、そのうちに、常夏とこなつが見みつからぬものでない。見みつかったら、いくら高たかくても、買かってくることにしよう。」といって、金持かねもちは、だんだん弱よわってゆく、花はなを振ふり向むきもせず、庭にわさきへ投なげ出だしておきました。
あわれなおじいさんは、その後のちも、花はなのことを思おもい出だしていました。
「あの常夏とこなつは、どうなったろう?」といって、さびしがりました。
そのうちに、おじいさんは病気びょうきにかかりました。おばあさんは、はじめて、あのとき、常夏とこなつを金持かねもちに売うらなければよかったと悟さとったのであります。なぜならおじいさんは、なぐさめられるものがなく、その後のちは、さびしそうに見みられたからです。
おばあさんは、金持かねもちが、なんとなくうらめしくなりました。自分じぶんたちの幸福こうふくを奪うばっていったようにさえ思おもわれたのでした。「ああ、お金かねがなにになろう?」と、おばあさんは、せっかくおじいさんの丹精たんせいした花はなを、金かねのために売うったことに対たいして後悔こうかいしました。
ある日ひ、おばあさんは、五円えんの金かねを持もって金持かねもちのところへやってきました。
「まことにおそれいりますが、いつかお譲ゆずりしました、常夏とこなつをまた私わたしどもにお譲ゆずりしてくださるわけにはなりますまいか。」といって頼たのみました。これを聞きくと、金持かねもちは、から、からと大おおきな声こえで笑わらいました。
「あの常夏とこなつは、枯かれかかっている。ほしければ庭にわさきにあるから、持もってゆきなさい。お金かねはいらないから。」といいました。おばあさんは、傷いたましい気きがして、見みる影かげもない常夏とこなつをもらって家うちへ帰かえりました。そして、おじいさんに見みせながら、
「こんなにするなら、譲ゆずってやるのでなかった。」と、おばあさんはいいました。
おじいさんは、自分じぶんの子供こどもが、傷きずついて、死しにかかって帰かえってきたように思おもいました。
「まあ、かわいそうに、私わしの手てを離はなれては、ほかの人ひとの手てでよくなりっこがない。」といって、涙なみだぐみながら、床とこから起おき上あがって、土つちを新あたらしくして植うえ変かえてやりました。そして、そのあくる日ひから、おじいさんは、はじめて、常夏とこなつを芽めから丹精たんせいしたときのように、自分じぶんが気分きぶんの悪わるいのを忘わすれて、手入ていれをしてやりました。すると、常夏とこなつは、だんだん水みずを吸すい上あげて、生いき返かえってきたのです。
おじいさんは、その有あり様さまを見みると、失うしなわれた楽たのしみが得えられたのでした。
「このぶんならだいじょうぶだ。精せいを出だして、よくしてやろう。もう、これからは、けっして、どんなことがあっても手離てばなすものでない。」と、堅かたく心こころに思おもいながら、日ひに当あてたり、水みずをやったりしました。
おじいさんに、希望きぼうができると、いつしか病気びょうきもなおってしまったのです。おじいさんは、ふたたび、真紅まっかな、いきいきとした花はなが、咲さく日ひを楽たのしみにしているのであります。
 
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